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0915 世界から見放される日本 見習い期間 2021/02/08 09:42:24
日本では、一年前よりも確実に公衆衛生上の安全が脅かされているにもかかわらず、それでも世界規模のスポーツイベントを今夏に開催することをあきらめきれない人たちがいる。

来月から行われる予定の聖火リレーで聖火ランナーを務めることになっていた、ロンドンブーツの田村淳さんがランナーを辞退されたことは、せめてもの救いであろうか。「強引に五輪をやって、誰が幸せになるんだろうと感じた」という辞退の理由も至極まっとうなものだ。そして、田村淳さんが表明されたように、大会組織委員会の会長による「コロナがどんなかたちであっても開催する」主旨の発言は完全に理解不能である。

そして、同じく組織委員会の委員長を務める人物からは、オリパラを主催する側にも今夏に開催する意向はもはやないのだろうかと、思わず疑ってしまうようなおぞましい言辞が飛び出した。
世間にはびこるジェンダーバイアスを克服し、性的少数者なども含めあらゆる属性の人間が尊重される世界を作ろうという地球全体でのムーブメントと完全に逆行する内容の発言が、今このタイミングで飛び出してしまったことは、大会開催の可否にも少なからず影響を与えるはずだ。
ジェンダーによるステレオタイプの押し付けからの解放どころか、今もなお「男/女」という二分法が根強く残っており、性差をもとにした偏見や蔑視発言が笑って受け入れられるという、明らかにマイナスのイメージを世界中の人々に植え付けてしまったことだろう。日本はウィルスだけでなく性差別も蔓延している非常に危険な場所だと。

現在の日本において、組織委員会会長の発言を積極的に擁護する者や無条件に肯定する声が多数派を占めていない点で、市民レベルでは時代遅れな性差別的価値観は薄れてきているといえる。
しかし、セクシズムに抗議し抵抗する勢力も決して強くはない。東京都など関係する組織・団体へ講義の電話をする人もオリパラの大会ボランティアを辞退する人も少なからずいたものの、全体から見ればごく一部にとどまるのが現状だ。
会長本人は、自分では職を辞す意向があったが側近の者たちに引き留められたので引き続き会長職にとどまっていると公言しているが、差別主義的で個々の人間と向き合わない人物に引導を渡せない組織には未来を見いだせない。

引導を渡すといえば、今夏の大会開催についても複数の国外マスメディアにおいて中止を報じられているのに認めようとしない。挙句の果てには、複数の都市が代替開催の候補地に名乗り出るようになった。主催者側の判断はともかく、世界全体では日本で今年の夏にオリンピック・パラリンピックを開催することを不安視し懐疑的な声が存在することは事実である。
最終的な判断は国外メディアにすっぱ抜かれる前に、JOCや組織委員会、そして東京都の各責任者たちに引導を渡さなければならないはずが、すでに外側から引っ張られて仕方なく認めるシナリオになりつつあるのが悲しいところである。

いったい、どうして今日にいたるまで国内の現状を無視して国際的なスポーツイベントの開催にこだわっているのだろうか。感染症に対する無対策に対しても差別主義的な発言に対しても、国際社会はむしろ否定的な目を向けるだろう。
国内の危機管理がろくにできていない状況で国際大会を成し遂げたところで、日本の評価は上がるどころかむしろ下がる一方である。仮に今夏に開催するとしても、選手派遣を辞退するとすでに表明している国や地域もある。
政府としては検査に消極的で、頼みの綱であるはずの予防接種も接種開始すらしておらず、先進国内において単独で出遅れている状況では、日本に行くこと自体に恐怖を抱く人も少なくないはずだ。不都合な真実と危機管理の戦略が誤っていたことを認めないかぎり道は開けず、内外での信頼回復も望めない。