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0889 桐一葉落ちて天下の秋を知る! 流水 2020/08/31 21:15:11
「桐一葉落ちて天下の秋を知る」
この言葉は、坪内逍遥が、戯曲【桐一葉】で豊臣家の没落を家臣片桐且元の目を通して描いて、人口に膾炙した。

本来は、「一葉落ちて天下の秋を知る」で、青桐(あおぎり)の葉は他の樹木よりも早く落葉して夏の終わりを告げるそうだ。だから、青桐の葉が一枚落ちれば、そろそろ秋の訪れも近いと想像できる、という意。

坪内逍遥は、これに、桐の一文字を付け加えた。桐の一文字には、豊臣家の家紋の「五三の桐」と青桐の二つの意が込められている。

安倍政権が倒れた。

七年半以上の悪政に苦しめられた日本国民にとってはこの上ない朗報である。ところが、メディアにも国民にも沸き立つような高揚感はない。

国民にとっては、自分たちの手(選挙)で安倍政権打倒を果たしたわけではない。メディア連中は、忖度する相手がいなくなり、一種の虚脱状態に陥っている。七年半にも及ぶ安倍政権の罪と罰を総括するわけでもなく、ひたすら安倍晋三の病状を忖度する体たらく。

まるで、「真空状態」ともいえるメディアや国民の思想状況こそが、安倍政権の七年半がもたらした日本国の劣化の象徴だと見なければ、新たな一歩を踏み出せない。

安倍晋三の退陣は、内政・外交全てで行き詰ったためであり、それ以上でもそれ以下でもない。

以下を見れば、一目瞭然。

【内政】
―歴代総理中一番のものー真実を探すブログ 山田久さんによる

〇GDP下落率
〇自殺者数
〇倒産件数
〇自己破産者数
〇生活保護申請者数
〇税収減
〇赤字国債増加数
〇国債格下げ
〇不良債権増加
〇医療費自己負担率
〇年金給付下げ率
〇年金保険料未納率
〇貧困率(世界のワースト4)
〇出生率戦後最低 ‥など。

こういう現実をしっかり見て、安倍政治を総括するのがメディアの仕事。それが全くなされていない。

もう少し、アベノミクスと呼ばれる経済のありようを見てみる。

アベノミクスの生命線は、株価。一体全体、世界の企業の中で日本企業はどうなっているのか。以下の記事の時価総額の表を見れば一目瞭然。30年前には、世界の企業の時価総額上位に日本企業が溢れていたが、今やトヨタのみという惨状である。

※平成最後の時価総額ランキング。日本と世界その差を生んだ30年とは?
2019.07.17
by STARTUP DB編集部
https://media.startup-db.com/research/marketcap-global

この日本企業の惨状をどう見るか。アベノミクスの評価をどう見るのか。メディアの仕事であろう。

●本来、安倍政権の経済政策の一丁目一番地は【デフレ脱却】。⇒未達成
●消費税増税 ⇒二度にわたり実施。(5%から8%、8%から10%)⇒13兆円の国民負担増
2012年の三党合意⇒「社会保障と税の一体改革」⇒完全に反故⇒社会保障4.3兆円の給付制限(社会保障の制度改悪)
●黒田日銀の「異次元の金融緩和」⇒じゃぶじゃぶのお金で市場を満たし、年金資金を株式市場に投じ、株高演出。⇒400兆円の内部留保。⇒大企業と中小企業の格差拡大。
●働き方改革⇒非正社員増加。 
●残業代0法案⇒雇用破壊  ⇒貧富の差拡大

🔷最大の問題点
法人税率⇒3回下がる 消費税率⇒2度上がる・・・・・・・⇒大企業と富裕層が儲かり、庶民生活は破壊され、生活は苦しくなる一方。  

🔷安倍政権の戦争法案と人権侵害法案=違憲立法の疑い
(1)2014年⇒「集団的自衛権」行使容認 閣議決定
(2)2015年⇒安保関連法案
(3)2013年⇒特定秘密保護法⇒国民の知る権利を侵害
(4)2017年⇒改正組織犯罪保護法⇒「共謀罪」を盛り込む(内心の自由を侵害)

