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1050 マイナンバーカードと健康保険証の一体化政策を中止せよ! 笹井明子 2023/07/04 15:25:08
6月2日の参議院本会議で、マイナンバーカードと健康保険証の一体化や、マイナンバーの利用範囲の拡大などを盛り込んだ関連法の改正法が、賛成多数で可決・成立し、健康保険証は来年秋に廃止されマイナンバーカードと一体化されることが決まった。

マイナンバー制度は、平成27年10月の「マイナンバー」の交付に始まり、平成28年以降本格運用が始まったが、「政府による個人情報の一元管理への不安」「個人の自由やプライバシーの侵害への警戒感」も根強く、2022年末のマイナカード交付率は50%前後と、低迷していた。

これまでマイナンバー制度を「行政の効率化、国民の利便性の向上、公平・公正な社会の実現のための社会基盤」(総務省)となるが、「マイナカード保有は義務ではない」とその取得を国民の任意としてきた政府だが、ここにきて、河野太郎を大臣とするデジタル庁が『未来志向のDX(デジタル・トランスフォーメーション)を大胆に推進し、デジタル時代の官民のインフラを今後5年で一気呵成に作り上げる』(デジタル庁)がぶち上げて、マイナポイントの付与という「飴」と、従来保険証の初診料をマイナ保険証より高く設定という「鞭」、そして従来の健康保険証の廃止へと、強引な推進策を展開。結果、2023年6月現在は7割を超える普及率となっているようだ。(「公平・公正な社会」はどこへ行ったんだ?!)

しかし、マイナカード保有率アップに費やしたエネルギー(経費)と比べ、他の先進諸国が最大の課題として取り組んできた、「国によるプライバシー権の侵害」や「個人情報の漏洩」、「悪意ある第三者のデータ侵入や改ざん」等、デジタル化が内包する本質的な危険性の除去・防止のために、日本のデジタル庁がエネルギーと努力を傾けた様子が見られない。

マイナンバー改正法成立と同時に、マスメディアは、この間に明るみにでていたマイナカードによるトラブルを毎日のように報じ出した。(遅い!)
曰く、
・マイナ健康保険証に他人の情報が登録されていた
・コンビニの各種証明書交付サービスで、別人の証明書や古い証明書が発行された
・登録を抹消した印鑑登録証明書が発行された
・「公金受取口座」として別の人のマイナンバーに登録された
・「マイナポイント」が、誤って他人に付与された
等々。

また、「国民の利便性」を掲げる割に、高齢者施設や医療従事者からのマイナ保険証利用の困難さに耳を傾けようとしているとは思えない。高齢者や障碍者にとっては自分で、顔認証が可能な写真を写し、市役所等交付場所に出向いて、その場で暗証番号を設定しなければならないマイナンバーカードの取得自体、ハードルが高すぎるし、病気や怪我で苦しんでいる時に、顔認証や暗証番号を使ってマイナ保険証を使用することの非現実性を、この制度を設計・推進した人たちは考えたことがあるのだろうか。

長い時間を掛けて、生身の人間とその人に向き合う人間との繋がりを基本に築き、上手く機能してきた社会制度を、デジタル化の波に乗り後れまいと、声高に、「一気呵成に」転換を図り、破壊しようとする河野デジタル大臣と、不具合が明らかになった後も改正法の実施を思い止まろうとしない岸田総理と自公政権、今回の改正法に賛成した「維新の会」「国民民主党」に抗議すると共に、いまからでも立ち止まり、一旦白紙に戻して、国民の声を真剣に受け止めて制度の見直しをするよう、引き続き強く求めて行きたい。

参照:
NHK WEB「マイナンバーカードと健康保険証が一体化へ 改正法可決・成立」
2023年6月2日
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230602/k10014086381000.html
ZEIMO「マイナンバーは海外ではどう使われている?個人番号制度の国際比較」
https://zeimo.jp/article/32196
J-STAGE「日本の番号制度(マイナンバー制度)の概要と国際比較」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/johokanri/56/6/56_344/_html/-char/ja/
総務省「マイナンバー制度」
https://www.soumu.go.jp/kojinbango_card/01.html#kiban
デジタル庁「組織情報」
https://www.digital.go.jp/about/