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1054 コラテラル・ダメージを傍観する日本政府 猫家五六助 2023/07/24 01:32:10
1週間以上前になるが平日の午前中、頭上でジェット機の排気音が響いた。頭上と言うよりも聞こえてくる方向がわからないほど、空全体に響き渡る轟音。

私に聞き覚えのある飛行機といえば、はるか上空を飛ぶジェット旅客機の「ゴォォォォ・・・」だが、軍用機は一段と排気音が大きい。厚木基地に飛来する、映画「トップガン・マーベリック」で有名なF-18の「キィーンン、ゴォー!」。大気を低周波振動させながら低空を通り過ぎるMV-22オスプレイの「ヴォンヴォンヴォンヴォンッ!」。その他、横田基地に飛来する大型旅客機や大型輸送機の「グォォォーッ!」など。

しかし、件の轟音は異質だった。「ヴォォォーーーッ!」が2〜3機まとまって飛んでいるような響きで、ついに戦争が始まったのかと思うほど。私は今まで一度も聞いたことがない轟音に疑念がおさまらず、しばらく四方の空を見回して機影を探していた。

ところが先週土曜日、このネットニュースを目にして、私の疑問は氷解した。

7月12日付【アメリカの戦略爆撃機『B-52』が横田基地に飛来して驚く軍事ファンの皆様「何年ぶりの飛来だ?」「それにしてもデカい」】
https://togetter.com/li/2185000

7月20日付【横田基地の「B-52戦略爆撃機」離陸!7月12日にダイバート、アメリカ空軍】
https://flyteam.jp/news/article/139391

なんと、あのB-52が横田基地に着陸する際の騒音だったのだ。「あの」とは、ベトナム戦争の北爆で大量のナパーム弾を投下した大型爆撃機であり、燃料を浪費して騒音をまき散らす6基のジェットエンジンを載せ、沖縄・嘉手納基地で離発着を繰り返した悪名高い軍用機を意味する。正体不明の轟音は米軍基地騒音の原点ともいうべきB-52だったわけで、私は悪い意味で納得した。当日は機体の不調による緊急着陸だったようで、8日間滞在して7/20に飛び去ったが、東京新聞には掲載されていなかった。TVメディアで報道されたのだろうか。当然ながら、日米安保協定により「何を」積載していたかを米軍は公表しない。B-52は現在も核兵器を搭載可能な戦略爆撃機として運用されているのに、だ。

表題の「コラテラル・ダメージ」とは、軍事行動において関係のない民間(人)が被害に遭う、損害を受けることを意味する英語である。武力の行使によって発生する間接的な被害で、別名「巻き添え被害」とも呼ばれている。カッコよく言えば、「大義をなすための最小限の被害」。しかし、日本では「在日米軍が好き放題する陰で泣き寝入りする周辺住民」「『国益』をゴリ押しする政治家に泣かされる弱者・国民」と訳すことにする。

ウィドウ・メーカー(未亡人製造機)と揶揄されたV-22オスプレイを陸上自衛隊が導入し、佐賀空港へ配備する準備を進めている。一方、在日米軍のMV-22は最低飛行高度が60mに引き下げられるという。日本では法律上の最低飛行高度が150mで、それを大きく下回るのに「訓練」という米軍の要望が優先される。「オスプレイは安全」というが、それは民間機の徹底した安全レベルではない。軍用機は消耗品であり、安全よりも兵器としての機能性・利便性を優先している。それゆえ、訓練や戦場では予期せぬ運用・不安定な飛行状況を強いられ、結果的に「人為的ミス」「想定外の事故」「事故は起きても仕方なかった」で処理される。

直近では沖縄・嘉手納基地と東京・横田基地で米軍が大量に漏らした、発がん性物質を含むPFAS(ピ−ファス、有機フッ素化合物)消火剤の問題。以前から地下水汚染の疑惑を民間団体が指摘しているのに、東京都も政府も「知らぬ、存ぜぬ」を繰り返してきた。ところが、在日米軍は4年前に漏洩事故の事実を政府に報告していたことが発覚。それを「連絡の行き違い」と、くだらない言い訳をする官僚。

少なくとも米軍はコラテラル・ダメージを定義し、“占領地”“治外法権”の日本においても危機管理は意識している。その日本の政府は何をしているのか?なぜ、米軍・米国に及び腰なのか。国民の被害を、しら〜っと傍観しているのか。“愛国”政治家や官僚(特に外務省)は国家・省益を守っても、国民を守る気がないらしい。意に沿わない者を「非国民」と弾圧し、兵隊を虫けらのように扱い戦死させた大本営的発想と何ら変わりない。

こんな日本に防衛力強化や防衛費の大幅増額なんて、ナンセンス。「改憲が党是」とかいう前に、アベノ残党と岸田政権は日本国憲法を学び直し、憲法を護るべし!