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0846 「便利」「お得」で失うものは 笹井明子 2019/12/25 13:46:33
日本でも8割以上の人が使っているといわれるスマートフォンを、私は未だに持っておらず、友人、知人からは「変わり者」「昭和人間」などと言われています。

なぜ私がスマホを持たないのか。老眼で小さな画面を見るのが辛い、ということもありますが、「オンとオフの時間を自分でコントロールしたい」という内なる感覚が、その主な理由です。

「外国人とも自動翻訳で会話ができる」、「初めての場所に迷わず行ける」、「分からないことをすぐその場で調べられる」など、周囲の人達が語る数々のメリットには同意なのですが、「外の情報や外とのコミュニケーションに常時晒されること」への違和感が拭えません。

そんな中、政府は10月からの消費税増税に際し、スマホなどを使ったキャッシュレス決済にポイント5%還元という、消費税アップによる税収増とスマホ利用の推進の「一石二鳥」を狙ったような施策を導入しました。

PayPay運営会社のサイトを見ると、「PayPayを通して 購入意欲を喚起」「スマートな決済で スタイリッシュな空間を演出」「現金でのお会計より 圧倒的にスムーズ」と、売り手に向けた魅力的な文句が並び、実際、10月以降、飲食店や小売業での導入も進んでいるようです。最近は街中で当たり前のようにスマホ決済をする姿をよく見かけるようになりました。

「便利」で「お得」なこのシステム、使わない手はないような気もしますが、政府の「抱き合わせ」施策に何やらうさん臭さを見るのは、考えすぎでしょうか。

最近、JBpressというサイトで「シャレにならない監視社会に突入した中国の悪夢」という興味深い記事を目にしました。(12月10日付)

記事を要約すると、・・・
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今どきの中国人は「ウィーチャット(WeChat)がないと生きてはいけない。
ウィーチャットは、ラインのようなチャット機能とフェイスブックのような情報発信機能を備えている。

ウィーチャットユーザーは自分のアカウントと銀行口座を紐づけることで、キャッシュレス決済も行える。テンセントが提供する「ウィーチャットペイ」機能は、アリババの「アリペイ」とともに中国キャッシュレス決済の二大双璧を成している。

現在、多くの企業や地方自治体が、ウィーチャットのアプリ上でサービスを提供し、例えば、上海市はパスポート申請の際の予約や整理番号の配布に、ウィーチャットのアプリを利用。もはや中国は、ウィーチャットがないと、公的機関が交付する文書ですら手に入れられないという状況だ。

一方、中国政府はネット上の情報発信を厳しく監視しており、アメリカに本部を置くNGO団体「フリーダム・ハウス」によれば、「習近平」「共産党」「天安門事件」「人権」などが“特定キーワード”として監視されているという。

例えば、友人とのチャットで、うっかり“特定のキーワード”を使ってしまうと、即刻ウィーチャットのアカウントが使えなくなってしまい、結果、ウィーチャットペイにプールしているお金も動かせなくなってしまう。

中国では、友人と連絡をとるにも、支払いをするにも、デリバリーを頼むにも、何をするにもウィーチャットを使えば素早くできる。しかし、ウィーチャットがなければすべてが立ち行かなくなる。中国で生活するには、この状況を受け入れるしかない。
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https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/58497

記事は『中国の人々は「便利だ、便利だ」と言いながら、監視社会という大きな鳥かごの中に知らず知らずのうちに取り込まれている』という言葉で結ばれています。

翻って、日本の状況を見てみると、個人番号カード普及の行き詰まりや、IT担当大臣の資質など、安倍政権がどの程度しっかり道筋だった戦略を持っているのか定かではありませんが、政府が国民を監視・一元管理したいという意欲には並々ならぬものがあり、中国と同様な仕組みの導入・普及のチャンスを常に狙っているように思えます。

この際私たちは、スマホ利用についても、「便利」「お得」と引き換えに、「自由」を手放す道を歩んでいるのではないか、一度立ち止まって考えてみてはどうでしょうか。

(さて、私自身は、スマホを持たない「不便」と「損」、「使え、使え」という社会のプレッシャーに、果たして来年も耐え続けられるでしょうか?う〜む。)