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老人党リアルグループ「護憲+」は、日本国憲法の基本理念である国民主権、平和、人権を護りたいと願い、「護憲」の視点に立った「世直し」を志す老人党有志グループです

コラム「護憲+語憲」 :見習い期間 (07/14)

新しいプロパガンダの出現?

 Web上でSNSや動画サイトなどのサービスから自分が求めている情報を得ることが一般化してから久しい。自分の興味・関心に基づく事柄かこれまでに関わりがあった人たちの近況という限られた範囲ではあるものの膨大な情報が存在し、自分にはとても思いつかない斬新なアイディアや思わず感心してしまうクリエイティブなコンテンツがあふれている。
 これらの動画や写真、テキストを読むことは楽しく、端末の画面をスクロールする手が止まらない。
 ところが、好きなことを追い求める快適な時間の中に自分では探し出せない意外な情報が入り込んでくる。個人の閲覧履歴や検索履歴に基づいて「おすすめ」しているのだろうが、中には「偏ったものの見方をしているのではないか」「誰が何を根拠に言っているのだろうか」「どこまでが客観的な情報紹介でどこからが発信者の主観的な意見なのか」と考えてしまうものも少なくない。

 とりわけ昨今流れてくるコンテンツには、観光スポットの紹介とともに特定の観点からの価値観が含まれるものがある点が特に気になる。
 昨年から第二次世界大戦中の「特攻」に関する投稿を目にする機会が多くなった。自分がフォローしている人たちが鹿児島へ観光に行ったついでに「知覧特攻平和会館」に立ち寄ったと投稿しているのを見かけたこともあれば、特攻隊を題材とした舞台に出演するというお知らせや登場人物が特攻隊員になる映画の感想を載せている人もいた。挙句の果てには、パリオリンピックに出場したアスリートが帰国後の記者会見で「知覧特攻平和会館」に行きたいと話す動画を「おすすめ」されてしまった。
 こうした投稿は単なる観光地や舞台、映画の紹介だけでは終わらない。「特攻隊員と比べて現在生きている人たちは恵まれている」というように、発信する側の考えや意見が含まれていることが問題である。
 当たり障りのない「命の尊さ」「平和のありがたさ」を語るのならともかく、そこからさらに発展して「特攻隊員さんが国のために命をかけて守ってくれたから今の日本がある」「日本は植民地にならずに済んだ」などと自己犠牲を美化し称えるナレーションや文章が何気なく含まれていることに強い危機感を感じてしまった。
 ましてや、このような投稿に対して「いいね」と賛意を表明する人が数万人規模でいるのだから、コンテンツの受信者側も内容を注視して精査することもないのだろう。
 インターネット上のコンテンツを検索し閲覧する際のメディアリテラシー、情報リテラシーの教育がこれまで以上に必要とされているのかもしれない。

 現在も教育機関を中心に実践されているはずの平和教育との乖離も問題である。この数年で目立つようになった特攻隊を正当化する言辞と『おかあさんの木』で伝えられていることは対照的ではないか。『ぞうれっしゃがやってきた』では、人間以外の動物も犠牲にする戦争をしてはいけないと訴えられているではないか。
 「命の尊さ」などと漠然としていて空虚な語彙を並べるだけで、何かのために命を犠牲にする戦争を二度と繰り返さないと誓わないのなら特攻作戦を肯定するも同然である。そもそも、特攻作戦で数千人の若者の命を奪っておきながら日本は敗戦しているではないか。国を守ってくれたどころか国によって人生を壊されたに等しい。
 偶然目にしたものを無条件に信じ込んでしまうと再び同じ過ちを繰り返すのではないかと、戦争を知る方たちが年々少なくなる状況下で危機感を抱いている。

 
お知らせ

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「護憲+」は2024年8月1日をもって、第二十二期に入りました。
詳しくは、「趣旨」をご覧下さい。
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