呼出完了
0886 戦争体験者の意志を語り継ぐ 笹井明子 2020/08/11 11:40:45
昭和20年8月、日本が広島と長崎に原爆を投下され、ほどなくしてポツダム宣言を受諾し迎えた終戦から、間もなく75年になります。

今年8月に第十八期に入った「老人党・護憲+」は、「老人党」の名前が表すように、発足当初集まったメンバーの多くは、戦場で闘うという体験はないものの、戦前・戦中を知る世代であり、実体験に基づいた「戦争の悲惨」を繰り返してはならないという信念の下、今の政治や社会に警鐘、提言を語り続けた人たちでした。

終戦前年に語学専門学校に入学したものの、入学以来勉学ではなく体育館で飛行機のエンジンのピストンを作る日々だったMさんは、誰もが否応なく一端を担わされる「戦争の非道」を語り続けました。

昭和20年の東京大空襲で、母親と共に近所の公園に逃げ、見渡す限り広がる火の海を目にしたNさんは、近年の世論の傾向に「日の丸、君が代が大好きな人間は、失敗だったあの戦争を、忘れたいのだろう」と指摘していました。

戦時中毎日眠れないほどの飢餓が続き、自分だけ粥をお代わりする父親を恨んだというSさんは、日本は無茶なアメリカのグローバリズムと一緒になって、金儲けに夢中になるのではなく、先ず食料自給率を100%近くにすることに努めた方がいい、と提言していました。

Gさんは、父親の仕事の関係で幼少期から北朝鮮元山で暮らし、自身は終戦の年の12月に新聞記者をしていた従兄に連れられて日本に帰ったものの、両親と弟妹は、終戦直前に満州に逃れ、ソ連兵や戦車に追われる中、両親は餓死し、弟妹は命からがら引き上げ戦に乗船、帰国したと言う、まさに戦争に翻弄された半生でしたが、後世の子供たちに自分と同じ思いはさせたくない、暴力では憎しみしか残らない、戦争は最大の悪だ、ということを繰り返し訴え続けていました。

そしてBさんは、自身の戦争体験を直接語ることはなかったものの、郷土秋田の詩人・吉田朗さんが「憲法9条への思いを込めて詠った詩「やせんまこ ちっとばし」を私たちに紹介してくれて、その詩は今も私たちのシンボル的な存在になっています。
https://blog.goo.ne.jp/rojinto_goken/e/ac8e9a70eeb57bb774af4560ccec04ab

「護憲+」発足から16年以上たった今では、残念ながら、こうした先輩たちの体験に裏打ちされた強い思いを聞く機会がほとんどなくなってしまいました。

しかし、広島、長崎を経て、間もなく終戦記念日を迎えようとしている中、戦争体験者が「護憲+」で伝えてきた強いメッセージを受け継ぎ、更に自分たち自身の言葉を新たに紡ぎ、今と未来に生きる人たちのために、平和で調和のとれた社会を作り出す一助となるよう、及ばずながら私たちも頑張っていきたいと、改めて願う8月です。