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0784 外国人労働者と人権 2018/11/20 15:31:38
―入国管理法改正と、技能実習生の失踪問題を考える―

日本の生産年齢人口は、少子化に伴い減少が続いている。2015年は7592万人に対し、2050年には5000万人と予測されている。現在の外国人労働者は128万人。留学生と技能実習生がその大部分を占めるという事になっている。

安倍政権は、成長戦略のためには労働者が足りないと、外国人労働者の受入れ拡大のための入国管理法改正を言い出した。「入管法の改正は移民政策ではない」というのだが、その理由は、「その業種が人手不足を解消したら、その分野で働く外国人は帰国させる」というものだそうだ。

ここには、外国人には安価な単純労働をさせればよい、不要になったら返せばよいという安直な受け入れ姿勢がうかがえる。

また、外国人労働者を最長5年間の在留期間の「技能実習」と、「特定技能(仮称)」のカテゴリに分けるそうだ。前者は家族を呼ぶことや優遇措置はない。後者は、【技能実習生が資格を得た場合】、さらに5年間の在留期間が認められる。そして【高度専門職】と認められれば家族を呼ぶことや優遇措置も認められ、在留期間の期限もなくなるという。

分野としては「建設業」「造船・舶用工業」「介護」「農業」「宿泊業」の5分野だったが、「ビルクリーニング」「素形材産業」「産業機械製造」「電気・電子機器関連産業」「自動車整備業」「航空業」「漁業」「飲食料品製造業」「外食業」などの業種も人手不足を訴えて受入れを希望している。

このことで浮かび上がってきたのが、今の外国人技能実習制度の有様だ。今回ようやく国会で、7000人を超える実習生の失踪と、その理由が明らかになってきた。

外国人を安価な労働力として、日本人の嫌がる「きつい」「汚い」「危険」な3K労働をさせる。技能実習にもならない単純作業の繰り返しで、賃金は技能実習を名目に最低賃金以下だったり、残業代はもっと安く夜中まで働かせたり…実習生が逃げ出すのも無理はない労働環境の受入れ先が多くあったのが実情だった。

技能実習生制度というなら、受入れ先が何の技能を実習させるのか、その成果はどうだったかを、行政が外部監察すべきではないだろうか。

しかも今回も【技能実習の資格】【高度専門職】の仕分けは、すべて曖昧なまま。今までの【技能実習生】と同じように、実体のない名称が伴う入管法改正だけが取り沙汰されている。

そこには、外国人労働者の生活や立場への配慮は見られない。外国人労働者を利用するだけのシステムは、ヨーロッパが直面している移民問題と同じ轍を踏むのではないか。

外国人労働者を入れるなら、彼らに日本語を教え、社会ルールを教育し、生活が成り立つように、彼らの権利を守る方向で考える必要があると思う。そうでないと社会不安を招き、結果的に軋轢を生んでしまう。

外国人労働者は「数」ではない。1人1人が親を持ち、妻子がいて、その国の文化や宗教、そして希望や夢を持っている。

そこをしっかり考えず、労働者の増加を目的に、入管法を曖昧なまま通したら、早晩、問題が出るのではないか。

そして外国人労働者に対する各々の人権感覚(ことに政治家の人権感覚)は、日本人に対しての人権感覚とまったく同様であることを、私たちは自覚したいと思う。