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0706 有権者の意思がブラックホールに吸い込まれることのないように 笹井明子 2017/07/06 09:13:37
7月2日の東京都議選で、自民党は獲得議席23という歴史的敗北を喫した。

前日の1日、秋葉原で、奇しくも巻き起こった「安倍辞めろ」「帰れ」コールと、それに対して安倍首相が「こんな人たちに負けるわけにはいかないんです!」と指を差し、声を荒げて叫ぶ様子をユーチューブやテレビ報道で見て、自民の敗北を予感はしたが、正直これほどの結果になるとは思っていなかった。

思えば、巷の空気の変化は、かなり前から始まっていた。ここ1〜2ヶ月、普段保守的な私の友人たちの間でも、安倍夫婦や閣僚たちへの批判が話題に上っていたし、都議選公布前後になると、私の住む、あるいはよく訪れる街中からは、いつの間にか安倍首相のポスターが消えていた。

今や、安倍晋三氏が「裸の王様」であることに、ほとんどの国民が気付き、公に指摘するようになっているのだ。・・・安倍周辺の人たちを除いては。

選挙結果がでた翌日、記者の前に現れた安倍首相は、一見神妙な面持ちで敗北を認め、反省の弁を述べたが、ん?よく聞くと「安倍政権の緩みへの批判と受け止め、深く反省しなければならない」と、何だかピンとはずれなことを言っていた。

安倍さん、私たちが怒り、批判しているのは、「緩み」ではなく、あなた自身の「驕り」「嘘」「国政の私物化」に対してです。それに、あなたの傲慢を諌めることのできない自民党執行部や自民党員の萎縮や停滞にも私たちは深く失望していますが、「緩み」と言うことで、更なる内部への締め付けを暗示しているのではありませんか?あと、「反省しなければならない」って他人事ですか?

都議選の結果を受けた自民党の対応を見る限り、私たちの期待とは裏腹に、自民党執行部は、今までの対応を改めるのではなく、党内や省内を人事権などを使って締め付け、メディアや市民の批判を強権的な力によって封じ込め、経済や外交などの煙幕によって今起きている問題から国民の目をそらすという、相変わらずの手法で乗り切ると決めたようである。

私達も思い切りなめられたものだが、「偉大なるアベ首相様」を守ることを自己目的化したような党内の論理は、もう通用しないことを、彼らはこれから日々思い知らされることになるだろう。

ところで、都議選に於ける自民党の大敗にも関わらず気持ちがもうひとつ晴れないのは、憲政史上最悪ともいえる安倍政権にとって代わる政党の不在の問題があるからだ。

今回の都議選の結果、自民党から離れた票は「都民ファースト」という「ブラックボックス」のような空間に吸い込まれていった。今回「都民ファースト」が存在しなかったら、それらの票は恐らく「棄権」となって、思い切り低い投票率の中で自民が勝っていたのではないだろうか。想像すると冷や汗が出てくる。

私自身は、「森友・加計問題」、「共謀罪」、あるいは、その前の「安保関連法」などの国会審議を見る中で、こうした問題に取り組んだ民進党、共産党、社民党、自由党の議員たちが、数の論理に理不尽に押しつぶされる状況下でも、真摯な姿勢で、懸命に、精一杯頑張っている姿を見てきたし、そんな議員たち一人ひとりに今も明確な信頼の念を持っている。

しかし、今の政権に取って代われるという信頼感を大多数の国民から得るには、これらの政党、とりわけ、野党第一党である民進党に、何かが決定的に不足していることも認めざるを得ない。

国民のやり場のない怒りを吸い上げ、真に国民ための政治を司る勢力として力を持つために、特に民進党執行部には、今何をすべきなのか、将来に向かってどういうビジョンを築いていくのか、感覚を研ぎ澄まし、国民の声に耳を傾け、日々汗を流している議員や他の野党ともよく話し合い共に考えて、適正な判断を下すことを望みたい。

また、私たち自身も、真っ当で信頼に足る受け皿が育つために、今自分たちは何ができるのか、自分たちは政治にどう関わって行くのかを、評論家的スタンスではなく、民主主義の当事者、主権者として、これまで以上に真剣に、積極的に考え、行動していきたいと思う。