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0913 コロナ後の世界(新たなグローバル化)の予測! 流水 2021/01/24 16:03:06
🔶パンデミックとグローバル化の歴史的関係

人類の歴史の中でパンデミックとグローバル化は表裏の関係にある。

代表的なパンデミックと世界史上の大転換を素描すると以下のようになる。

(1)14世紀のペスト

モンゴル帝国によるユーラシア大陸の支配の拡大により、東西の交易の拡大、人物の移動が活発になった。それにより、中国の一地方にあったペストがヨーロッパに伝播。中世が終焉した。

当時、モンゴル帝国を源流とする元王朝が中国を支配。チャガタイ・ハン国が中央アジア、キプチャク・ハン国が北アジア、コーカサスや黒海北部、イル・ハン国が中東(イラン、イラク、アナトリア半島)を支配しており、パクス・モンゴリカ(モンゴルの平和)とも言うべき戦争がなく、東西交易が盛んだった。人・物の移動も活発だった。マルコ・ポーロやイブン・バトッウータなども、このモンゴルの平和により生まれた。

※イブン・バトッウータ ウィキペディア
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%96%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%90%E3%83%83%E3%83%88%E3%82%A5%E3%83%BC%E3%82%BF

※マルコ・ポーロ ウィキペディア
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%83%AB%E3%82%B3%E3%83%BB%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%83%AD

同時に、この平和(パクスモンゴリア)がペスト(黒死病)流行の最大要因になったのである。

(2)天然痘の大流行(16世紀)

天然痘は世界中で人間を苦しめてきた。古くは古代エジプトから流行したとされている。

最も大きな犠牲者を出したのが、南北アメリカの先住民だった。

16世紀、コルテスやピサロに率いられたスペイン
人たちは、1521年アステイカ王国、1572年インカ帝国を崩壊させた。

最大の要因は、スペイン人によって持ち込まれた【天然痘】の蔓延だった。天然痘処女地だった南北アメリカの先住民たちは、天然痘に対する免疫がなく、あっというまに感染。膨大な死者を出した。例えば、インカ帝国では、人口の60〜94%が死亡したと推計されている。

さらに天然痘は北米に持ち込まれ、多くの先住民を死亡させた。

コロンブスがアメリカ大陸を発見した時は、南北両大陸には約7200万の人口があったと推計されている。それが1620年には、約60万になっている。

この先住民の大激減が、アフリカ黒人たちを新大陸に運び、労働力として使ういわゆる【奴隷貿易】がはじまる大きな要因になった。

同時にアステイカ文明など、中南米で栄えた豊かな文明も終焉を迎えた。

(3)19世紀初頭のコレラの蔓延

コレラはインドの一地方の感染症だったが、大英帝国の植民地政策により、世界中に広まった。

特に、産業革命により、大都市に集中した都市労働者の劣悪な生活環境(貧民窟)が、流行に拍車をかけた。

コレラの流行は、多くの労働者の命を奪い、資本家にとっては貴重な労働力を失う結果を招いた。

これが、貧民窟のような劣悪な生活環境を克服する事が、コレラの蔓延を防ぎ、労働力の確保を保証する。それが、商品を生産する基盤になる。労働者の生活環境を整備する事が、結局は資本家の利益になる、という認識を齎した。
 
それが、現代では常識と言って良い【公衆衛生】という思想につながったのである。

(4)スペイン風邪

記録に残る最初の患者は、1918年に米陸軍ファンストン基地でアルバート・ギッチェル言う名の兵士だとされている。

ここから米軍兵士に伝染した。当時の米国は、第一次世界大戦に参戦中。その為、米軍基地を中心に米国国内およびヨーロッパに感染が拡大した。

スペイン風邪は、大きく3派に分かれて感染が拡大。全世界で5億人が感染したとされる。

死者は、推計5、000万人〜1億人とされている。

※スペイン風邪 ウィキペディア 
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%83%9A%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%81%8B%E3%81%9C

