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0776 医大入試の女性制限から思う医療の問題 2018/09/26 00:58:21
東京医大が、女性の入学を男性よりも厳しく制限していたニュースが流れた。そして引き続き、他の多くの国公立・私立医大の男性:女性の合格率が、東京医大の1.29を上回り、高いところでは1.5、1.67と男性が多い。
試験を受けた女性たちは不公平な扱いを受け、人生を変えられた人もいたことだろう。

女性を制限した理由は、妊娠・出産・育児があるため「戦力外」となる時期があるからだという。
でも、これってハンディだけなのか。自身の体験から、その状態の患者に深く共感できる人が増えることは、医療の現場にも深みを与えるのではないだろうか。

そしてこれは女性蔑視だけでは片付かない問題を孕む。若手医師の毎月何度とある当直、80時間を超える残業が当たり前の現実、無理な業務を押し付けて当然といった、医療の現場の問題がある。

息子の友人のA君。柔和な青年で、さぞ良い医師になったことだろう。その彼は研修医の時、当直明けに日中の業務をこなし、帰宅中に自損事故で短い一生を閉じた。疲れ果てて一瞬の居眠り…と誰もが思った。

日本の医療制度は海外と比べ良くできていると聞く。保険があって、医師を選べて、診察を受けたいときに受診できる。しかしそれが医師を多忙にさせていることも確かだろう。
そして「一時期は真夜中まで働かせられないかもしれないから」という女性の差別につながった。

となると、医療を使う私たちも考える必要があるのかもしれない。

10年ほど前になるが、兵庫県の病院で小児科医が過労で辞め、いなくなるかもしれないという事態となった。地域の拠点病院なのに、小児科が閉鎖されれば、産科も閉鎖される可能性が高い。

その時、1人の母親が、医師の過重労働に気づき、自分たちの問題として考えてみようと周りの母親たちに、@重症者のための夜間診療をコンビニ感覚で利用するのは止めよう、Aかかりつけ医を持とう、B医師に感謝の気持ちを伝えよう、と呼び掛けた。

小児救急の電話相談を周知させ、緊急性の判断を電話でしてもらえることで母親の不安を取り除く一方で、過重労働から医師を守ることが、地域の子供や住民を守ることであると気づかせたのだ。

携帯で医療情報や講座をお知らせし、小児救急冊子「病院に行く、その前に…」は重症児を見逃さないようにと作成・配布されたという。行政も協力して小児科も産科も無くさずに済んだ。http://www.kaibara-hp.jp/

 さて、話を元に戻して、女性の受験合格者を減らしたいという医大の思惑が非難されるのは当然だ。女性医師を一律に「戦力外」扱いをするなど、差別以外の何物でもない。

しかし、その時、なぜ医大や病院側が女医を好まないのか、男性医師の多忙も問題ではないのか。医師の過重労働が当たり前になっているところに、自分たち医療を受ける側の問題もまた、潜んでいはしないかと、改めて省み考える必要があるのではないだろうか。