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1070 “窮鼠猫を噛む”のことわざ 猫家五六助 2023/10/16 03:19:11
仕事場に山積した東京新聞。時間をつくり、少しずつ減らしている。今は2021年後半から2022年末の日付が入り混じった朝刊・夕刊を端折り読みしていると、ふと気づく。あの重大事件・事故はその後、どうなったのだろうか。

特に気になったのは「安倍元首相国葬の是非」「幹部を乗せた陸自ヘリの墜落」、この2案件。前者は確たる基準も十分な議論もないまま、コロナ禍の中で民意を無視して2.5億円の国費を注ぎ込んで強行された。その後、国葬に関する検証や基準作りはどうなったのか。安倍晋三や自民党の重鎮議員が統一教会と長年ズブズブの仲だった詳報や総括もされていない。安倍晋三を射殺した犯行は許されないが、犯人の心理は“窮鼠猫を噛む”だったように思う。また、後者は墜落したヘリが当初行方不明で消息を絶った地点が宮古島周辺だったため、「中国(軍)に撃墜された」等の陰謀説が飛び交った。赴任した幹部の接待(遊覧飛行)だったとの疑惑もある。あり得ない海面上の低空飛行で陸自幹部8名が犠牲になった重大インシデントかつフライトレコーダーが回収されているにも関わらず、いまだ事故の真相が公表されていない。

それは日本のメディアがウクライナ紛争という第3次世界大戦に発展しかねない事案を優先してきた結果なのか。それともジャニー喜多川氏の性加害事案がネタにしやすいのか。さらにイスラエルが奇襲テロに遭った事案によって見過ごされてしまうのか・・・私には政府与党がそれらを隠れ蓑にし、メディアが忖度しているように思える。

さて、イスラエルがパレスチナ(ハマス)に急襲された事案は衝撃的だったためか、「イスラムのテロ組織がイスラエルの平和を奪った」と非難する声が大きい。この事案だけみれば、テロによる民間人殺害は言語道断。パレスチナ勢力が悪(加害者)でイスラエルが正義(被害者)という見方になる。ユダヤ教の安息日に若者が歌い踊って楽しむイベントをハマス戦闘員が急襲し、200名以上の民間人を殺害したことを含めてイスラエル政府は激怒。圧倒的な武力でガザ地区を壊滅させる勢いで攻撃準備をしている。

しかし、問題はもっと複雑ではないのか。なぜ、ハマス(パレスチナ側)は2,000発以上のロケット弾を発射し、障壁を突破して多数のイスラエル人を殺害したのか。イスラエルは長年、障壁と武力によってガザ地区の人や物資の出入りを制限してきた。それにより民間人の生活は困窮し、若者の6割が失業状態にあるという。彼らがイスラエルに抗議や抵抗をすれば圧倒的な武力で弾圧され、問答無用で銃殺される。つまり、イスラエルは必要以上にガザ住民を囲い込んで抑圧し、飼い殺しのように扱ってきた。ガザ地区が「天井のない監獄」と呼ばれる所以である。

そんな日常の傍ら、障壁から遠くないイスラエル側で若者たちがイベントを開き、歌い踊って自由と平和を満喫している。私にはパレスチナ側の怒りが頂点に達し、先の見えない復讐の連鎖が一気に爆発したように見えた。これも“窮鼠猫を噛む”。賢明なイスラエル政府は、それに気づかないのか。かつて「命のビザ」を発行した外交官を輩出し、イスラエルの人々に感謝されている日本。今こそ、イスラエル政府へ「憎しみの連鎖を収める提言」ができないものだろうか。