近代国家の戦争が国境を越えた世界的規模に拡大。それに伴い多くの兵士が国境を越えて移動。これが世界的パンデミックを齎したのである。

代表的なパンデミックを列挙してみたが、如何にパンデミックが世界のグローバル化と表裏一体の関係にあるのかが理解できる。

🔶コロナ禍の世界史的な意味

現在WHOが、コロナの発生源とされる中国武漢に研究者を派遣して、コロナ拡散の経路を明らかにしようとしている。

この目的は、米国がコロナ発生源としての中国、コロナ拡散に対する中国政府の責任を声高に叫び、WHOを脱退したことに大きな要因があることは間違いない。

純粋な学問的研究というより、覇権国家同士の政治的思惑がほの見える。

当然ながら、中国当局は、発生源は中国ではないとか、中国のコロナ対策の徹底などを主張し、中国元凶論に対して強く反発している。

ここに見えるように、コロナ禍は、人もモノも金も情報も高速で移動する現代社会だからこそ、これだけの拡大をした。

実は、コロナ禍の本質はそこにある。人、モノ、金、情報の移動の高速化こそ、資本主義の本質。移動の拡大、高速化に伴い、ウイルスの移動も高速化する。

パンデミックの事例を見てもらえば一目瞭然だが、時代が下がるにつれてパンデミックの規模も被害も拡大している。

1980年代からの新自由主義的グローバリゼーションの一つの帰結が現在のコロナパンデミックと考えなければ、コロナ後の世界の構築から取り残される事は確実だろう。

2001年の米国同時多発テロの近未来的な映像を記憶されている方も多いだろう。

わたしが見たのは報道ステーションだった。貿易センタービルに突っ込む飛行機の映像は、映画の世界そのものであり、現実の世界の出来事とは信じがたかった。

しかし、米国のグローバル化の餌食にされ、排除された人々の恨みが、テロリズムとして帰結したと考えれば、それはリアルな現実だった。

わたしたちが非現実的な出来事として感じざるを得なかった20年前のグローバル化のリアルな現実が、コロナパンデミックの悲惨な現実として今提示されていると考えなければ、時代を見誤る事になる。

同様な視点で2008年のリーマンショック、2016年の英国の欧州連合(EU)離脱、トランプ大統領の誕生を見れば、全て新自由主義的グローバリゼーションに対する反動だと理解できる。

コロナ禍はこのような新自由主義的世界の終焉を告げるもので、時代の転換点を告げるものである。

わたしたちは、コロナ禍を通じて、このような21世紀に対する俯瞰的な視点を獲得すべきであり、そこからのみ新たなコロナ後の世界を構築できる。

🔶トランプ的なるものを生み出した現代社会のリアリティの【虚構化】
 
【バーチャルリアリティ】(仮想現実)なる言葉が時代を席巻し始めてどれくらいになるのだろうか。
ありとあらゆる情報が飛び交い、誰もが自由に発信できる時代になった。

溢れかえる情報の中でどの情報が真実か、が誰にも分からなくなった。どの情報も相対化し、何を信じてよいのか、たしかな事が言えなくなった。

リアリティが完全に【虚構化】しているのである。

だからこそ誰もが信じられる【虚構のリアリティ】に縋りつきたくなる。Qアノンのようなトランプ支持者に多い「陰謀論」の信奉者は、この典型だろう。

そうなると当然そうでない人との間の亀裂【分断】が拡大する。さらに言えば、リアリティの【虚構化】の中で最もリアリティに満ちているのが【お金】。だからお金の信奉者がますます増える。その結果、社会の分断がますます加速する。

