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0959 今回の選挙:令和版大政翼賛会の形成 流水 2021/11/15 09:20:01
「負けに不思議な負けなし、勝ちに不思議な勝ちあり!」

衆議院選挙が終わった。
今回の選挙。かってないほど、様々な工作が行われた。
体制側の危機感がそれほど強かった、と言う事である。
体制側の危機感の深刻さに対して、攻める野党側の準備不足、メディア戦略の稚拙さが目立ち、千載一遇のチャンスを逃した。
これにはいくつかの理由があるが、敗北には敗北するだけの理由がある。この理由をきちんと総括しておかないと、次の戦略は描けない。

🔶野党敗北の理由

(1)一つは、国民民主党の裏切り。(連合の工作)

◎国民民主党は、比例の投票先に「民主党」と略記。立憲民主党が「民主党」としているのを百も承知でそう届けた。
そのため、有権者が投票した「民主党」という略記の投票は、立憲民主党と国民民主党との間で半々に分割された。
これが立憲の比例の当選率が低かった大きな要因になった。
同時に国民民主党の善戦の理由でもある。
おそらく、国民民主党の幹部は、意図的に「民主党」という略記を届け出たはず。国民の間にある旧民主党(リベラル政党)に対する支持票を取り込むためである。
こういう姑息な国民を惑わす行為をする政党は必ず裏切る。

案の定、選挙が終わると途端に独自路線に舵を切った。維新との共闘だそうだ。
少なくとも、民主党の支持者の大半は改憲に慎重な人々。こういう人たちの票を「民主党」と略記させることにより集めておいて、選挙が終わると立憲民主党ではなく、極右に近い維新にすり寄る。
さらに参議院選挙の2人区には全て候補者をたてるそうだ。野党共闘を乱すためだ。
こういう騙しのような政治手法をするような政党に明日はない。

立憲民主党ももう少し選挙前に対策を講じるべきだった。どうも枝野代表を始めとする立憲の幹部連中は、こういう政治闘争のどろどろした汚れが苦手のようだ。こんな卑劣な手口を使う国民民主党などとは明確に一線を画さなければならない。

(2)連合の裏切り

国民民主党の背後には、「連合」がいる事は火を見るより明らか。
連合を仕切っているのは六産別。(電力、電機、自動車、鉄鋼、機械・金属、繊維・流通等の大企業御用組合の連合体)=大企業御用組合=旧同盟系=約400万人 ⇒新自由主義推進勢力
これに対し旧総評系組合⇒約300万人

◎連合内の六産別の支援を受けた国民民主党や立憲民主党内の議員たちの主張。(本音の部分)
1.戦争法制の容認
2.原発稼働の推進
3.消費税増税の推進
◎立憲民主党内の共産党と共闘すべきと主張するグループの主張。
1.戦争法制の廃止
2.原発稼働ゼロ
3.消費税減税・廃止

立憲民主党は、「連合」幹部と手を切らなければ、政権奪取はおぼつかない。今回の選挙でも、吉野会長が共産党との共闘に選挙前にもかかわらず何度も異議を唱えた。
選挙前のこういう発言が国民にどう映るかを百も承知で発言している。端的に言えば、立憲民主党の足を引っ張った。
これは、自由民主党の援護射撃に他ならない。

今や「連合」は、労働者の代表でも何でもない。大企業や自民党など体制側の二軍としての存在価値しかない。今回の選挙でそれが明白になった。
「立憲民主党」が「連合」の思惑に翻弄されている限り、政党としての未来はない。

(3)維新の躍進(ゆ党)⇒日本のトランプ的政党(ナチス党に変身する可能性大)

維新という政党は、橋下徹が立ち上げた政党。
橋下徹は、日本TV系列の「行列ができる法律相談所」という番組で人気を博した弁護士。これに目をつけたナベツネなどの支援で大阪府知事に立候補。“絶対出ない”などと言って、立候補。
こういう手法で、メディアの関心をひく。メディア戦略に長けた人物。

維新と言う政党は、結党当時から、その目的は明白。
2013年当時、自民党に対する国民の支持は激減。民主党が政権を獲得する勢いだった。こういう自民党の勢力減少を食い止めるために体制側が考え出したのが、一見、革新的で野党に見える過激な政策を打ちだし国民の支持を獲得できる政党をつくり、自民党に飽き始めた国民の受け皿をつくる。
そして、国会では、野党批判に力を注ぎ、結果として与党の協力をする。
これが目的の政党である。

