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1037 データ集中・監視社会にどう向き合うか 笹井明子 2023/04/12 16:54:28
今や15歳以上の約9割がスマホを保有し、老若男女問わず、常にスマホを片手に日常生活を送ることが当たり前のようになっている今日この頃。「スマホ有りき」の前提で社会インフラは作り変えられ、スマホを持たずに行動することは困難になりつつある。

プライベートなコミュニケーションも、情報へのアクセスも、情報発信も、いつでもどこでも簡単にできるスマホは、確かに便利この上ない。しかも、私たちが利用する、例えばフリーメールのような多くのサービスは無料で、費用は広告主が払うという、ユーザーにとっては、手軽で有難い仕組みになっている。

しかし、私たちはそうした仕組みを、無邪気に受け入れ、四六時中利用し続けていて良いものだろうか。

4月12日の朝日新聞朝刊に、「チャットGPT 全世界が実験台 データ集中と監視 強まる恐れ」のタイトルで、元グーグルの専門家メレディス・ウィテカー氏によるチャットGPTに対する警告が紹介されている。

その中でウィテカー氏は、『チャットGPTなど、データとインフラなどの資源が一部の巨大IT企業に集中し、利用者のデータを集めたAIの高度化は、インターネット広告の仕組みを通じて収益化する「監視のビジネスモデル」の延長線上にある』とし、『一般公開によって利用者を獲得したAIがいっそう多くの「学習データ」を得ることで、データの集中と監視がさらに強まり、単なる位置情報などではなく、もっと内面的な、推論的な形で「私」について明らかにすることができるようになる』という。

さらにウィテカー氏は、『いま市場を独占している巨大企業は、みな監視ビジネスに、早期(2000年代前半)に参入した企業だ。』『「人々は無料で商品やサービスを得て、費用は広告主が払う、という仕組みこそが、監視ビジネスの中心で、彼らは「テクノロジーは無料である」という魔法のような考えを、一般の消費者の間に広げることに成功した』という。
https://www.asahi.com/articles/DA3S15608778.html

ここで言う『「テクノロジーは無料である」という魔法のような考えの普及』とは、すなわち、スマホの普及によるものと考えて間違いないだろう。

私たちは、うかうかと「自由の幻想」を享受している間に、巨大IT企業の権力集中に力を貸し、監視社会の一層の強化と、AI技術をドローン攻撃の標的や誘導に使うなど、軍事への直接的関与すら許す結果を招いてしまったようだ。

ウィテカー氏は、「権力集中の回避策」として、政府による規制を第一に挙げ、『私たちは(何億ドルもつかって政府に圧力をかける巨大IT企業ではない)もう一つの声として、政府に圧力をかけなければいけない』と進言する。

日本社会についていえば、情報のデジタル化やAIツールの普及をやっきになって進めようとしている日本政府に対し、私たち主権者は、機密情報の取り扱いを含む規制強化を強く求めることが、まずは重要だろう。

それと同時に、私たち自身、「簡単・便利」に慣らされるうちに、『自律や分散を基本とする「自由の技術」だったはずのインターネット』が、実は自らを縛る「監視の技術」に変容していたことに思いを致し、この際一度立ち止まって、「適切なスマホの使い方」について考えてみることも、必要なのではないだろうか。