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0922 どこへ向かって走っているのか 見習い期間 2021/03/29 08:37:43
前回のコラムで、今夏に東京で開催することになっているオリンピック・パラリンピックの聖火リレー走者を辞退された有名人に言及した。その後も走者としてエントリーされていた芸能人や各界の著名人が辞退を表明する、もしくはすでに辞退の意向を運営側に伝えていたという事実が連日のように報じられた。
著名人枠というものの全体の数も明らかにされておらず、その著名人枠で当初走る予定だった人たちの何割が今日までに辞退しているのかは定かではない。しかし、名前を聞けば誰もが顔を思い出せるような著名人が先月末以降に相次いで聖火ランナーを辞退している。「一部の人たち」という言葉で片づけられるような人数ではないように見受けられる。

慧眼を持つ論者だけではなく、市井からも「どうしてオリンピックだけは例外なのか」という疑問が浮上していることに主催者側は気づいているのだろうか。どうして花見は自粛しなければいけないのに聖火リレーは自粛しないのか。何より、日々感染が拡大し蔓延するなかで生活することを強いられているため、もはや聖火リレーを話題にする人がどれだけいるのだろうか。

若者が大人数で会食などのハイリスク行為をしていることばかりが糾弾されるが、その若者たちはまさに「政治家だって会食している」「聖火リレーは普通にやっている」ことを自粛しない理由として挙げている。私たち市民の代表者たちは上から他人を評価するだけではなく、自身もまた評価されることを常に意識していなければならない。
市民に向かって感染拡大防止へ協力せよと言いながら、自分たちは感染拡大が懸念されるようなことばかりを次々に行っている。一般市民にたいして事前事後に検査を受ける機会を与えるならまだしも、これでは結局何がしたいのか、何を目指しているのかがわからない。市民の行動変容に頼るばかりで、全数頻回検査や都市封鎖などの組織としての感染症対策をほとんど行わない方策では、結局延々とむやみな自粛をし続けなくてはいけなくなる。そして、その方策はもはや通用しないことは誰の目にも明らかである。
幸いにして日本には他の国と地域と比較して感染症が蔓延しづらいアドバンテージが複数あるのだから、せめて検査をして運悪く陽性と判定された人にイベントや旅行への参加を見合わせてもらうように方針を変更したらどうだろうか。自分が今現在感染しているかどうかわからないままでは、旅行やイベントに参加したいのに自粛してしまう人が増加してしまい、経済的にも損失となってしまう。
これまでは「自覚症状がある人」は外出を控えるようにとしていたところを「検査で陽性であると診断された人」と置き換えれば、今よりも状況は確実に改善する。感染のリンクを断ち切れるのだから。

国としてこのまま積極的な対策を取らず見て見ぬふりをして突き進んだら、さすがに五輪への参加を見合わせる国と地域もさらに増えるだろう。どうしても開催することにこだわるのならば、今からでも遅くないから地球上のどこよりも強固な対策を取らないといけないはずだ。