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0740 「モリ・カケ問題」の本質 笹井明子 2018/02/20 10:49:35
確定申告開始日の2月16日、財務省と、隣接する国税庁の前の歩道は、国会で「資料は破棄した」と虚偽答弁を続けた元財務省理財局長、現国税庁長官の佐川氏と、任命責任者の麻生財務大臣、「私や妻が関わっていれば総理も議員も辞める」と発言し事態をここまでこじらせた「モリ・カケ問題」の主役・安倍首相の責任を追及し、退陣を求める千人を超す人々で埋まった。

集った人たちは、「国民の財産をお友達に横流しするな!」「ふざけた国会答弁を許さない!」などと声をあげ、その熱意に後押しされるように、向かい側車道の宣伝カー上に立った野党議員たちが、国会の異常な状況を訴え、事実解明に向けて徹底追及を続ける決意を語ると、人々の間からは大きな声援と拍手が湧き起こった。

報道陣も、読売、産経を覗く一般紙や、NHK、TBS、テレ朝、日テレ他、ほとんどのテレビ局など、市民の抗議行動にしてはいつになく多くの取材記者が訪れ、「納税者の怒り」を可視化しようと奔走する姿が印象的だった。

こうして、「森友・加家計問題の幕引きを許さない市民の会」という小さな市民団体の呼びかけは大きな反響を巻き起こし、多くの共感を呼んだが、政府は、「確定申告に混乱は起きていない」とやり過ごす構えのようだ。マスコミも当日の取材陣の熱気とは裏腹に、オリンピック報道の陰に隠れて、扱いはごく小さいものだった。

政府関係者は現在、「佐川氏の首を切る」ことが事態の収拾に繋がるか、あるいは麻生大臣−安倍首相の責任問題に波及するか、世論の動向を探っているように見える。

19日の国会では、麻生大臣が「街宣車まで持っている市民団体というのは少々普通じゃないと思った」と述べて、2.16行動の呼び掛け人と参加者を「特殊な人たち(こんな人たち)」として一般納税者と切り離す「印象操作」に走っていた。

しかしこうした形振り構わない安倍内閣閣僚の言動は、そのまま彼らの焦りにも見える。

「モリ・カケ問題」は、野党を貶め、行動する市民を「敵」と見做して逃げ回っていればやり過ごせるものでは決してない。事実は次々に明るみに出続けているし、市民の会には、「次回は是非参加したい」という要望が沢山寄せられているという。

センセーショナルな報道にはならないまでも、いくつかのテレビ番組で、「モリ・カケ問題」の政府対応に対する地道な検証も語られ始めている。

アメリカとの親密振りを喧伝し北朝鮮の脅威を煽ってみても、オリンピックで金メダルをとった羽生選手に電話をしても、働き方改革をぶち上げてみても、「やってる感」の演出に走って、政治の基礎をなす納税者・国民に目を向けていない政権の体質は日に日に露になり、国民を分断して保身を図る手法にもそろそろ限界が近付いている。

国民の視線から逃げ回る佐川長官も、自ら選んだとは言え、安倍首相の「ネポティズム(縁故主義)」と「忖度」の政治の哀れな犠牲者ともいえる。

国会論議を軽視し、公務員の矜持を貶める政治に終止符を打つこと、そうして日本社会を立憲主義、民主主義の基本に戻すことこそが、「モリ・カケ問題」の真のゴールであると、私を含む多くの市民が認識していることを、政府・自民党は甘く見ない方が良いだろう。