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0644 自由・民主主義・平和が壊れるとき 2016/06/14 23:16:17
 参院選を前に、映画のお勧めなんて呑気だなぁと思われるかもしれないが、今月から上映の3本には、つくづく考えさせられた。

◆「シチズンフォー スノーデンの暴露」(上映中)
 エドワード・スノーデンは、中央情報局 (CIA) や国家安全保障局 (NSA) のサイバー・セキュリティのエキスパート局員として情報収集活動に関わった。
 そして彼は、アメリカ政府が民間のネットサーバーに侵入して、国民のあらゆる情報を集めていることに気づく。
 これに気づいた時、スノーデンはどんなにか苦悩したことだろう。国家ぐるみの人権蹂躙、言論の自由を侵しているのだから。

 そして2013年、スノーデンは、映画監督のローラ・ポイトレスに、「国家が国民を監視している」とメールする。ポイトレスは、ジャーナリストのグレン・グリーンウォルドとともに香港へ飛び、スノーデンと会ってインタビュー映像の撮影を開始する。

 この映画は地味なドキュメンタリー映画なのにスリル満点で、スノーデンはどうなるのか?政府はどう出るのか?とハラハラ。
 何しろ彼の告発記事が出た途端、本名や身分など一切明らかでないのに、彼の家は誰かに侵入され、家の前には工事もしない工事車が並んだのだから。

 個人的なメール、ネットで見たHPや検索までもが国家に把握されて、その情報はいったいどう使われるのか。テロ防止には監視社会も致し方ないのか?「秘密保護法」は必要なのか? 自由や人権がどう損なわれるか。

 「悪いことをしていなければ監視されていても心配することはない」という意見に対して、スノーデンは「 第一に権利を放棄していること。権利が大切なのはいつ必要になるか分からないから」。

 そして、「知的探求心が脅かされ、自由が侵される」「テロを監視社会の理由にするが、関係のない人のプライバシーまで侵害している」と語っている。
 
◆「シリア・モナムール」(18日から)
 シリアからユーチューブに投稿された映像と、シマヴ(銀の水)と名乗るシリア在住の女性の映像を、フランスに亡命中のシリア人監督が1本の作品に纏めたもの。

 シマヴの私設学校に通う子供たち。笑っていた男の子と女の子が翌日には死体となっている。「スパイナーがいるの?」とあどけない顔で聞いて、必死で建物の陰に走る幼児。

 一番怖いと思ったのは、ユーチューブの映像らしい少年の拷問シーン。つまり、仲間が少年へ拷問を加えるのを笑いながら撮影し、それをアップした誰かがいるということ…。

 人間はどこまで残酷になれるのだろうか。2011年以来続くシリア内戦。400万人という大量の難民が流れ出て当たり前と思える惨状だ。

◆「帰ってきたヒトラー」(17日から)
 ヒトラーが生き返るが、人々はソックリさんと思い込むというコメディ。
 テレビに売り込みたい映像作家は、ヒトラーを連れてドイツを回る。人々にインタビューをするシーンは、半ばドキュメンタリーらしい。

 「ヒトラー」の質問に人々は嬉々として現状への不満をぶつける。増加する難民・移民に困惑する人々の心の中に、偏見差別を意識させずに、ヒトラーに同調する気分がスルリと入り込む。

 ヒトラーの現代とのズレっぷりに笑わせられながら、ふと気づいてヒヤリとする。突き付けられているのは、私たちの心の中に潜むヒトラーなのだ。
      *
 言論の自由も、民主主義も、平和も、少しずつ浸食されている。「平和憲法」の集会が、公的な会場から締め出されることが起き始めた。表現の自由が委縮し始めた。

 私たちが守る努力をしない限り、自由も民主主義も平和も、いつ失われてしまうか分からないほど脆弱であることに、これらの映画は気づかせてくれる。
 間近となった参院選、私たちはどんな社会に暮らしたいのか、よくよく考えて票を投じたい。