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0811 GDP年率2.1%増の怪 笹井明子 2019/05/22 16:05:53
5月20日に内閣府は1〜3月期のGDP速報値を発表し、対前期比0.5%増(年率換算2.1%増)と伝えた。同日、菅官房長官は、「2四半期連続のプラス成長になった」と胸を張り、消費税率10%への引き上げ方針に与える影響は「全くない」と言い切ったという。(5/21東京新聞)。

一方、翌日の各紙報道は、「予想外の成長も内需陰り」(日経)「陰る内需 視界不良」(朝日)「内需の弱さに警戒も必要」(読売)「輸出減が押し上げ 内需弱さ反映」(毎日)「「内需の柱 マイナス」(東京)と、輸入の落ち込みが押し上げた見かけ上のプラスであり、GDPの7割を占める『個人消費』と『民間企業の設備投資』はマイナスとなっていることを伝え、「表向き堅調な成長を示す数値とは裏腹に景気の不安要素を色濃く映し出す内容」(5/21毎日)と報じている。

今回の調査対象期間の今年2月に、私は記事「景気回復を実感しているか」を投稿し、日々の光景の中で実感した、人々のこれまでとは違った暮らしへの不安感、危機感の高まりと、割引、値引きの利用や買い控えの兆しについて報告した。
https://blog.goo.ne.jp/rojinto_goken/e/c26c9f0a6ffa7a00ed9bf4b8d4658296

あれから3か月たった今では、人々の生活防衛的な買い物の傾向はより顕著であからさまになっており、スーパーの200円割引シール発行の日は、シール配布の4時前後から200円割引を目当てとする買い物客が溢れ、月に2度ほど行われる5%割引の日も、店内は買い物客でごった返す状態になっている。

GDP速報値発表について毎日新聞は、「食料品は値上がりするし、10月には消費税も増税される。出費を抑えなくては」「収入は全然増えていない。消費税も気になるし、スーパーを3、4軒はしごして、少しでも安いものを探している」という主婦の声を紹介。さすがのNHKもGDP発表当日のNEWS7では、「スーパーの特売日の客は2倍になる」「外食チェーンは客の倹約意識から消費増税後も値上げせずに価格を据え置かざるを得ない」など、内需落ち込みを示す街の声を取り上げていた。

こうした国民の生活実感に政府はどう向き合おうとしているのか。菅官房長官、茂木経済再生担当相、萩生田幹事長代行ら関係閣僚から聞こえてくるのは、「消費税増税延期と衆参同日選」が「自民党が勝つのに有利か否か」という損得勘定ばかりで、国民生活の現実、日々の暮らしの大変さや先行きへの影響、などには全く目が向いていないように思える。

政府がこのまま数字のマジックで国民をだまし、利己的な動機でその場しのぎの政策を採り続けたら、日本経済は低空飛行から早晩破綻への道を辿るだろう。

そうなってから後悔しても後の祭りだ。今こそ私たちは、「景気は悪くなっている」「消費税引き上げに大いに不安を感じる」という私たち自身の生活実感を拠り所に、国民目線に立ち、国民の生活を第一に政策を判断・提示するのはどの政党かを、しっかり見極める必要がある。

(※ちなみに、野党第一党である「立憲民主党」の「基本政策」も、国民経済や税制にかかわる項目を見ると、『中長期の財政健全化目標を定め、その目標に基づく歳出・歳入両面から改革を行い、持続可能な財政構造を確立します。』『所得税・消費税・資産課税など税制全体を抜本的に見直し、税による再分配機能を強化します。』と、実に悠長で、「現場の切実な声」(枝野代表メッセージ中の言葉)に基づき、国民の切羽詰まった現状を直ちに力強く打開しよう、という気迫が感じられない。もう少ししっかりして欲しい!)

ところで余談だが、安倍首相が一時期アベノミクスの好調をアピールする時に好んで披露していた、ある町工場の工員さんが「あべさん、給料が上がったから発泡酒がビールに変わったよ。」「最近はしご酒までできるようになった」といっていたという、その工員さんは、今はどこで何を飲んでいるだろうか。