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1019 21世紀、世界はどこへ(海の民の覇権から陸の民の連携へ)(1) 流水 2022/12/12 13:09:09
●2022年は世界の大転換の始まり。
2022年も終わろうとしているが、誰にも世界の行く末は見えていない。

米国を始めとする先進各国を襲っている【金融バブルの崩壊】は、経済の自律的メカニズムとは言い難い。かなり意図的なバブル崩壊が行われている様相が強い。

日本の黒田日銀は、金利引き上げを頑なに拒み、世界の金融当局と真逆とも受け取られる金融政策を変更しようとはしていないが、FRBに代表されるように、各国当局は、徹底的な金利引き上げによるインフレ抑制策を行い、何が何でも【金融バブル】を潰そうとしている。
※日銀は、黒田総裁の辞任後に世界と同じように金利引き上げに踏み切る可能性が高い。

リーマンショック以降、欧米の金融機関は利下げに走りジャブジャブに市場にお金を供給した。以前にも書いたが、実体経済が稼ぎ出す数倍以上のお金が市場に供給され、物の値段が高騰した。いわゆる【金融バブル】である。

このバブルも、賃金がモノの値段の高騰(インフレ)に見合って上昇しているうちは何とか持つが、賃金上昇がモノの値段の高騰についていけなくなるとインフレは国民生活を直撃する。

このように、「金融」はこのように経済や国民生活に深くかかわっている。

最近よく語られるようになった【ディープステート】とは、この【金融】を乗っ取ることにより世界を支配しているとされる連中を指す。

【ディープステート】を分かりやすく具体的なもので言うと、【ダボス会議】に出席する機関や人々を想像してもらえれば、当たらずといえども遠からずと思う。

この【ダボス会議】で決定された種々の政策が世界各国で喧伝され、事実上のグローバルスタンダードになっている。

【金融支配】は国境を持たない。というより、国家の主権や国境線など邪魔な存在に過ぎない。できうる限り、世界の国々を同一の基準や法によって支配することが、最大の利潤を生むことができる。

グローバルスタンダードとか世界基準とか、統一政府などと言う理屈は、「金融支配」にとっては、それがこの上ない利益をもたらす都合の良い理屈だからである。

バイデン大統領など米国の大統領たちが時に触れて口にする「NEW WORLD ORDER」とは、一つの基準に基づいて世界を支配する「金融支配」の理想を意味している。

ところが、この「金融支配」が大きな綻びを見せ始めているのが、現在である。

金融の本来の姿は、庶民にとっては、【無尽講】や江戸時代の【両替商】のようなものだった。
※「無尽講」とは、相互に金銭を融通しあう目的で組織された講。世話人の募集に応じて、講の成員となった者が、一定の掛け金を持ち寄って定期的に集会を催し、抽選 (ちゅうせん)や入札などの方法で、順番に各回の掛金の給付を受ける庶民金融の組織。(コトバンク)

両替とは、様々な通貨を「両替」するのが仕事。現在でいえば、仮想通貨を本来の通貨に両替するような仕事を指す。

実は、江戸時代にも【札差】という金融機関もあった。【札差】は大名貸しが本業。大名に多額の金子を貸し、金利を稼ぎ、借金のかたを取り、それを売却して利を稼いだ。庶民にとってはかなり遠い存在だった。

ところがこの【札差】も、大名と言う実体経済が崩壊するとともにその力が衰え始めた。現在の【金融支配】も【札差】と同様な運命を辿っている。

英国が主体となっている「金融支配」は、基本的に法支配を原則とする。【法支配】は例外を許さない。各国の内部事情など考慮に入れない。

この【法支配】を最も得意技としているのが、英国・米国を中心とした欧米海洋国家(海の民)。

海の民は、基本的に国家や国境に支配されない。海がある限りどこにでも出かける。当然そこに住んでいる民族や国家などとの軋轢は避けられない。七つの海を支配する帝国と言われた英国などはこの軋轢にさらされ続けた。その意味では、他国を支配する悪知恵にかけては、英国の右に出る国はない。
本来よそ者なのだから、その地に住んでいる住民(国民)に大歓迎されるはずがない。結果、基本的には、武力で支配する。しかし、力での支配を続ければ、いずれその国の民衆などの反乱を招く。
その為には、自分たちの支配にその国の国民(民衆)がある程度納得できるルールや配慮が必要になる。支配をするにも相手が納得できる理屈がいる。これが【法支配】というわけである。
イギリスのCOMON LAWの本音であろう。

他の一つは、支配している国の中から優秀な人材を育て、支配している国の統治を任せる方法が必要になる。いわゆる【間接統治】である。

明治維新の時、欧州へ多くの優秀な若者たちが留学した。その中で有名なのが、長州五傑と呼ばれる若者たち。

※長州五傑(ちょうしゅうごけつ)は、江戸時代末期(幕末)の1863年に長州藩から清国経由でヨーロッパに派遣され、主にロンドン大学ユニヴァーシティ・カレッジなどに留学した、井上聞多(馨)、遠藤謹助、山尾庸三、伊藤俊輔(博文)、野村弥吉(井上勝)の5名の長州藩士を指す。

彼らや渋沢栄一、福沢諭吉などが、明治の西欧化(西欧のシステム=当時のグローバルスタンダード)の先頭を切った。
このようなやり方が、いわゆる「間接統治」の方法である。
明治維新後の日本は、中国のような露骨な植民地支配は免れたが、西欧各国のグローバルスタンダードを積極的に導入。日本を近代国家に変身させることにより、国際社会への仲間入りを図ったのである。

IMFや世界銀行などが行ってきた各国の抱える個別の問題、債権者の抱える個別の問題などを無視した「金融支配」の崩壊は、広範な世界の産業崩壊を招く。産業崩壊は、各国の生活者の生活崩壊を招来する。
これが【恐慌】である。現在の欧州の惨状は、世界恐慌一歩手前を予感させる。

俯瞰的に眺めると、現在の欧米各国の窮状は、近代世界を支配してきた欧米海洋国家支配(海の民支配)終焉の序曲であり、ロシア・中国などを中心としたBRICSなどの大陸国家(陸の民)の連携の始まりだと読まなければならない。

ウクライナ戦争の本質は、近代を支配してきた欧米海洋国家に対する大陸国家の反逆であり、ドル一極支配の崩壊や国連の機能不全は、海の民支配の源泉である【法の支配】=グローバルスタンダードに対する根本的な挑戦だと読まなければならない。

この視点で現在の日本の政治を眺めると、ほとんどの政党や政治家は、欧米海洋国家(海の民)の支配論理から脱却できていない。ほとんどのメディア、進歩的とされる知識人や平和組織も脱却できていない。

日本の現在のカオス(混沌)な政治状況・言論状況を脱却できて初めて21世紀日本の羅針盤を手に入れることができるはずである。