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0785 「2025大阪万博」開催決定は嬉しいニュースか 笹井明子 2018/11/26 20:23:00
11月23日夕方、NHKが「嬉しいニュース」として「2025年大阪万博決定」の第一報を報じ、ネット上に世耕経産相、松井大阪府知事や榊原経団連名誉会長らが躍り上がって喜ぶ姿が流れて来た。

その少々度を越したはしゃぎ振りに、東京オリンピック決定時の映像が重なって、心底ゲンナリ感に襲われたのは、私が「未来」に「夢」を描いたり、大きなイベントに「喜び」を感じるには年を取り過ぎたせいだろうか。

23、24日の新聞各紙は、「(太陽の塔)歓喜の光」(東京)、「世界の未来 最新技術で」(毎日)、「夢実る」(朝日)と好意的に報じ、25日の新聞紙上には、「祝!日本万博開催決定!」「みんなの思いで誘致が実現!」の見出しで、中日新聞社を含む百社を超える企業が名を連ねた意見広告が掲載された。

こうして日本列島は、またもや歓迎ムード一色になるのかと思っていたら、程なくして、「地元自治体や財界と連携した総力戦で、4年間で約35億円を誘致費につぎ込み、万博が実現した場合は途上国など約100カ国に約240億円を支援する計画も公表」という情報が流れ、ツイッターには「日本が大阪万博をカネで買った」と批判的なコメントが並び始めた。

立川談四楼さんは25日のツイッターで『(世耕経産相は)札束で頬を張ったわけだが、誰に断ってそんな下品なことを言うんだ。そしてそのカネはどこから出るんだ。茶坊主感丸出しではしゃぐ姿はみっともないぞ』とつぶやいて、私のゲンナリ感の正体を言い当ててくれた。

更に、大阪府が「カジノ開設」と「万博誘致」をセットに考えていること、万博誘致委員会のスポンサー企業にアメリカのカジノ企業が3社入っていることが分かるに至って、2025万博のテーマ「いのち輝く未来社会のデザイン」とは異なる、きな臭い一面が明らかになってきた。(LITERA11/26)https://lite-ra.com/2018/11/post-4393.html

そして、万博開催に当たっては、1200億円〜1300億円の会場建設費に,800億円の運営費、それとは別に大阪市が負担する700億以上のインフラ整備などの費用が掛かると考えられている。さらに万博に便乗してカジノ開設のインフラ整備にも税金が投入されることになる見込みだという。(同上)

依存症問題を放置してIR法案を通す。働き方改革で残業代をゼロにし、入管法改定で外国人労働者への門戸を開くとしつつ労働賃金全体を削る。若い人たちは長時間労働、低賃金にあえぎ、高齢者は医療費の値上げ、年金の削減に不安を募らす。災害被災地への復興支援はいつになっても実現しない。そして消費税の増税。

こんな現状でも、大多数の人たちは、マスコミが喧伝するように「オリンピック」や「万博」に夢を感じて、歓迎しているというのは本当だろうか。それにしては社会全体の空気が暗すぎる。

他者を踏みつけにし、あるいは札びらで頬を叩くのではなく、日々の暮らしを大切にし、「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を分かち合い、穏やかに生きていくというシンプルな姿勢を維持するのは、現代社会にあっては難しすぎるのだろうか。

「にっぽん凄い」の幻想にすがり、目先のお祭り騒ぎに狂奔して、負の遺産は先送り、というのは、成熟した社会の在り方とはとても思えないのだが。