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0893 菅政権の誕生 笹井明子 2020/09/28 22:07:01
9月16日、持病悪化を理由に総理の座を退いた安倍晋三氏の後を継いで、菅義偉氏が第99代内閣総理大臣に就任、菅内閣がスタートしました。

菅氏は「安倍政権の継承」を軸に、安倍政権末期のコロナ対策のもたつきへの反省を踏まえたのか、行政改革やデジタル化推進を目玉政策として打ち出してきました。

新政権スタート以来、政権基盤整備のために日々精力的に動いている菅総理の様子を見ると、コロナ禍の混乱のさ中にやる気を喪失した安倍前首相のなげやりな姿との対比で、国民の目には今度はまともに動いてくれるのではないかという期待も高まり、その期待がとりあえずの高支持率となって表れているのも頷けます。

しかし一方で、基本軸である「安倍政権の継承」が、多くの国民の目には政策の継続性というより、安倍政権の「身びいき」、「隠蔽」、「改ざん」など、数々の不祥事に蓋をし、安倍首相の名誉失墜を回避し、同時に官房長官として自身が深く関与していた自民党の驕り体質への批判を封じることが、一義的な目的となっているように見えるというのも否めません。

今回、好感度アップのイメージ戦略に使われた「“パンケーキの好きな”令和おじさん」の写真も、引きで見れば一緒に食べているのは公選法違反を問われている河井案里被告であり、案里被告の選挙に菅氏が深く関わっていることが見て取れます。

また、官房長官時代の記者会見では、記者の質問を「全く問題ない」「それは当たらない」「あなたに答える必要はない」などと言って説明責任を果たさないスタイルを押し通し、一方で、安倍政権を批判した元文部科学官僚・前川喜平氏に対しては「出会い系バー通い」を臭わせたり、「地位に恋々としがみついてきた」と言うなど、公然と人格攻撃をしてみせました。

またここにきて、菅氏が提唱した「ふるさと納税」に異論を唱えて左遷された総務省官僚の告発も明るみに出ており、総裁選での「政権の方針に従わない官僚は異動は当然」の言及と相まって、自分の意に添わない者を排除する彼の強権的な体質が、節々に表れています。

こうしたこれまでの言動と、総裁選での「自助、共助、公助」のスローガンを合わせて見ると、就任会見で「国民の安全な生活を取り戻す」の言葉も、にわかに信じることはできません。

IT推進にしても、行政の効率化にしても、国民の安全な生活の迅速な確保というよりも、コロナ禍のドサクサに乗じてマイナンバーカードを無理やり普及させ、国民からの税収の漏れ防止、更には国民の統合支配を諮ろうと目論んでいるのではないか、と疑心暗鬼になってしまいます。

今、街行く人たちの表情は総じて暗く、自殺のニュースも相次いでいます。年末にかけての失業、倒産、廃業の急増も危惧されています。そんな状況の中で、マキャベリズムを好むと公言する菅氏の政治手法に、私たちの命と暮らしを託して、果たして大丈夫でしょうか。

折しも旧立憲民主党、旧国民民主党が合流し、新たな立憲民主党が誕生。枝野代表は、「新自由主義」と「談合」の自民党政治にとって代わるものとして、「参加」と「再配分」を軸に、大きな政治勢力のかたまりを作ることを宣言しました。

これに応えて、人の命を大切にする公正な政治を求める多くの若者が積極的な活動を開始し、また、小沢一郎氏や志位共産党委員長など、ベテラン政治家も、政権交代の後押しをすべく本気の姿勢を見せています。

日本に暮らす私たちの今と未来のために、自民党に代わる選択肢としての野党勢力の早急な確立と成熟を期待したいと思います。