以前にも書いた事があるが、2〜3年前から、橋下徹のTV露出が異様に増えた。TV番組紹介欄でも橋下徹出演と書かれたものが異様に増えている。
さらにコロナ危機対応で吉村知事の対応策を持ち上げるTV局が多く、彼のTV出演も目立った。

吉村知事は、必ずと言って良いほど、政府のコロナ対応を批判する。まずその批判で自らの存在価値をアピールしておいて、最後は政府の指示に従う。まあ、政治の世界で言う“マッチポンプ”的なアドバルーンの上げ方が上手い政治家。橋下徹の政治手法の後継者は彼だろう。

吉村知事や橋下徹などを例えるとしたら、トランプ的手法に近い。いわゆる右からの革新だと言える。
一見革新的に見える過激な改革を行い、民衆の支持を取り付ける。歴史的に言えば、権力を勝ち取る前の「ナチス党」の役割を果たそうとしている。

『維新』という政党は、その主張は、きわめてネトウヨに近い。選挙前松井代表の討論など、立憲民主党と共産党との【共闘批判】だけしかしていない。
具体的政策論などほとんどないに等しい。
こういうネトウヨ的手法と論理が維新。だから、選挙が終わると同時に、『憲法改正』だなどと喚き始めている。
これと組もうというのが、国民民主党。

今回の選挙が、憲法改正論者の「大政翼賛会」を創り出したのである。
現在の日本政治の根幹を支えている常識的な民主主義論者、戦争反対の立場の人、強権的手法に反対の人、腐敗・堕落の世の中を拒否し、公平・公正な世の中を望む人、憲法改悪に反対の人などは、戦後最悪の政治状況を迎えていると覚悟しなければならない。

🔶立憲民主党、共産党、などの「共闘論」の分かりにくさ。
  立憲民主党指導部の腰の据わらなさ!

今回の選挙、立憲民主党と共産党との共闘が敗北の最大の要因だという意見がメデイアを席巻している。

全く逆だろう。
野党側敗北の最大の要因は、単純明快な「野党共闘」の理念を打ち出せなかった点にある。
明快な「野党共闘」理念が見えない事が、民主党支援の常識的国民の嫌気を誘った点にある。

野党は、「自公民の悪政に終止符を打つ。この一点で、野党共闘をする。」と徹底的に主張すればよかった。
「このままでは日本は沈没する」という危機感を訴え、徹底的な自民党政治の批判キャンペーンを張るべきだった。
「野合」批判などためにする議論だと一蹴すればよかった。

共産党といやいや共闘するという姿勢が目立つようでは、勝てる戦いも勝てない。

枝野代表は立憲民主党を立ち上げた創始者。
その彼がわたしは「保守主義者」などという発言をするから訳が分からなくなる。
枝野の「英国型保守主義」と安倍晋三がいう「保守主義」とは、「鷺とカラス」ほどの違いがあるが、それを現在の国民に理解してもらうのは至難の業。

現在の保守主義とは右翼の別称。
維新もそうだが、現在の右翼連中の常套手段は、言葉だけは国民受けの良い(抵抗の少ない)言葉を使って、中身は全く違う事をする。完全な騙しの手法で、彼らは完全な確信犯。

例えば、安倍元首相がしばしば語る「民主主義の価値観を共有する国」という言葉がある。中国やロシアなどを批判するときにしばしば使うのだが、この言葉だけを聞いていると、彼は民主主義の体現者のように聞こえる。
ところが、彼のやっていることは、森友・加計問題をはじめ、「政治の私物化」が目に余る。「政治の私物化」など民主主義とは正反対の政治手法。

現在、「保守主義」を公言する連中には、『公』の精神が希薄。
自分たちの仲間は大切にし、自分たちに反対する個人や集団は、排除する。
民主主義とは、国民の権利は最大限尊重するが、政治家など公職についている人間は、『公』の利益を最優先し、決して、自らの利益を決して優先してはならない。

現在の右派政治集団は、この古くて新しい『公私の問題』の区別がついていない。
自分たちだけが、国を憂いている愛国者のごとく振る舞うが、その実は自らの利益を優先する「権力志向集団」に過ぎない。
このような『言葉の詐術』が専門の集団と考えなければならない。

このように現在の日本では、「保守主義」という言葉には、手垢がついている。
枝野代表には、「わたしは保守主義」という言葉は、現在では「わたしは右翼」という言葉と同義だという認識が足りなかった。
「保守主義」という言葉にこだわるから、共産党との共闘に対する明快な姿勢を打ち出せなかったのである。これが最大の敗因だと認識しなければならない。