🔷官僚統制
2014年⇒内閣人事局を設置して省庁の幹部人事を掌握⇒官邸に権限が集中⇒官邸官僚の跋扈⇒他省庁官僚の官邸に対する【忖度】が跋扈⇒森友学園問題、加計学園問題、イラク・南スーダン派遣部隊の日報問題、桜問題などの不祥事の大きな要因になる。⇒今や、公文書改竄、隠蔽、削除が日常になり、日本中枢組織の歴史に対する不誠実な態度が日常的になっている。

【外交】
🔷スローガン⇒地球儀俯瞰外交、戦後日本外交の総決算
🔷内実
★ロシア外交⇒プーチン大統領と20回を超える会談を重ねながら、北方4島の領土交渉は全く進展せず、ロシア側から北方4島を【支配領土】と認めろとねじ込まれている。⇒完全な失敗

★北朝鮮問題⇒政権の最重要課題と叫び、政権浮揚のために拉致問題を利用したが、一歩も進展しなかった。⇒完全な失敗

★中国関係⇒習近平の日本訪問は実現せず、米国の対中強硬姿勢や香港問題などを契機にした対中国問題は、きわめて難しい状況になりつつある。

★対米外交⇒トランプとの個人関係が良好だから、何か良いことがあったかと言うと、ほとんどなし。
ポンコツ武器を言い値で買わされただけ。⇒軍事費5.3兆円の理由。

【コロナ対策】

今回のコロナ禍。世界のリーダーたちの力量を白日の下にさらした。

もっとも評価を高めたのが、ドイツのメルケル首相。それと、ニュージーランドのアーダーン首相。
彼女たちの共通点は、@女性A真摯に国民に自分の言葉で話しかける態度(特にメルケル首相の演説の評価が高い)B情報公開の徹底が素晴らしい(都合の悪い情報も積極的に公開)C国民の信頼に基づいてコロナ対策ができている。

それに対して評価の低いリーダーは三人。米国のトランプ大統領。ブラジルのボルセロナ大統領。いずれも強権的手法で知られた大統領。それと日本の安倍晋三首相。

特に安倍首相。緊急事態宣言の全面解除後の会見で「日本モデルの力を示した」と胸を張った。しかし、結果が示すように、実際は賢明で我慢強く規律を守る国民性が何とか感染爆発を制御したのであって、政府のコロナ対策のお粗末さは、この国が先進国から脱落している現状を露呈しているものだった。

これまで何度も指摘してきたが、コロナ対策で、安倍は失敗を重ね続けた。にもかかわらず一切の責任を放棄した結果、感染拡大に歯止めがかからない。

クルーズ船のデタラメ対応、科学的根拠に基づかない休校要請、役に立たないアベノマスク配布、電通による持続化給付金ピンハネ、感染拡大中の「Go To」強行。

野党が憲法53条に基づく臨時国会召集を要求しても、逃げ回り、引きこもっている。外国メディアからは、『職場放棄』とか『敵前逃亡』と蔑すまれた。

6月2日以降、国会には一切出ず、記者会見も数回。野党の臨時国会開催要求にも応じない。国家の最高責任者が3ケ月近く引きこもっている。その間、コロナ禍は第二波を迎え、沖縄などは医療崩壊寸前の状況まで追い詰められている。

東京はじめ各自治体の危機感は深く、東京都医師会の会長などは、悲鳴に近い言葉を吐いている。それでも国の動きは鈍く、ついには国に頼っても仕方がない、とまで言われている。

