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コラム「護憲+語憲」 :笹井明子 (09/09)

石破首相の退陣表明について

9月7日、石破首相は突然自民党総裁の辞任を表明した。

7月の参院選大敗後、読売新聞、毎日新聞等、多くのマスメディアが、先走った「首相の退陣」報道を行い、あるいは「責任を取って辞任すべき」との論陣を張ったが、世論は逆に「石破やめるな!」の方向に傾き、石破首相自身も公には「辞任しない」という姿勢を貫いてきた。

今回の辞任表明に対し、マスコミ、特に新聞やテレビの政治部責任者たちは、案の定、「遅きに失した」「50日間の政治空白を招いた」という批判を基調に論評を行っている。

石破氏は7日の記者会見で、これまで辞任を否定してきた最大の理由に、「米国との関税交渉を完結させること」を上げた。「間もなく辞めるという政権に相手は本気で交渉をするのか」という石破氏の言葉には説得力がある。

そして私には、広島、長崎への原爆投下から終戦に至る、8月という月は、日本にとって、日本の政治にとって、過去、現在、未来を繋ぐ、心を鎮めてきちんと向き合わなくてはならない最も大切な月だということも、石破氏の心情にあったのではないかと想像された。

広島の平和祈念式典で石破氏は「太き骨は先生ならむ そのそばに 小さきあたまの骨 あつまれり」という「原爆犠牲国民学校教師と子どもの碑」に刻まれた、歌人・正田篠枝の歌を引用し、長崎では「ねがわくば、この浦上をして世界最後の原子野たらしめたまえ」という長崎医科大学で被爆した永井隆博の言葉を紹介。犠牲者への追悼と「核戦争のない世界」「恒久平和」の実現に向けて力を尽くす決意を語った。

8月15日の全国戦没者追悼式では、「あの戦争の反省と教訓を、改めて深く胸に刻まねばなりません」と「反省」の言葉を入れた式辞を述べた。

一国の総理が、戦後80年にあたる今年の8月に、自らの言葉で過去の反省を語り、現在と未来に向かって不戦の誓いを表明したことは、決して「政治空白」の無駄な時間だったとは思えない。今年の8月に石破氏が政治のトップであったことに、私は深い感慨を覚えた。

しかし、石破氏は結局、退陣を求める党内の声や、外堀を埋めるかのようなマスコミの論調に抗えず、ここにきて「党の分断回避」のために退陣を決断することになった。

本人も会見で「地方創生は道半ば」「政治不信を払拭できていない」等、心残りを語っているが、石破氏が折々に見せてきた「国民一人ひとりを大切にしたい」という「個人の尊重」の姿勢を評価してきたものとしては、反対や批判の声が党内から上がっても、メディアがネガティブキャンペーンを張ろうとも、自分の姿勢を貫くことが総理としての責務だと信じて、貫き通して欲しかったが、権力闘争型ではない政治家の、これが限界だったのだろう。残念だが仕方ない。

石破氏退陣後の総裁選で誰が自民党総裁になり、誰が日本の総理大臣になるのか、明るい見通しは全く立たないが、自民党政治の限界がはっきり見えた今、石破氏が目指した「まともな政治」を引き継ぎ、「国民に寄り添う」政治を目指す人たちが、与野党の枠を超えて、何らかの新しい体制を作る必要があるような気がしている。その意味で、立憲野党にも、もっとしっかり自覚と責任をもって取り組んでもらいたい。

そして、私たち有権者も、間違っても排外主義、ポピュリズムに政治の場を譲るようなことのないよう、しっかり考え、正しい情報を分かち合い、積極的に発信するなど、真っ当な政治の再構築に向けて、できる限りの努力を続けなければならないと思っている。

 
お知らせ

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「護憲+」は2025年8月1日をもって、第二十三期に入りました。
詳しくは、「趣旨」をご覧下さい。
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