次に、「野党共闘」を本気で志向するなら、比例部分では新しい「野党統一会派」を結成。その名称で国民に投票してもらう努力をすべき。こうすれば、国民民主党と立憲民主党双方が「民主党」という略称を使い、立憲民主党が比例で大きく減少するなどと言う事はなくなる。
野党間の議席配分についての協議が野党各党指導者の腕の見せ所だろう。
そうすれば、比例の死票がなくなり、勝利の決め手になる。

要するに、わたしたちは「建設的な野党です」というようなあいまいな態度が信頼を勝ち取れない最大の要因。

先に書いたように、現在の自民党や公明党、維新などには、大きなグランドデザインは描けない。
だから彼らの政策には一貫性がない。
結局、その場その場で国民受けの良い政策を細切れで出すしかない。
「建設的な野党」とは、その手伝いをする結果にしかならない。
今回の10万円給付問題やコロナ対策でも明らかなように、野党提案の政策をつまみ食いされ、手柄は自民党という結果を招く。

「野党は批判ばかり」という批判に対する答えは、野党の役目は、「徹底的な批判」で答えるのが筋。
政府提案法案の問題点を国会で徹底的に論議し、国民の前に明らかにするのが、野党の責務。
「正・反・合」の原則、「批判無くして、進歩なし」の原理原則が民主主義の原点。
この原則を無視した「野党は批判ばかり」という批判をする連中は、反民主主義者。

この筋論を忘れ、腰の据わらない批判を繰り返すから、逆に国民の信頼を失う。

もう一つは、メディア戦略の不足。
野党にとって「維新」はきわめて厄介な敵。
何故なら、彼らは、ナベツネが主導するメディアの後ろ盾を得ている、と考えなければならない。
橋下徹が代表するように、「維新」の主張が「常識」的であるという空気が醸成されつつある。
一言で言えば、「似非改革」である。

鶴見俊輔が2・26事件を「ホームランかと思われた大ファール」と評したように、日本で起きる革命的変革は、右からの極端な変革になりやすい。
戦後の民主主義的変革は、敗戦後のGHQによる変革であり、国民の手による変革ではなかった。

トランプ流変革の行きつく先は、トランプの支持者による国会襲撃が象徴している。結局、民主主義の否定に行きつく。米国でさえそうなのだから、日本の場合も推して知るべき。

立憲民主党を中心とする野党は、現在の日本の国民の感情を支配している“精神の閉塞状況”を掬い取る政策と“精神の閉塞状況”に穴をあける政治的行動をしなければ、政権奪取など夢のまた夢。

・・・閑話休題・・・・・
昨日、藤井聡太三冠が名人位と並ぶ将棋界の最高位である竜王位を奪取した。
羽生9段をはるかに凌駕する歴代最年少の4冠獲得である。

何故、彼の活躍がこれほど人々の心を掴むのか。
彼の対局姿勢を見ていると、きわめて冷静沈着。10代の少年とは思えない。
普通の棋士なら、“この手しかない”という場面でも、彼は決して手拍子で指さない。深く考えて、最善の手を指す。
今回の対局もそうだったが、彼は相手棋士よりはるかに持ち時間を長く消費する。それも序盤に消費する。
それでいて、最終盤になり、一分将棋に追い込まれても、正確に差し続け、相手を圧倒する。

彼のこの思考法は、AIによる勉強の賜物。彼は「ディープラーニング」=【深層研究】と呼ばれるソフトを使っているそうだ。
普通のソフトは、局面局面の最善手を提示するが、「ディープラーニング」によるソフトは、一手一手を総合的につなぎ合わせたいわばグランドデザイン的思考をするソフトだそうだ。
藤井聡太の師匠の杉本氏によれば、従前のソフトは、立って将棋盤を見ているようなものだが、「ディープラーニング」のソフトは、二階から将棋盤を見ているようなもので、視野の広さが決定的に違うそうだ。
彼の怪物的強さは、この「ディープ・ラーニング」的視野の広さにあるといって過言ではない。
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立憲民主党をはじめとする野党連合の弱点は、“二階から将棋盤を見る”ような視野の広さがない点にある。
一手一手の正確さもさることながら、きちんとしたグランドデザインに基づく指し手の論理的系統性が求められている。
政治的局面の変化に手拍子で対応するような浅はかな政治手法を極力排除して、そういう時ほど腰を落とした冷静な対応をすべき。
今回の敗戦は、野党各党に“ディープラーニング”的思考と政治手法の必要性を投げかけている。