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0934 五輪がやめられない理由 流水 2021/06/21 11:57:33
菅政権は何が何でも五輪を行うつもりである。G7には、開催のお墨付きをもらうために出たようなものだ。誰が何を言おうと一切聞く耳を持たない。

五輪が中止になると、菅政権の存続はないというのが、党内の大勢。事ほど左様に、菅政権の命運は、五輪開催にかかっているのである。

菅政権のコロナ対策の目玉であるワクチン接種は、五輪遂行のための【切り札】。尾身分科会会長との確執が取りざたされているが、如何に五輪遂行が菅政権存続の鍵になっているかを示している。

(1)オリンピック理念の空洞化

メディアでも五輪開催是非の議論がかまびすしいが、この騒ぎの中で見落としてならないのは、近代オリンピックの掲げた理念の虚妄が白日の下にさらされている、という点である。尾身会長が「この状況下でオリンピックをやる理由(理念)」を問うていたが、その通りである。

先日、開催反対派のデモに街宣右翼が大音響のスピーカーとともに乱入し、警察と小競り合いを繰りかえしていた。ここで象徴的に示されているのは、五輪開催強行派は、街宣右翼と同じ発想をしているのではないか、という疑いである。

そもそも、街宣右翼の思想理念と平和を中心に据えた近代オリンピックの理念と相容れないのは、誰にでも理解できる。その彼らが、五輪反対派のデモに乱入したのである。理由は単純明快。菅政権(安倍政権の継承者)の政策に反対したから。要するに「自民党政権に反対する者には反対」というきわめて単純な発想だろう。

如何に五輪が国威発揚の場に堕しているかを如実に示している。ここからヒトラーのベルリンオリンピックまでの思想的距離はほんの一歩だろう。

(2)オリンピックに群がる政商たち

竹中平蔵が尾身会長の発言を「権限を逸脱している」と厳しく批判し、反対論者を「アホ」と罵っている。

この発言。竹中平蔵の本質を露わにしている。彼は慶応大学の教授もした経済学者らしいが、民主主義の本質も理解していない、と言わざるを得ない。民主主義が民主主義として機能するのは、自分の意見と違う意見の持ち主を許容し、重視する事にある。自分と違う意見の持ち主を「アホ」と切って捨てるなど、学者の意見ではない。

しかし、竹中平蔵を人材派遣会社「パソナの会長」として見れば、彼の意見は「そうだろうな」と頷ける。パソナにとつてオリパラは金のなる木。オリパラ否定論者は、会社の敵。パソナの濡れ手に粟の儲けをパーにする意見。この事は、彼が会長を務めるパソナの企業業績を見れば良く分かる。

【パソナの営業利益】
今年4月13日にパソナが発表した2021年5月期の純利益の予想額は62億円。2020年5月期の純利益(5億9400万円)の10倍強にのぼるなど空前の増収。
同期連結営業利益も、過去最高益となる前期比65%増の175億円にのぼる見込みで、売上高も従来予想から40億円上乗せの3300億円になると見られている。

竹中平蔵は、小泉政権下で総務大臣に任命され、安倍・菅政権では、規制改革会議や成長戦略会議など政府の諮問委員を歴任してきた。典型的な政府のブレーン。彼は、小泉政権以降、政治の場で人材派遣などの規制改革緩和を積極的に推進してきた。同時にその果実を彼は自社「パソナ」で独占してきた。現在は、各官公庁が発注するアウトソーシング事業を一手に引き受けている。

誰が見ても、「規制改革緩和」を審議し決定した人間が、自分の会社でその果実を独占するなどという事が行われてはならない。その人間(会社)のために、国法が決定されたと同じ。こんなことが許されたら、社会が腐る。それが公然と行われているのが現状。

コロナ禍においても電通などと一体化し、持続化給付金事業や一斉休校要請にともなう保護者への休業助成金など、公的業務を大量受注した。重大な欠陥が見つかったワクチンの大規模接種センターの予約システムでも、その運営会社「マーソ株式会社」の経営顧問は竹中平蔵。

(3)平井大臣の「恫喝」発言の背景

平井大臣の「恫喝発言」ばかりが取り上げられているが、この問題の本質は、巨額の契約が問題視された「オリパラアプリ」の費用削減を巡る問題。
 
◎オリパラアプリ⇒東京五輪観戦のために来日した観戦客や選手団などの入国前から出国後までの健康管理を目的にしたアプリ。⇒このアプリをスマートフォンに入れれば、14日間の隔離措置が必要ない。
政府が発注⇒NEC(日本電気)、NTTコミュニュケーションズ、日本ブジネスシステムなど五社の共同事業体。総額約73億円。⇒金額が高いと批判。ココア(接触確認アプリ)が約4億円。これと比較すれば、高すぎる。
◎6月1日、平井大臣が73億から38億円まで圧縮と発表。
◎この発表で、NECの顔認証(機能)は、開発も運用もなくなりゼロ(契約解除)などと説明。
金額の多寡はともかく、「顔認証は使わなくなったんで開発も運用もゼロ、契約解除」などと発言すること自体、滅茶苦茶な話。当然、NECは反発するだろう。そこで、平井大臣は、NECを「脅しておけ」とか文句を言うようなら「干し上げる」という発言をしたのである。

