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コラム「護憲+語憲」 :名無しの探偵 (07/26)

憲法の「国民」規定は学者が言うように自明なのだろうか

1,(はじめに)
およそ50年前に大学生になって法学部に所属した若き日の自分であるが、その時分は憲法の「国民」規定(第10条)にあまり疑問を抱くことはなかった。
憲法では、「日本国民である要件は、法律でこれを定めるとなっている。
憲法は国民主権を大原則としていて、その次の規定では「基本的人権の享有」の主体は国民であると宣言する。こうして、憲法の三大原則が、国民を「主体」として、憲法原理が構成されているのである。
そして、憲法第10条の委任により、議会で「国籍法」が制定されることになった。
アメリカ憲法などとは異なり、日本人(?)の国籍の取得は血統主義と言われる、規定となっている。つまり、父母のどちらかが日本人となっている場合に国民は日本国籍を取得するとされているのである。(以前は父性主義と言われる規定であった。最近の改正以前は)
だが、「国民」という括り、概念規定はそんなに憲法学者が言うほどに「自明」なことなのだろうか。
最初の疑問は、憲法の起草をしたGHQの英文では「国民」とはなっていない。その英文では、ピープルとネイションの二つになっている。なので、日本語でも、「国民」と言うのが適切でない場合は、「何人も」と主語を使い分けているのである。
なので、学者のいう「自明性」は論理的にも矛盾を来しているし、憲法典でも「国民」という概念だけでは、人権などの規定も事態にそぐわない事案は多いのである。
ここまでは、争いのない憲法の議論であるだろう。
しかし、憲法制定以前の歴史や現在でも、「日本国民」という概念には大きな問題がある。何故か。日本の近代の歴史では、現在のような「日本国民」は「日本人」に限定されておらず、朝鮮半島を属国にしていた、韓国併合の歴史もあり、また台湾も日本国が支配蚊においていたのであり、当時は在日朝鮮人や在日中国人(台湾の人たち)も日本人と処遇されていたのである。
そして、敗戦後に朝鮮や台湾が日本の支配下から離脱するとこれらの「在日外国人」は日本国民ではないという法令になったという経緯があった。

2,以上の問題点が今回コラムの執筆動機;ライトモチーフであるが、問題とする「論点」は大きくは二つある。
①一つは、いくら日本の敗戦によって、日本の統治を受けていた国々が支配から解放されたとはいえ、日本に定住している「在日外国人」は故国に帰れ、または、「日本国民」ではないと言われても、全部の人が帰国するというわけにはいかないのである。帰国できる人は少数であるだろう。

②もう一つは、歴史的に近代以降に日本の領土とされた「民族」の「国民化」の問題である。
こうした「民族」は少なくはなく、大きくは二つの民族が存在し、一つは「アイヌ民族」であり、もう一つは「沖縄民族」(琉球民族)である。
南西諸島の奄美大島なども歴史的には他民族であったと言える。
現在では、アイヌ民族は、先住民族として、政府によっても認められている。だが、沖縄人は、先住人族の認定を受けていない。
①と②をそれぞれ、その「問題点」を確定していこう。
(①の問題の参考になった著書は、田中宏著「在日外国人」岩波新書である。)
「在日外国人」の国民概念からの離脱は、当事者にとって、大きなリスクを伴うことになっている。それは、今まで日本国民とされていたが、故国が日本の統治から離脱すると、定住しているにも拘わらず「国民」ではない、在日外国人となって、憲法が保障する「基本的人権」の享有の大部分は否定されることになったのである。(生き死に与奪権など以外は)日本国籍が否定されると大きな権利保障はなく、暮らしも大変だと思う。
実際に、小学生の時の友人は日本の公教育で、育っていたが、ニワトリ小屋のような家に住んでいた。
こうした「在日外国人」の日本国籍の否定による苦難などは、次回コラムで、田中宏教授の著書を参考に詳しく検討をする予定である。

3,アイヌ民族と沖縄人(先住民の認定はない)の日本国民への近代の包摂。

次は、近代以降に日本国の領土とされた、「先住民族」の問題も実は大きな「社会問題」として、本土人の私たちに問いかけているということである。
沖縄諸島の問題から見ると、現在では米軍基地の多くが沖縄県に存在しており、米軍:アメリカ政府は、今の基地から辺野古移設を計画して、実際に大規模な移設工事は始まっている。そして、日本政府は、沖縄諸島の軍事要塞化を推進していて、「台湾有事」を騒ぎ立て、沖縄諸島などを自衛隊の基地も米軍基地と並行して建設している状況になっている。
この沖縄への軍事要塞の推進問題も沖縄人の「先住民族」の認定問題と関連させて議論を再構築するべきだろう、次回コラムに詳細に論じる。
そして、先住民族のアイヌ民族であるが、以前に書いたように、アイヌ人が本土人からの差別を受けることなく、先住民として、誇りをもって生活圏を確保できているのかも、次回コラムで、点検したいと思う。
今回コラムでは、問題提起に止まったが、次回で、具体的に検証をするつもりである。

以上。

 
お知らせ

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「護憲+」は2023年8月1日をもって、第二十一期に入りました。
詳しくは、「趣旨」をご覧下さい。
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