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0766 杉田水脈の発言と安倍政治の本質 笹井明子 2018/08/08 22:41:48
ツイッターで炎上し、メディアにも大きく取り上げられた、自民党・杉田水脈衆議院議員の「LGBTは子供を作らない、つまり、生産性がない。そこに税金を投入することが果たしていいことなのか」という「新潮45」8月号への寄稿文。

この文章が公になると、すぐにLGBT当事者が抗議行動に立ち上がり、難病患者や障害者支援団体も抗議声明を出し、他にも、他者の属性に口出しし、「生産性」で分別する政治の介入を許せない、と感じる多くの人たちが、抗議の輪に加わった。

7月27日の自民党本部前の抗議行動では、ある大学教員が、「あなたは必要とされていない、この一言は言われた人の胸に刺さったまま残ります。」「私はこれまでカミングアウトしなかったが、黙っていたらもっと怖いことが起きる。だからここで私は言います。」と言って、「私はゲイだ!それがどうした!私たちはここにいる!This is pride!」と声を張り上げた。

周囲の人たちも大きな歓声と共に「This is pride!」の大合唱で応えていたが、その様子をYouTubeで見ていた私も、この真剣な訴えに、胸を揺さぶられ、個人の属性を理由にプライドを踏みにじり、権利を制限する政治などあり得ない、と感じる「こんな人たち」の輪の中に自分もいることを、溢れる涙と共に自覚した。

反発の広がりに慌てたのか、8月1日、自民党は公式ホームページに、『問題への理解不足と関係者への配慮を欠いた表現がある』とのコメントを発表し、8月3日には、安倍首相が「人権が尊重され、多様性が尊重される社会を作っていく」とのコメントを語った。こうして彼らもポリテイィカル・コレクトネは理解しているようだったが、その一方で、二階幹事長は8月2日に「大げざ、この程度の発言」と述べて、自民党としてこれ以上追及することはないという本音を明らかにした。

ネット上に流れた情報によれば、そもそも杉田水脈というのは、安倍首相の肝いりで自民党の中国ブロック比例トップに据えられて当選した議員だという。安倍首相とは親和性が高く、安倍首相が見るからにいやそうに語る「多様性の尊重」の建前とは真逆の価値観の持ち主のようだ。

ジャーナリストの鮫島浩氏は、ツイッターで「この政権はマイノリティをはじき、それを見せつけ、マイノリティとして扱われたくないという大衆心理を刺激して多数派を形成してきた。人権軽視と多様性否定こそ根幹のイデオロギーだ」と語っているが、杉田議員誕生の経緯と今回の発言への安倍政権の対応を見ると、この指摘は図星だと思わざるを得ない。
https://twitter.com/SamejimaH/status/1025159956033462272

今、総裁選を控えた自民党内では、「自分を支持するものは厚遇し、意に反するものは干す」という安倍首相の「恐怖政治」がまかり通り、その手法に右往左往する自民党議員たちの様子が聞こえてくる。「言った」「言わない」、「会った」「会わなかった」と、総理に絡む細かな動向が出たり引っ込んだり、「誰が何のために嘘を言っているのだ?」というばかばかしい話が巷に流れている。

権力を巡るこうしたモラルの崩壊は、今や政治の世界に留まらず、スポーツ界や大学にまで蔓延し、どこの社会においても、権力の座に胡坐をかく者の傲慢と、権力にすり寄る者の卑屈さの、見苦しく情けない姿が、連日メディアに流れ、私たちの心を暗くし、それに止まらず、時に国境を越えた人々の目に晒されて、世界の失笑を買うに至っている。

日本社会をこれ以上堕落させないために、日本に対する世界の信頼をこれ以上失墜させないために、私たちは「世界の首脳をリードする総理」「被災者を励ます総理」の国内向け絵作りに乗せられ騙されることから卒業し、現実をリアルに捉える感性を取り戻さなければならない。自分自身が何らかの意味で現にマイノリティである、あるいはいつでもマイノリティになる可能性があるという現実を直視し、真の「多様性の重視」「人権の重視」の政治、誰もが胸を張って生きていける社会を、創出し直さなければならない。

8月6日「広島平和記念式典」で、こども代表の二人の小学6年生は、「平和とは、人も自分も幸せであること。」「平和とは、夢や希望をもてる未来があること」と語り、「私たちが学んで心に感じたことを、伝える伝承者になります」と誓ったが、メッセージを読みあげる明るく真っすぐな二人の眼差しは、私たちが築くべき未来社会をそのまま指し示しているようだった。

そう!子たちの美しい表情がゆがむことなく、一人ひとりが幸せに生きていけること、子どもたちや若者たちの未来が、公正で、明るく、豊かであること、それこそが私たちの願いだ。

そして、そんな社会の実現のために、今はまず、政治や社会のゆがみを正すこと、権力の座に居座り続ける安倍総理の「裸の王様」振りを明確に指摘し、一日も早い退陣を明確に求めることが、何より大事なのだと思う。