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0946 派閥政治の崩壊か、自民党政権の終焉か 笹井明子 2021/09/07 22:23:11
菅首相の突然の自民党総裁選不出馬宣言を受けて、メディアは「不出馬」に至った経緯を、訳知り顔で解説し、次期自民党総裁選に向けた、派閥の長の思惑や衆院選を睨んだ若手議員の造反の動きなどを、連日面白おかしく報じている。まさに自民党による電波ジャックの様相だ。

コロナ禍による医療崩壊、在宅放置死、長引く緊急事態宣言による飲食店や観光業の困窮、失業者の多発をよそに、国会も開かずに、政府・自民党は一体何をやっているのだと、心底あきれ、怒りを覚える一方で、日々喧しく語られる「派閥の論理」や、安倍・麻生・二階氏ら派閥領袖の党内での影響力を、非当事者として俯瞰して眺めていると、「成程、今の自民党政治はこうして成り立っているのか」と気付かされ、彼らの浮世離れした「力の論理」に、存外脆さや攻めどころがあることを気付かされたりもしている。

思えば、第二次安倍内閣発足から9年余、自民党は財界やアメリカ政府の支持を後ろ盾に、一貫して憲法破壊、国民不在の政治を続けてきたが、長期政権の座に胡坐をかき続ける中で、露骨な政治の私物化も表面化してきた。その象徴的な出来事が、繰り返しになるが、「森友・加計」問題、「桜を見る会」問題であり、安倍氏を庇うために繰り広げられた財務官僚らによる隠蔽・虚偽・公文書改ざんという政治の劣化である。

これらの問題は強引な答弁や恣意的な人事権の行使によって蓋がされたかに見えるが、実は何一つ解決されてはおらず、国民の政治に対する不信感はマグマのように存在し続けている。そしてそれは、安倍氏にとって蒸し返されたくない「脛の傷」になっていることが、今回の総裁選に向けた彼の動きに如実に表れている。

そもそもコロナ禍で人々が苦しむ中、安倍氏が「持病の再発」を理由に総理の座から逃走した際に、官房長官だった菅氏を後任に就けたのも、彼が同じ穴の貉として、「脛の傷」には決して踏み込まないことを見越しての判断だったに違いない。

コロナ感染に有効な手を打つことなく、オリパラなど、感染拡大や医療逼迫に拍車をかける施策を進め続けてきた安倍・菅総理。国民を見下した横柄な態度で安倍・菅政治を後押しし続けてきた麻生副総理・兼・財務大臣。党の実権を握り続けたいがために菅総理を積極的に支えてきた二階幹事長。これら派閥領袖の傲慢で身勝手な言動と、彼らの傀儡と化した総理大臣の在り方に、国民の気持ちが完全に離れていることは、世論調査によっても明らかなのに、それに気づかない彼らの「裸の王様」振りは、滑稽を通り越して、無残としか言いようがない。

この調子で、国民の命と暮らしの危機的状況に背を向けたまま、内輪の論理で総裁選を終えた後に何が訪れるのか。世論に敏感な若手議員の造反による旧態然とした派閥政治の崩壊か、新旧議員共倒れによる自民党政権の終焉か。あるいは国民の諦めと無関心に助けられた自民党政治の継続か。

その行方は、政治の在り方が自分たちの命や暮らしに直接関わっていることを、身をもって知らされた私たち国民の、冷徹な眼差しとあきらめない粘り強さ、そして、国民の命と暮らしを守りぬく真っ当な政治実現に向けた野党各党の本気度、政権交代実現のために共闘する柔軟性、戦略性に掛かっている。

総裁選の後には、衆院選が待っている。遅ればせながら、今日、野党第一党の立憲民主党は政権交代を見据えた政権公約第一弾を発表したという。

自民党政権の不作為によって命の危機にさえ晒されてきた私たちだが、政権交代の可能性を視野に、気持ちを強く持って、もうひと踏ん張り。皆さん、頑張りましょう!