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0869 人心を弄ぶな!(緊急事態宣言の延長を受けて) 笹井明子 2020/05/06 02:25:05
5月4日の夕方、安倍首相は記者会見を開き、ゴールデンウィーク終了までとしていた緊急事態宣言を5月31日まで延長することを表明した。

2月24日に出された小中校休校&イベント自粛要請から、これまでの約2か月半、私たちは新型コロナ感染に関し、錯綜する情報と根拠のあいまいな自粛要請に翻弄され、疲労困憊な状態に陥ってきた。

昨日の会見で、安倍首相は自粛延長を詫び、国民の「努力」に感謝を述べたものの、首相も専門家会議も、減少傾向は不十分とし、感染拡大を防ぐための「個々人の更なる心掛け」を強調した。

会見の行間に滲む、この間の不首尾の責任を国民の行動に転嫁する姿勢に、今さらながら失望させられたが、この際、政府や有識者会議がこれまでどんな言葉を語り、それに対し私たち国民はどのような行動を採ったか、いくつかの例をとって検証してみたい。

まずは、4月に入って感染が一気に拡大した時の、政府や有識者会議による「3月20日〜22日の三連休に気が緩んだ」の言葉。

2月24日から度々繰り返された「ここ1、2週間が山場」の言葉を受けて、私たちは様々な予定や行事を、自主的に3月後半から4月に延期してきた。

そして、3月上旬に専門家会議が出した「方向性を見定めるのにあと数日必要、19日まで自粛継続を」の言葉に促されるように、3月20日からの連休に外出が増えたことを、忘れるわけにはいかない。

更に、緊急事態宣言で「収束の必要条件」として強調された「人との接触を80%減らす」の目標。

これまで厚労省は、「密閉・密集・密接」の“3密”を避けて外出を、という注意喚起を公表。図入りで「3つの“密”がそろう場所」はリスクが高いと説明してきた。https://www.fnn.jp/articles/-/25106

この説明を受けて多くの人は、開放された空間なら安全と理解し、非常事態宣言が出された今も、首都圏では、公園や河原などの比較的広い空間に、多くの人が押し掛けることとなり、「感染収束の阻害要因」と問題視されている。

正直、私には「80%接触回避」という敷居の高い目標が独り歩きしているように見え、どの程度の科学的根拠があるのか。目標未達の言い訳に使われているのではないか、という疑念が拭えない。

さらに深刻なのは、「37.5度の発熱後4日間は自宅で待機」という4日間待機ルール。

自宅で様子見中に重篤化したり亡くなるケースが続発するに及んで、加藤厚労相や専門家会議は、「37.5度発熱4日間を勘違いされていた」と患者の自己責任のように語っているが、多くの保健所等の運用でごく最近までずっとこのルールが適用されてきたという。

ことほど左様に、政府や専門家会議は、客観的裏付けのある情報とそれに基づいた明確な指針を出す替わりに、国民の不安や恐怖心を煽り、生真面目な国民の「倫理観」や「罪悪感」に悪乗りする形での「自粛要請」を続けている。こうして、安倍首相の言葉とは裏腹に、悪い結果の責任を国民の行動に求め、政府や専門家会議の責任は回避するというのが、これまで一貫した彼らの姿勢に見える。

コロナとの長い戦いはまだ続くが、政府には、「支え合い、思いやりの気持ち、人と人との絆」などという人心を弄ぶポエムを語るのではなく、十分な生活支援、休業補償、検査態勢・医療体制の拡充など、政治がやるべき仕事を、速やかに責任を持って実行することを強く求めたい。

そして、私たち自身、美しいものに触れる、仲間とSNSで語り合う、現状の客観的で正確な情報の把握に努める、など「不安」や「恐怖」から解放される工夫をし、過剰な「自責の念」やその派生物である「他罰的感情」からは自由であり続けたい。なぜならそれは、「権力保持・拡大」を自己目的化した勢力にとって最も好都合なものであるからだ。