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0652 都知事選ラプソディー 笹井明子 2016/08/03 01:33:12
舛添氏が自身の政治資金問題を週刊誌に取り上げられ、ほどなくしてマスコミの総攻撃、袋叩きにあって都知事を辞任したのは、参院選直前のことだった。

この騒ぎに隠れて、参院選の真の争点「自民党政権下の改憲の是非」は、投開票日までマスコミに取り上げられることなく、気がつけば自民圧勝、改憲勢力が三分の二を占める結果となっていた。

それから直ぐ、参院選の結果を省みる暇もないままに、都知事選に突入。こうした事実を背景に鳥越俊太郎氏が都知事候補に名乗りを上げたのは、参院選の結果に対する切羽詰った危機感からだったことは明らかで、立候補と同時に都政について具体的に語れというのは、無理な注文だったと、私は思う。

参院選の結果に対する危機感を同じく抱く私としては、鳥越氏自身の準備不足も、彼をぎりぎりのタイミングで推薦した民進・共産ら野党の準備の遅れも、止むを得なかったと理解できた。

しかし、一般有権者の目からすれば、選挙公示直前、直後にマスコミが取り上げた時の鳥越氏の姿は、満を持して臨んだ小池百合子氏の迫力と比較しても、準備不足で頼りなさそう、と写っただろうことは容易に想像できる。

また、選挙戦開始当初の街宣活動でも手際の悪さが散見され、期待を持って集まった人々に失望を与えたのではないかと思われた。

そんな様子をハラハラしながら見つめていた私だったが、鳥越氏が「聞く耳を持つ」や「学んでよし」を実践し、短時間のうちに様々な都民の声に接し、切実な声を上げた人々と共に政策に結実させていく過程に、新しい政治の可能性を感じ、いつの間にかある種の感動を覚えていた。

そうは言っても、都会の一般有権者はそんなに根気強いはずもない。今は負けを率直に認めつつ、それでも、止むにやまれず手を上げた鳥越氏、彼の応援に汗を流した野党の政治家や市民、ビラ配りや電話掛けなど地味な作業を毎日続けた名もない人々の誠意と努力に、心から敬意を表したい。

さて一方、「選挙ってこういうもんです」と自ら語った小池氏の、従来型の攻撃と扇動とお涙頂戴の闘い方は、彼女の権力への強い執念と相まって、多くの都民の心を動かし、圧倒的勝利をもたらす結果となった。

当初から政治資金疑惑がささやかれている小池氏の当選という結果がでた今、舛添氏の辞任による都知事選騒ぎとは何だったのだろうかとの思いに捕らわれる。50億円とも言われる選挙費用は、何のために使われたのだろうか。

「ユリちゃんと叫んだ私が馬鹿だった」・・・こんな嘆きの川柳が、早々に世に出ることのないように、せめて小池氏には、「都民のための都政を取り戻す」を、言葉通りに実践してもらいたいものだ。