安倍首相や国家に対する『信頼感』や『求心力』は、零に近い。誰がどう贔屓目に見ても、『政権末期』だった。

【安倍首相の退陣戦略】

ここまで安倍政権の現状を見てきたように、今回の安倍退陣は完全な「行き詰まり」退陣。悪く言えば、「野垂れ死」退陣と言われても仕方がない。

しかし、そこは戦後ほとんど権力の座を死守してきた自民党である。安倍首相の退陣劇を「美談」に仕立て上げ、次期首相の求心力向上に役立たせようと画策している。当然ながら、「御用メディア」の提灯報道が激しくなっている。(背後に電通がいる)

冷酷な言い方をすると、これまで利用価値があった安倍晋三が辞める。次に利用価値のある政治家は誰か。そいつを徹底的に持ち上げ、馬鹿な国民を騙さなければ、うまい汁が吸えなくなる。このあたりが本音だろう。

先日、小沢一郎が野党幹部に安倍政権を甘く見てはならない、という警告を発していた。「安倍政権=自民党政権」の権力維持の執念を甘く見てはならない、という警告だ。

安倍首相の側近や取り巻きどもが知恵を絞ったのが、今回の『安倍首相の体調異変』騒ぎだと読まなければならない。

(1)体調異変を隠して慶応病院行きを隠した場合。(通常の対応)⇒首相を辞めろ、という声に抗しきれない。
(理由) コロナ禍は戦後最大の危機。この冬をどう乗り切るか、が正念場。この危機に対応できる気力も能力もない、と烙印を押される可能性が大。⇒これまでうまい汁を吸ってきた側近や取り巻きは権力を失う。⇒それだけは避けなければならない。

(2)だから、安倍首相の体調不良を逆手にとる戦略が編み出された。

まず、側近中の側近、甘利議員が首相が疲れているとメディアに漏らす。⇒何故休まさない、と首相官邸の官僚に噛みつく⇒安倍首相は責任感が強く、休まない、と官僚が嘆く⇒麻生財務大臣が首相は働きすぎ、と宣伝する。(140日以上休んでいないとその精励ぶりをアピール)⇒橋下徹などの安倍応援団がメディアで安倍首相を批判するのは、人道にもとる行為だなどと騒ぐ⇒こうして、安倍首相の臨時国会開催のネグレクトなどという行為をほっかむりする⇒安倍首相に対する批判のトーンをやわらげる。

(3)(1)の心配が払拭された時点で、慶応病院に検査するという名目で二日続きで出かける。⇒多くの国民、議員、メディアなどが騒然とする。(計算済み)⇒結果が出るまで会見をしない(名目)・・じらせばじらすほど、耳目を集める(安倍首相の存在感アップ=求心力アップ⇒じらすだけじらせて、首相会見を行う(8/28 金曜日)・・・・・⇒首相退陣を発表。コロナ対策を発表。

日本国内騒然となる。⇒政権投げ出し批判を回避。安倍首相の次期政権への影響力保持。

🔷首相の次期政権への影響力保持⇒安倍首相の影響力の及ばない次期政権が成立すると、モリカケ問題、桜問題など一連の問題に対する検察の捜査も視野に入れなければならない。

だから、退陣後の影響力の保持は、安倍首相の絶対条件。

これらが勘案されて、一連のバカ騒ぎが演出された。同時に、次期首相候補としてさりげなく菅官房長官が各TV局に出演。あの時点でメディアは一斉に菅官房長官を第一候補として認定した、といって過言ではない。

それ以降は、田崎寿司郎やフジテレビの平井など菅の提灯持ち言論人がTVを席巻している。

さらにここへ来てコロナ報道が一気に減少している。これもまた、「GO TO キャンペーン」を主導する菅官房長官に対する提灯持ちだろう。

ここまでくると、日本のテレビメディアは、もはや政権の宣伝機関以外の何者でもない。

今日(8/31)、田原総一朗がTV東京の昼のニュース番組に出ていたが、安倍ヨイショを連発。老残としかいいようがない無残な解説をしていた。日本メディアも落ちるところまで落ちたのだろう。

🔷桐一葉 落ちて天下の 秋を知る   

権力者だけでなく、メディアの無残な落日も詠んでいる、としか聞こえない。