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0836 条件付きで守られる人権 見習い期間 2019/10/13 22:25:31
まさにこのコラムを執筆し始めたときに、台風19号が日本列島へ近づいてきた。大型で強い台風は上陸したのち首都圏を直撃するコースを通ったため、関東甲信越、さらには東北地方という広い範囲に生々しい爪痕を残していった。現在もなお河川の氾濫が続き、堤防の決壊や土地の低い箇所の浸水被害は拡大している。

上陸する以前から、すでに各地で記録的な降水量が観測され、川や湖の水位も上昇していた。いつ災害が発生してもおかしくない状態だろう。しかし、首相は現在進行形で接近し日本列島に影響を及ぼしている台風に言及することもなく、日本で生活する人たちを気遣うような発言も一切見られなかった。
こうした未曽有の事態に際し、むやみに国のトップの顔がテレビやWeb上に出回ると、見通しがきかずなかなか収拾がつかない自然災害と結び付けられ、結果として自らの外向けのイメージが悪くなってしまうことを恐れたのだろうか。
あるいは、通常時と変わらず、都合が悪い時には自助と共助(公助はなし)で各々の自己責任で対処してもらうというスタンスを貫いているのか。
いずれにせよ、この国で生活している人間を一番に考えているようには見えない。自分たちにとって都合のいい人間は持ち上げるが、危機的な状況にある人間など、自分たちの手間を煩わせるような存在はいないも同然とされてしまう。
政府が非常災害対策本部を設置したのも翌日になってからだ。先月、台風15号が千葉県に甚大な被害をもたらした際には設置しなかったことを考えれば、行動してくれただけ良いのかもしれない。しかし、率先して国民の安全を守り、被害を最小限に抑えるべく率先して動く姿勢が見えてこないのも事実である。

自然災害への国としての対応に憤りを感じていたが、自治体が開設した自主避難所でも、現代日本における人権を与える者を選別する発想が見えてしまった。台風が接近する中で雨風をしのぐために台東区の避難所を訪れたが、路上生活をしていて住所不定であることを理由に利用を断られた人が複数いたという問題は、大きな波紋を呼んでいる。
路上生活者が避難所利用を断られたその日のうちに電話などで自治体の災害対策本部に問い合わせをしてくれた人たちもいた。どんな人間も等しく人権を有し、守られるべきであるという思想を持つ市民も少なからずいることもわかり、安堵の気持ちも湧いてきた。
しかし、良識のある人々からの問いかけに対しても、ホームレスは受け入れないという規定を頑なに固持し、今後検討すると回答するのは、やはり人間として等しく与えられるべきものを条件付きで与えることが当たり前という今の日本社会の実態を浮き彫りにしているように感じてしまった。
都内の自主避難所では、同様に利用者を避難所が立地する区内在住・在勤者に限定しているところがあった。天災が起き、ただでさえ危険な状況下で、さらにこのような人災を発生させている場合ではない。