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1031 「闇バイト」の背景にあるもの 笹井明子 2023/02/28 00:09:44
このところ、殺人をも厭わない荒っぽい強盗事件が全国で相次ぎ、海外からスマホを使って国内の「闇バイト」に指示を出していたとみられる犯罪主導者や、彼らの指示に従った実行犯たちが次々に逮捕されている。

連日報道されるテレビやネットの情報を見ていると、これまでは自分とは縁遠いできごとだったはずの凶悪事件が、いつ自分の身近で起きて、自分自身が被害者になっても不思議はないと、大きな不安を感じさせられる。

それと同時に、従来なら普通に暮らしていたはずの人たちが、ここにきて手軽なアルバイト感覚で重大な強盗事件の加害者・加担者になってしまうように見えて、ある種の辛さと疑問を抱かずにはいられない。

いったい今、日本社会で何が起きているのか。

毎日新聞の東海林智記者が、2月24日付「記者の目」欄に、自身が2020年の春、東京都内版デスクをしている時に感じだした「特殊詐欺」の様態の変化について、〔広がる「闇バイト」〕のタイトルで、記述している。

『(従来の)特殊詐欺では、逮捕されるのは若年の、「半グレ」と呼ばれる不良グループが目立ち、中には中高生も含まれていた。
ところが、(2020年以降)逮捕された者に若い女性や外国籍の人、高齢者が目に付くようになった。3社の共通点は、コロナ禍の中で生活困窮に陥りやすい状況にあることだった。
派遣社員として働いていた21歳の女性は、「コロナの影響で派遣の仕事がなくなり生活に困った」ことから、スマートフォンで「即金」「高額報酬」の言葉で検索し、ツイッター経由で「闇バイト」につながった。
70代の男性は、生活苦のため特殊詐欺の受け子になり、300万円をだまし取ったとして逮捕された。受け子で得た金で暮らすか、逮捕されて刑務所で暮らすか、どちらも一緒だったのではないか。・・・』
『「闇バイト」には、小遣い稼ぎ感覚で手を染める者がいるのは間違いなく、犯罪組織に荷担する行為で、一生を台無しにすることだと繰り返し伝える必要がある。
同時に、生活に困窮した人々がこうした誘惑に陥らないことが重要だ。そのためには、最低賃金のさらなる引き上げを行うなど不安定で低賃金の雇用を放置しないことが大切だ。格差と貧困が社会の不安定要因になることを政府は自覚すべきだ。』

改めて言うまでもなく、憲法13条には、「個人の尊重・幸福追求権」が明記されている。岸田首相は、2月26日の自民党大会で「時代は憲法の早期改正を求めている」と述べ、改憲への強い意欲を示したとのことだが、現憲法のこうした理念こそが、日本という国の治安を守り社会の安定を支える基盤であることを、今一度銘記し、「国民のための政治」に本気で取り組むべきだろう。