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1021 歴史から学ぶ、歴史で学ぶ 見習い期間 2022/12/25 18:24:39
公共図書館は、現在では誰でも無償で利用できて当たり前だと思われている。しかし、利用者を選別しない図書館が成立したのは、図書館の歴史の中ではつい最近の出来事である。
筆者は司書過程を履修していた際に、図書と図書館の歴史を学ぶ機会があった。図書館が自由を獲得するまでに長い時間をかけて幾多の困難を乗り越えてきたことを知り、あたかも空気のように享受している権利は先人たちによって作られた貴重なものだと、ありがたく思うと同時にこれからも継続させないといけないと強く感じた。

日本では、1899(明治32)年に図書館について規定した法律である「図書館令」が公布される。ただし、この法令の大きな問題点として、公立図書館において閲覧料を徴収することを認めていた点が挙げられる。閲覧料徴収の撤廃は戦後の「図書館法」の成立を待たなければいけなかった。
江戸時代の貸本屋や幕末から明治期にかけて日本各地に存在した新聞縦覧所などのように、いわゆる庶民のための開かれた読書機関としての役割を果たした施設は存在するが、大半が有料である。
また、江戸時代以前に作られた図書館に類似する施設は、各時代の有力者や貴族などによるものが多かった。個人が所有する文庫などを開放していても、利用するのは文庫所有者の門弟か好学の者、聖職者などのように範囲は限られていたようだ。

世界全体に目を転じても、近代以前は王族や貴族が作った図書館や修道院図書館というように、一般への利用提供というよりは資料を収集し保存することに力を入れていた。古代ローマの帝政期にみられるような公開型の図書館もあるが、一般公開されているものがスタンダードであるとは言い難かった。

私たちの知る権利を保障する機関である図書館は、生きるうえでかけがえのないものである。自分で物事を判断し行動するにあたっては、資料や情報を収集することが必要になり、その際に図書館が誰にでも開かれていなければならない。
選挙で当選したはずの議員による不祥事が相次ぎ、大臣の辞任も目立つ。投票の際に候補者や政党の情報を集めることは当然のことであるが、当選して私たちの代表者として国政に携わる人たちが日々何をしているのかについても、調べる必要があるのではないか。
そして、日々の活動と実績を記録として残し、発信する際にも発信する側にとって都合のいい情報ばかりを流さないようにする必要がある。

全ての人に開かれた図書館のような場所の必要性を再認し、間違ってもその貴重な自由が奪われないようにしないといけない。そして、情報を発信する側も選ぶ側も、知る権利を保障できるように努めなければいけない。