※「一発脅しておけ」>平井デジタル改革相まるでヤクザ!アプリ開発費でNEC恫喝(日刊ゲンダイ)
 http://www.asyura2.com/21/senkyo281/msg/392.html

本人は税金を無駄遣いしないために厳しい発言をしたなどと嘯いているようだが、オリパラを巡るお金の使い方が如何に不透明になっているか、の一つの証左である。

(4)IOC貴族とスポンサー企業の荒稼ぎの場としてのオリパラ

🔶IOCファミリー⇒IF(国際競技連盟)+NOC(各国のオリンピック委員会)。
東京大会には、約3000人が来日。
IOCファミリーの宿泊場所⇒「ホテルオークラ東京」「ANAインターコンチネンタルホテル東京」「ザ・プリンス パークタワー東京」「グランドハイアット東京」の全室提供。
負担額⇒IOC側 1人1泊 400ドル(約4万4000円)。これを超える差額は、組織委員会が負担。上記の五つ星ホテルの最高級な部屋は一泊300万円の部屋もある。これも全部組織委員会の負担。バッハ会長などはここだろう。

★上記の事が可能な法的根拠
宿泊するホテルについてもIOCの開催都市契約の付則のなかで「四つ星〜五つ星のホテルで計1600室。33泊の確保」などを開催都市に義務づけている。さすが「ぼったくり男爵」の異名を取るだけの事はある。

🔶IOCとは
@ 世界最大のNGO(非政府組織)で、世界最大のNPO(非営利組織) 本部 ローザンヌ(スイス) 
所得税や法人税の減免 非営利組織でも収益事業は可能 財務や報酬の公開は義務ではない(スイス民法)
A IOC組織 会長 副会長(4人) 理事(10人) 各国に1〜2人のIOC委員 
IOC総会⇒約100人が参加。五輪開催都市の決定。
B IOCの収入
テレビ放映権料(全体の73%)と、TOPといわれるワールドワイドパートナーからのスポンサー料(同18%)の二つが主で、その他に国内スポンサー料や入場券販売、開催国でのライセンス料などがある。
総収入は2013〜2016年の4年間で57億j(6156億円)、年間にして1500億円を上回る収益をあげている。

🔶IOC幹部の報酬
バッハ会長⇒22万5000ユーロ(約2947万) 住居=パレスホテル(ローザンヌ)が提供
会長のホテル代や生活費 約20万4000ドル(約2240万)と報道もある。(2014年のロゲ会長の時)

🔶IOCの非公式な収入
IOCの非公式な収入⇒さまざまな関連財団や子会社を設立。それを使って寄付金が各国を経由して環流するシステムをつくっている。
(例)OBS(オリンピック ブロードキャステイング サービス)=大会競技を撮影・中継する企業
  ⇒IOCは開催都市との契約。競技の撮影はOBSに発注する事を義務付け。
  東京オリンピックでも、東京都の負担額は数百億円。
  バッハ会長など理事がこのような関連会社の役員に就任。役員報酬を得ている。(非公開)

※このあたりの詳しい事情を知っている米国のジャーナリストたちが、バッハ会長たちを【ぼったくり男爵】と呼ぶのもむべなるかな、と思う。
    
🔶IOCと直接契約しているワールドパートナー企業(世界で13社)
◎「契約特典」⇒契約企業は世界のどの国でも自社広告に五輪マークの使用許可
◎スポンサー費用⇒4年間で400億円程度
◎契約13社⇒コカコーラ、P&G、VISA、G・E、ダウ・ケミカル、インテル、パナソニック、トヨタ、ブリジストン、オメガ、アトス、サムスン、アリババ
   
🔶IOCの総資産
総資産=41億ドル(約4500億円)

(5) 東京五輪の費用膨張の背景
   
▼IOCは、開催費用の支払いが免除⇒オリンピック憲章に規定
 開催費用⇒開催都市と国内オリンピック委員会、開催国などが負う。

▼東京オリンピックの費用
誘致当初⇒約7400億円
現在⇒  約3兆5000億円  
公表されている費用1兆6400億円(内訳) 組織委員会準備⇒約7000億円 
残りの9000億円⇒東京都と国が準備
これとは別に用意された金⇒国が1兆600億円、東京都約8000億円を五輪のために支出  
⇒首都再開発事業などが含まれる。(五輪名目)⇒大企業へ配られている。

