
老人党リアルグループ「護憲+」は、日本国憲法の基本理念である国民主権、平和、人権を護りたいと願い、「護憲」の視点に立った「世直し」を志す老人党有志グループです。
コラム「護憲+語憲」 :見習い期間 (11/16)
新たな争いを作る前に
日本で憲政史上初の女性総理大臣が誕生してから1ヶ月が経とうとしている。これで女性が活躍できる国であるイメージを世界に対して印象付けられると、現在の政権与党の幹部も国の中枢にいる者たちも誇らしく思っているのだろう。
しかし、女性が総理大臣になることは必ずしもジェンダー平等が進んだことを意味しないという指摘はすでに国外からも寄せられている。さらにいえば、組織の上層部に昇進して指導的な立場で活躍しなければ権利が認められないのかという疑問も生じる。
年を追うごとに世界の国・地域ごとの「ジェンダーギャップ指数」や男女平等・共同参画に関するランキングなどの結果に注目される機会が増えてきた。こうした問題に無関心な社会よりは、コミュニティ全体で取り組むべき問題と捉えてくれる環境のほうがよいのだろう。
だが、こうした国・地域の序列の中で日本が一番になることを目指す流れには現在の政権に持つ不安と同種の不安を抱いてしまう。
すべての国と地域を同率1位にはできないだろうから、こうした順位をつける指標において日本の順位が上がると他の国と地域の順位は下がってしまう。世界全体で誰もが生きやすくなることを目指すべきなのに、自国のランキングでの順位が低いから上を目指して頑張るという動機づけでは、他者を蹴落として自らの優位性を示そうとする新たな争いを生むだけではないか。
他国に対して敵意を示し非難する姿勢は、内閣発足後早々にあらわになっている。不必要な対立・分断・争いを煽ることに力を注ぐのではなく、女性というマイノリティのグループに所属する人物であれば、一国のトップとして誰もが安心して生きられる国を目指すのが最優先であろう。
女性の地位向上に限らず、障がい者の社会参画や子供の人権などの国際的な順位付けにおいても、日本の順位を上げるための競争をしているのではない。国際競争で勝つことを目標にしていたら、結局は一部の人たちだけが利益を独占する構造から脱却できていないことになる。誰かと共に生きる意識が根付く社会になるにはまだ時間がかかるのだろう。
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