
老人党リアルグループ「護憲+」は、日本国憲法の基本理念である国民主権、平和、人権を護りたいと願い、「護憲」の視点に立った「世直し」を志す老人党有志グループです。
コラム「護憲+語憲」 :笹井明子 (12/03)
高市首相の「台湾有事発言」と中国の反応
高市首相の「台湾有事発言」が中国側の激しい反発を招き、中国政府による強硬姿勢は日増しに強くなるばかりで、収まる気配が見られない。
高市発言の発端は、11月7日の衆議院予算委員会における立憲民主党・岡田議員の質疑への答弁ということだが、「存立危機事態にあたるかは総合的に判断する」という「戦略的あいまいさ」で中国との関係を維持するという、従来の政府の立場を踏み越えて、自分のスタンスをアドリブで答えてしまったようだ。
中国政府はこの発言に反発し、撤回を求めて、観光客の渡航自粛、日本留学への注意喚起、日本産水産物の輸入禁止等、強硬姿勢をエスカレート。日本経済に影響を及ぼし始めている。 また、日本人アーティストの中国での公演中止も相次ぎ、民間人同士の交流にも影響が出始めているようだ。
更に、中国の国連大使が、今回の「台湾有事発言」について、グテーレス事務総長あてに、「戦後の国際秩序に挑戦するもので、国連憲章に深刻に違反する」と批判する書簡を二度にわたり送り、日本も「日本の立場は従来と変わらず一貫している」と反論するなど、日中の対立が国連の場にまで持ち込まれる状況となっている。
トランプ大統領の訪日で見せたはしゃぎぶりや、「G20サミット」参加に当たって「マウントをとれる服装選び・・・」というSNSの発信等、高市首相が折々に見せる、日本という国の顔であるという自覚に欠けた軽薄さは、時として災難として国民の暮らしに直接跳ね返ってくることを、今後は十分に自覚してもらいたい。
一方で、高市発言直後の在大阪中国総領事の「汚い首をはねる」というSNS投稿や、今回の中国政府の強行姿勢の背景に垣間見られる、日本の過去の中国侵略の歴史や、軍国主義に対する敵意が今なお解消されていないことに、残念さと危うさを感じずにはいられない。 だが、これも直接的には、これまで靖国参拝を続け、排外主義的発言をしてきた高市首相の「うっかり発言」が呼び覚ましたものといえるのだろう。
戦後の日本は、過去の反省を踏まえ、憲法の謳う「民主主義」「平和」「人権」の政治体制の下、私たち国民は、基本的に、自律と融和、多様性を認める社会の中で日々を暮らしてきた。 80年の歴史の経過と共に、様々なゆがみが生じてきているのは事実だが、憲法の理念を護ろうとする基本は今なお変わっていない。
国民レベルで考えれば、今回の高市発言前の、日本を訪れ日本観光を楽しむ中国人観光客や中国人留学生の多さが、国境を越えた親和性を物語っている。また、在日中国人は80万人を超え、中国在留日本人は10万人近いといわれ、人々の暮らしの中で日本と中国の切っても切れない関係は、今なお続いている。
そうした意味からも、中国の最高指導者の強い攻撃性を目にすると、このような絶対権力が中国国民の暮らしや言動を強くコントロールしているのかと、中国の人々に対しある種気の毒な感じを持たずにはいられない。
政治的指導者(権力者)が、その国に暮らす人々の日常に目を向けその暮らしに気を配ることなく、政治の道具のように扱うのは、日本でも、中国でも、その他どこの国であっても、起こりがちだし、今世界のあちこちで起きている現実がある。
そうであればこそ、国民自身が権力を監視し、「だめなもの」には「NO」と表明し続けること、芸術や文化、学問を通して、国家をまたいで人間同士のつながりを作り、維持する努力を続けること。こうしたことが、国家権力の「戦争志向」を押しとどめる、何より大きな力になるのではないだろうか。 今日本にいる中国の人たちとの交流を、これからも大切にしていきたいと思う。
蛇足ながら、高市首相には、「働いて 働いて 働いて ・・」睡眠を削って冷静な思考・判断ができなくなることのないよう、とりあえず今はお願いしておきたい。
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