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0795 沖縄県民投票と元山仁士郎さん 笹井明子 2019/01/21 23:40:09
沖縄宜野湾市出身の若者、元山仁士郎さんが、宜野湾市役所前でハンガーストライキに入ったのは1月15日のことだった。

彼は一橋大学院を一年休学し、「辺野古」県民投票の会代表として、仲間と共に沖縄41市町村の県民と対話を重ねながら署名を集める活動を続け、2018年10月に10万筆近い署名を県議会に提出。「辺野古米軍基地建設のための埋め立ての賛否を問う」住民投票条例が制定された。
https://www.pref.okinawa.lg.jp/kenkouhou/H30/10gatsu/181031gogai43.pdf

しかし、その後いくつかの市が県民投票「不参加」を表明し、全県での実施に黄信号が灯ると、元山さんや会のメンバーがそれら首長との面談を実施して再考を求める努力を重ねたものの不調に終わり、遂に元山さんはハンガーストライキによって「条例で制定され一人ひとりに与えられた投票権を恣意的に奪うことのないように」と市長らに再考を促す決断をしたという。

彼のこの行動は、政府の強引な辺野古埋め立ての既成事実化にあきらめムードに陥りがちだった私たちの心を揺さぶり、当事者である沖縄県民は勿論、沖縄だけに負担を押し付けることに負い目を感じる人々、辺野古の海の環境破壊に心を痛める人々、民主主義の圧殺に危機感を抱く人々など、日本国内外の多岐に亘る人々が目を覚まし、再度この問題に寄り添い、日々真剣なメッセージを発信し続けることとなった。市民の間には「いま自分にできること」として「沖縄県民投票にすべての県民が等しく参加できること」を求める署名活動への参加も広がった。

https://www.change.org/p/沖縄県民投票-にすべての沖縄県民が等しく参加できるように-沖縄県内の全市町村で実施されることを求めます

元山さんはハンストの間も、応援に訪れる市民、取材に訪れる報道陣、街宣車で威圧しに来る右翼にも、県民投票の意義について語り掛け、対話を続けてきたが、1月19日の夕方、開始から105時間でドクターストップがかかり、ハンガーストライキは終了した。

しかし、彼の行動は大きな波紋を広げ、現在沖縄県議会では、「県民投票は県内全土で実施」、「元案どおり『賛成』『反対』の二択で行う」、という本来の方針実現のため、必死の調整が続いているという。

元山さんという一人の若者の持つ、分け隔てのない誠実な対話の姿勢、民主主義を守ろうとするゆるぎない意思、意志に裏打ちされた勇気ある行動は、権力に屈服しない市民社会誕生の兆しとして、これからの日本社会の可能性に大きな希望を与えてくれる。

ハンガーストライキ後の入院先で打ったツイッターの中で、元山さんは浪人時代に恩師から送られた手紙に記された言葉を紹介している。

『神よ、変えることのできないものについて、それを受けいれるだけの冷静さを与えたまえ。
変えることのできるものについては、それを変えるだけの勇気をわれらに与えたまえ。
そして、変えることのできるものと、変えることのできないものとを、識別する知恵を与えたまえ。
---ラインホルド・ニーバー』

私たちも、今回の沖縄県民投票の完全実施を応援すると共に、彼に倣って、「受け入れる冷静さ」「変える勇気」「識別する知恵」をもって、これからも私たちなりに歩みを継続していきたいと思う。