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0906 巨人の大惨敗に学ぶ 流水 2020/12/06 13:19:34
(1)日本シリーズの教訓

日本シリーズが終わった。
二年連続4戦連敗。見事な惨敗である。
それにひきかえソフトバンクは、4年連続日本一。シリーズ連勝記録を12に伸ばした。

巨人の敗因について、張本氏は、@DH制を認めたA球場(後楽園で都市対抗野球が行われていて、出来なかった)と分析。
それに対して、桑田真澄氏は、@フロントA選手の2点の弱点を指摘していた。

シカゴ・カブスのダルビッシュ投手は、ソフトバンクの選手と巨人の選手のフィットネスの決定的な落差が要因と分析。技術ではどうしても打ち破れない【力の差】があると指摘していた。

三人の分析は、それぞれ根拠があるが、張本氏の分析は、巨人に忖度したものと思われる。
(理由)DH制採用については、多少パリーグに有利に働くかもしれないが、もう何年もセパ交流戦で慣れているはず。理由にならない。

球場の問題はたしかにあるかもしれないが、敵の球場で力が発揮できないとすれば、そもそも日本一を名乗る資格などない。
そんな事を言い訳にするようでは、プロとは言えない。

桑田真澄氏の指摘は、巨人の弱点をピシツと指摘しており、流石だと思う。

@ フロントの問題として、桑田氏は、チーム強化のグランドデザインの不足を指摘していた。目先の勝利に拘泥するあまり、巨額のお金を投じて、有名選手をかき集め、若手選手の育成を怠っている。

それに引き換え、ソフトバンクは、3軍制をひき、多くの育成選手を計画的に育て、彼らがチームの中心選手になっている。(例 投手の千賀など)

A わたしは@に加えてソフトバンクの情報収集能力(相手チームの分析能力、スポーツ科学の最新の知見を応用した選手のフィットネスの向上。ソフトバンクの工藤監督は、スポーツ科学を学ぶため、筑波大大学院で研究している)を挙げたい。

現在のスポーツ界は、従前のような非科学的なスポ根指導では全く歯が立たない。スポーツ医学、スポーツ生理学などの最新の研究成果に基づいた科学的指導が世界の主流である。ソフトバンクと巨人の差の一番大きいのは、この点であろう。

わたしには、巨人の惨敗の主因は、「4番を集めれば勝てる」と言わんばかりに各チームから主力を引き抜いてチームを構成する昔ながらの発想にある。典型的新自由主義の発想。

対して、ソフトバンクは、三軍制を敷き、無名の育成選手を集め、一から育てている。多くの選手を入団させているので、一見お金の無駄遣いに見える。しかし、多くの選手の競争の中で生き延びた選手は力がある。
【裾野が広いほど 山は高い】という格言通りである。

(2)菅政権の発想

東京や大阪、北海道などを中心にコロナ感染に歯止めがかからない。菅首相は相変わらず「GO TO トラベル」が要因だというエビデンスはない、と主張しているが、誰がどう見ても、「人が動けば感染が広がる」というコロナ感染症の本質に反している。

「マスク、手洗い、換気、三密を避ける」などというお題目だけを唱えていれば、感染がおさまるなどという思考停止した発想では、何も解決しない。

わたしは「GO TO トラベル」が計画された時点から、こういう「二律背反的」政策を実行するためには、【弁証法的思考】が重要だと主張してきた。
つまり、相反する目的を持つ政策を実践するためには、どちらが最重要な政策であるか、という判断を間違ってはならない。
そこから、螺旋型に上昇する発想を取るべきであると主張した。

電気自動車やハイブリット車の開発には、地球環境を守る(排気ガスを減らす)という視点を最重要だと考える発想が重要。その視点から、エンジン性能や燃料それ自体の変更など多様な視点が生まれる。
これが新しい技術を創造できる原動力になる。
過去の自動車技術を守る事が重要だという視点からは、新たな技術は生まれない。

「GO TO トラベル」も同じ。
まず、人の命が最重要。そのためには、医療組織、医療従事者を何が何でも守る。
その為の財政的手当、医療資源の確保などありとあらゆる政策を総動員する。
同時に、その政策は、あらゆる利害関係を排除して、純粋な科学的知見のみに基づいて構築しなければならない。

何度も紹介したが、東大先端研の児玉教授の議論から紹介する。
(1) 感染動向の分布を調査しデータベース化する
(2) PCR検査などを通じて、コロナのエピセンター(発生源)がどのような分布で発生しているかの基礎データを取る
(3) それが出来たらエピセンターを中心に集中的に検査⇒隔離⇒療養を行う

児玉教授の主張は分かりやすい。現在の東京のように、コロナ感染が拡大すると、東京中どこへ行ってもコロナ感染するのではないか、という不安が拭いきれない。
この不安こそが、経済の最大の敵。

児玉教授は、国民が抱く不安の根源は、コロナという敵の正体を明確にしないところにあると考えている。

ここを明確にすれば、国民の不安を拭えると言っているのである。その為には、まず感染動向の分布を明確にし、エピセンター(感染源)の所在を明確にし、そこを集中的に検査⇒隔離⇒療養すれば、敵が明確になり、国民の安心感が得られる。
それを行うためには、現在の科学的知見を最大限に利用しなさいと主張している。

一言で言えば、【敵を知り、己を知れば、百戦危うからず】と言っている。

ところが、菅政権は、【GO TO トラベル】に執着している。だから、【GO TO トラベル】の政策変更も小出しにならざるを得ない。煮えたか沸いたか分からない中途半端な政策にならざるを得ない。

一時期、北九州市では、クラスターを中心とした感染爆発が起きた。ところが、現在の第三波ではかなり抑え込んでいる。その理由は、検査拡大だと言う。
ソフトバンクの子会社が利益度外視して、一回2000円程度で検査を提供している。
東京の世田谷区でも、同じように介護施設員などを中心として検査を行っている。

ここでもソフトバンクの科学的知見に基づいた対処方針が際立って見える。

それに対して、小池知事や菅首相の訳の分からない会談などを見ていれば、日本の指導層の劣化が良く見える。巨人軍の惨敗の構図と相似形である。