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0838 拡大する日本の貧困問題 2019/10/29 22:44:05
私の住むマンションの管理人が変わった。この前も今回も、働くのが少々つらそうな感じのする70代以上と思われるお爺さんが、ゴミの始末やお掃除をしている。

「老齢年金では生活できない、2000万円が必要」という試算に対して、高額の年金を受けられる人や貯蓄等でカバーできる人もいるだろうが、公的年金だけでは暮らせない人も多い。

派遣会社パソナの会長も務める竹中平蔵氏は、年金だけでは無理だから一生働けと言いつつ、平然と「これからは専門性のない人は生き残れない」と脅しを掛ける。https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/263731

そして安倍首相は、「高齢者も働きたがっている」と言い放つ。
「働きたい人」の中には、できれば働かないで済めばと思いつつ、金銭的に無理で「働かざるを得ない人」が多いのではないか。

相対的貧困ラインは、等価可処分所得の中央値の50%以下をいう。
2000 年の中央値は274万円、 2015 年は245 万円で約30万円も低下。貧困ラインも137 万円から 122 万円に低下している。

つまり手取り月10万円以下で暮らすという貧困率は、2015年には ラインの金額が下がっているのに15.6%に増加。
65歳以上の1人暮らしの貧困率は、男性単身者が36.4%で、女性は56.2%で半数以上になる。そして貧困は高齢者ばかりの問題ではない。

稼働年齢が 2 人以上の世帯で就労者が1人の場合の貧困率は、13.2%で先進国同様。
ところが2人が就労する家庭は11.4%で2人目の労働効果は低い。それは日本では女性の給与が低く抑えられていること、税制上パートを選ぶ女性が多いことと関係する。

そして1人しか稼働年齢がおらず就労者が1人の世帯は56.0%で、最も貧困率が高くなっている。
ということは、1人親家庭や単身者の貧困率も半数を超えている。
つまり、子どものいる世帯や若者の貧困率が高くなっているということに他ならない。

かつて日本は終身雇用・年功賃金という雇用形態で社会は安定していた。
これが小泉政権下(2001〜6年)の派遣法制定で、わずか3年で非正規雇用の割合は27.5%から41.5%へと急増する。世界的な競争というが、多くの日本人の雇用を不安定にし、労働者の使い捨てを可能にした。

今も政府はアベノミクスで雇用が増大したというが、その中身は非正規雇用で給与が低く、賞与や福利厚生がない職場も多い。
働いても豊かにならず食べるのがやっと、貯蓄も出来ないワーキングプアが増えている。
老後の預金どころか、若い男性の約3割が結婚や子供を育てる余裕もなく家庭を持てない。少子化が進むのも当然だろう。

これは、政策的に作り出されている貧困と言えると思う。
働く人々を企業の都合で雇いたい時だけ雇えて、会社負担の年金などの厚生から外すことを前提とした派遣法。
これで日本は非正規労働者が激増し、格差を拡大させたのだ。

富裕層は教育の機会やスタートラインに恵まれるため、ますます豊かになる機会に恵まれる。
中間層は老後、貧困層になる可能性が高い。
非正規労働者の多い貧困層は、今や働いても貧困から抜け出せない仕組みになっている。

こうなると、階級社会ではないか。安倍首相はトリクルダウン「富裕層が豊かになれば富が滴り落ち、全体が豊かになる」というが、まさに絵空事であることがハッキリしている。

相対的貧困は、絶対的貧困に比べ目に見えにくい。「努力しないからだ」「働けば報われる」等の、今やそぐわない自己責任論で切り捨てていては、格差は広がっていくことだろう。格差は安全な社会を崩してしまう。

政府がどこを向いているのかを、私たちは見ていく必要がある。
国民が安心して暮らせるために、最低賃金を上げ、不安なく働ける環境を作り、老後の不安を減らす、税金の使い方ができるかどうか。
私たち自身や子供や孫の生きる社会のために、どういった政治が望ましいのかを考えていきたい。