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0938 緊急事態宣言下の東京五輪 笹井明子 2021/07/21 17:09:14
東京のコロナ感染者が連日1000人を越え、東京及び首都圏で第五波の感染の波の勢いが止まらない中、今日からオリンピック競技がスタート。開会式も予定通り7月23日に行われる見通しです。

この間、コロナ感染拡大に拍車をかける危険性を懸念し、宇都宮けんじさんの呼びかけによる五輪中止のネット署名は45万筆を超え、落合恵子さん、上野千鶴子さんら作家/小説家/作曲家/学者/ジャーナリスト/元外交官の集まりが7月2日に始めた「五輪開催反対」署名も今日現在14万筆以上が集まり、国内世論調査でもオリンピックの中止又は開催再延期を求める声は、常に70%近くに上っています。

こうした国民の反対の声を、「始まってしまえば皆夢中になって応援する」と甘く見ていた政府、東京都、JOC、及びスポンサー企業は、逆風の強さにアタフタするばかり。

政府は、オリンピック開催までにコロナ感染を押さえたかった菅総理の「7月いっぱいで国民の5割の接種を終える」との言葉に添って、自治体に態勢づくりを急がせ、大規模接種センターの設置や職域接種に手をつけたものの、たちまちワクチンに不足が生じたとして供給を止める事態を招き、河野ワクチン担当大臣が知事会に陳謝。(ちなみに、(7月20日現在、2回接種の接種率は、高齢者が62%、全体で23%。
https://www.kantei.go.jp/jp/headline/kansensho/vaccine.html)

さらに、コロナ蔓延防止のためとして、酒を提供する飲食店に対する陰湿な締め付け策を発表した西村コロナ担当大臣は、ターゲットとされた飲食店は勿論、圧力を掛けることを求められた金融機関、酒造業者団体からも強い反発を受け、程なくして撤回と謝罪に追い込まれました。しかしこのことは、これら当事者だけでなく、「友達と軽く一杯」というささやかな楽しみの自粛を強いられている私たち庶民の気持ちをも逆撫でし、菅政権自体への反発となって跳ね返っていることは、最近の不支持率の拡大にも見て取れます。

東京都は小池知事が絶妙なタイミングで「体調不良により入院」し、オリンピック当事者の座から巧みに姿を消したのは、ある意味「さすが!」というべきかもしれませんが、私たち都民の税金がオリンピックに大量に投入されていることを忘れるわけにはいきません。

そして、JOC。いよいよ開催が不可避と決まり、海外からの選手団やメディア関係者が来日し始めると、「バブル」が穴だらけで、水際対策も失敗、大会関係者と選手村から80名近くのコロナ陽性者が出るという、恐れていた事態が既に起きていることが判明しています。

今回のオリンピックに関しては、コロナ禍の問題だけでなく、組織委会長を辞任した森喜朗氏、演出統括役を降りた佐々木宏氏に続き、ここに来て開会式の楽曲を担当した小山田圭吾氏が過去のとんでもない虐待の指摘により辞任と、「オリンピック憲章」の「建前」は勿論、現代社会の常識を大きく踏み外した「人権感覚の欠如」が明るみに出て、世界の注目を集めてしまっています。

更に言えば、東京五輪のサッカー競技を小中学生が観戦するに当たり、「スポンサーに配慮した対応をお願い」というJOC担当者の要請によって、一部小学校が保護者に「できるだけコカ・コーラ社製飲料を持ち込むよう依頼」したなど、「平和の祭典」とは裏腹の、スポンサー企業の「資金獲得」を目的とした、一部独占利権のための巨大イベントであることを示しています。

こうした多くの批判と不安の眼差しの中で、東京五輪は間もなく始まろうとしています。

今朝の朝日一面には、「新聞再延期や中止を選択しなかったことの是非は問われ続けます。私たちは、五輪が感染状況や市民生活にどう影響し、後世に何を残すのかにも目をこらします。そして、逆境を乗り越えた選手たちの躍動をしっかりと伝えます」という坂尻編集局長の言葉がありました。

オリンピックが開始されても、マスメディアには、安易にオリンピックの盛り上がりを演出するのではなく、坂尻編集局長自身が言うように「光と影」をきちんと誠実に報じることを、この時代の目撃者=メディアの義務として求めたいと思います。

そして私自身は、今を生きている一人の国民として、今後も引き続き「オリンピック開催反対!」の意思を表明し続けていきたいと思います。