▼IOCの契約するトップ13社とは別に開催国の組織委員会が独自にオリンピックパートナーという名のスポンサーを集めることができる。
◎このパートナー集め⇒電通(東京五輪の実質的作業の全てを請け負う)が請け負う。
(条件=費用)(推定 本間龍氏による)
1、国内最上級のゴールドパートナー15社からは1社当り150億円。
2、その次に位置するオフィシャルパートナー32社からは1社当り60億円程度。
3、その次に位置するオフィシャルサポーター20社からは1社当り10億〜30億円程度。
スポンサー収入の総額⇒約4300億円 電通の収入⇒約800億円(スポンサー管理料・推定)                                               

しかも、オリンピック組織委員会は、国や地方から派遣された公務員と電通などの民間会社から派遣された社員とで構成される半官半民組織。公益財団法人と民間組織の二つの顔を持つ。
契約書などの文書の公表を求められても、「民民契約」などで守秘義務があり、公開できない、の一点張りで押し通せる。だから、実際の経理がどうなっているか、藪の中である。

※上記のIOC関係の数値は、以下の記事を参考にした。
寄生する五輪マフィアたち コロナ禍で中止しない理由 IOC貴族とスポンサー企業の荒稼ぎ
https://www.chosyu-journal.jp/seijikeizai/21141
2021年6月10日 長周新聞

先日、TBSの報道特集で、現役組織委員会職員が経費の中抜きの告白をしていたが、あり得る話である。
※報道特集、動画「高額人件費のからくりを組織委職員が証言」
TBS 6月5日放送 6月13日14:00 終了

その他、JOC経理部長の飛び込み自殺から多くの疑いが囁かれている。
※JOC経理部長の飛び込み自殺で囁かれる「五輪招致買収」との関係…竹田恒和前会長、森喜朗前会長、菅首相も疑惑に関与
https://lite-ra.com/2021/06/post-5912.html
2021.06.07 07:50 JOC経理部長の飛び込み自殺で囁かれる「五輪招致買収」との関係, リテラ

菅首相やオリパラ推進派、IOC幹部などは、オリパラ開催を強行し、日本選手が活躍し、世論が盛り上がれば、オリパラを巡る上記のような問題(まだ一部)は雲散霧消し、菅政権の支持率は上がり、秋の総選挙で自民党が勝利できると踏んでいる。

特に菅首相は、総選挙で勝利できれば、長期政権を目指すことができるのではないかと考えており、何が何でもオリパラを強行開催するつもりである。

G7の会合で各国首脳の支持を得たと宣伝に努めているようだが、G7声明の最後の一行に辛うじて東京オリンピックの話が載っているだけの話。ほとんど話題にも上っていない。

この話。きっこのメルマガで詳しく解説している。
・・・・・ザックリ説明すると、70の項目のうち、1〜5は「前文」、6〜18は「新型コロナ対策」、19〜26は「新型コロナからの景気回復」、27〜30は「フェアトレード」、31〜36は「将来的展望」、37〜43は「気候変動と環境問題」、44〜47は「男女平等」、48〜69は「国際的な問題」、70が「まとめ」でした。全文を読んだあたしの感覚では、菅首相以外のG7の各首脳が最も重要だと考えているのは「新型コロナ」と「国際的な問題」、次いで「気候変動と環境問題」という印象を受けました。

−(中略)―しかし、全部で70の項目があるうち、69まで読んで来ても、どこにも「東京五輪」のことなど書かれていませんし「オリンピック」の「オ」の字もありませんでした。

…と言うか、世界にはもっと重要な問題が山積しているのに、極東の島国の運動会などに構っている暇などない、という空気が声明文全体からヒシヒシと感じられました。そして、最後の70の短い「まとめ」を読み始めたあたしは、最後の2行でアゴが外れそうになってしまいました。これほど長い声明文の本文には「オリンピック」の「オ」の字も書かれていなかったのに、最後の最後に、強引かつ不自然に「東京五輪」のことが2行だけ付け足してあったからです。・・・・
※五輪開催「G7全首脳が強い支持」と大嘘を吐く菅首相の厚顔無恥
https://www.mag2.com/p/news/501030
2021.06.17 『きっこのメルマガ』 まぐまぐニュース

それにしても、こういう話、大手メディアで全く報じられない。日本のジャーナリズムも落ちたものだ。これでは、中国や北朝鮮の報道とどこが違うのか分からない。

この話でよく分かるが、東京オリパラ開催が菅政権のレイゾンデートルで他の事は全く頭にない。G7で話し合われた他の重要事項についての話などほとんど聞こえてこない。まあ、これで先進国だなどとよく言えたものだ。

日本国民も嘗められたものだ。菅首相や自民党幹部連中は、日本国民はすぐ忘れる、と考えている。彼らの発言からはそんな思い上った自民党の傲慢な心根が透けて見える。

何の問題でもそうだが、国民の覚醒なしには、この悪政(もはや暴政と言って良い)は変えられない。

逆に、ほんの少しの国民が選挙に積極的に参加し、自民党・公明党・維新以外の政党に投票すれば、あっという間にこの体制を変える事ができる。

わたしたちはその可能性を信じて、行動しなければならない。