さらに悪いことに、【リアリティの虚構化】なるものを過度に考えすぎると、【科学】に対する信頼度が薄れる。

トランプ大統領がコロナ対策で科学者の意見を軽視したのもそれが原因。トランプ大統領が陥った【陥穽】は、日本の政治家が陥りやすい陥穽でもある。

それに加えて、米国の【一国覇権の後退】が混乱に拍車をかけた。以前から指摘しているように、覇権国家が覇権を降りなければならない移行期が最も危険。

コロナ後の数年間は、世界が最も危険な時期にさしかかると考えなければならない。

🔶三密から三粗の社会へ

【三密】が、昨年度の流行語大賞に選ばれている。
「密集」・「密閉」・「密接」を避けよう、というコロナ対策の要諦だそうだ。

実は【三密】という言葉。仏教(真言宗、天台宗の密教系宗教)の教えの中核にある。

真言宗の開祖空海は、「密教」と「顕教」の違いを以下のように考えている。

★『悟り』にいたる考え方。
顕教⇒何代にもわたって生まれ変わり、気の遠くなるような時間を要する。
密教⇒今ある肉身のまま悟りにいたる事ができる。
      ↓
身体・言葉・心を仏と一体化する修行=【三密加持】
『三密』=真言密教の修行 『加持』=修行の目指すもの

空海の説くところ⇒生命現象は全て身(身体)・口(言葉)・意(心)から成り立っている。これを修行により、仏と一体化すれば、悟りにいたる事ができる、というのが、真言密教の思想。

顕教⇒身・口・心の働きは煩悩に覆われて汚れている。⇒三業(ごう)と呼ぶ。

★戦後日本の三密とは
仏教もそうだが、敗戦国日本の戦後復興の要諦も『三密』だった。
◎精密 ◎細密 ◎緻密

日本の工業製品が世界を席巻できたのは、上記の『三密』を徹底的に追及してきたからである。

『三密』を徹底的に排除すれば、その反対の世界が招来されるだろう。

おそらく、(密集)(密閉)(密接)などと言う具体的内容などどこかにすっ飛び、『三密』が駄目だという思想のみが残るに違いない。

そうなると、五木寛之が語るように、「密」の反対の世界『粗』の世界が招来されるに違いない。

「粗末」「粗暴」「粗大」の「三粗」の世界がわたしたちの世界を席巻するだろう。

※五木寛之氏・年頭特別寄稿「夜明け前の夜は深い」
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/283359
2021/01/01 日刊ゲンダイ

現に、トランプ大統領しかり、現在の日本の政治家しかり。それだけではない。『三密』の権化のような日本の官僚たちの現在は、コロナ対策が代表するように、見事なばかりの『三粗』の制度設計しかできない。医療崩壊ならぬ政治崩壊・官僚崩壊である。

新自由主義的発想の肝は、一切の無駄を

排し、『効率性』を極限まで追求する姿勢である。その発想から零れ落ちるのが、人間を人間として尊重し、全てにおいて「精密・細密・緻密」を重視するありようである。

つまり、日本が日本として世界から一目も二目もおかれてきた戦後日本の復興の原点を捨て去ったのである。

これが、小泉政権登場以来の日本が推進してきたコンセプト。七年余りの安倍政権でその発想が日本国中を席巻し、今や日本と言う国の現在地は、先進国から後進国へと転落の一途だ。

例えば、コロナ第一波で明らかになったように、マスク一つ国内で生産できていない。医療器具(マスク・手袋・防護服など)も国内で自給できない。
PCR検査機器は、メイドインジャパンの機器が各国で使用されているのに、日本国内ではほとんど使用されていなかった。世界各国からの注文が先行し、日本からの注文がなかった。

このありようは現在も続いている。ファイザー社のワクチンは、―75度で保存しなければならない。その為の冷蔵庫を確保するため、世界各国から日本の冷蔵庫メーカーに大量の注文が来ているが、日本国からの注文はまだないそうだ。

さらにいえば、大量のドライアイスも必要になるが、それもかなり怪しい状態だそうだ。

例えば安倍政権下でどれだけ『安全保障』の必要性が叫ばれたか。北朝鮮のミサイルに対する防備だとして戦前を思わせる防空訓練まで行った。使えもしないイージスアショアにどれだけのお金を注ぎ込めば良いのか。

ところが、肝心のコロナ対策はハチャメチャ。何が『安全保障』か。

◎精密 ◎細密 ◎緻密を忘れた安全保障論議など糞の役にも立たない。安倍政権以降の自民党政治の集大成が現在の日本の惨状を招いた、といって過言ではない。

コロナ後の日本を考える時、最も考えなければならない問題である。