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0640 18歳選挙権で日本は変わるのか 見習い期間 2016/05/22 21:38:24
昨年6月、公職選挙法の改正により選挙権年齢が満18歳以上に引き下げられた。18歳・19歳という人の意見が投票結果に
新たに反映され、若い感性が現在日本の政治情勢の突破口になるという期待をかける声も、地域の市民活動などを中心に
筆者の周囲では決して少なくない。
しかし、「18歳選挙権」の実施により本当に現状を打破することができるのだろうか。

18歳選挙権の実施に先立つ諸調査の結果を見る限り、状況はこれまでとさほど変わらないのではないかという印象を抱いてしまう。
今年の2〜3月に共同通信が実施した世論調査では、18歳・19歳で選挙に「必ず行く」「たぶん行く」と回答した人は56%という数字で
あり、他の世代と比べ突出して高い割合ではない。また、支持政党を問う質問でも最も政党支持率が高いのは自民党だった(26%)。

高等学校などの教育現場では、18歳選挙権の実施を踏まえ「有権者教育」を行う動きも出てきている。
一人ひとりが自らの力で何かを判断し選択する姿勢を、相対的に若い世代が身に着けることは大切なことだ。
しかし、教育する側は学校の教員である以上はあくまでも「中立」の立場を求められる。授業などで扱うトピックも
なるべく政治的な色が薄いものが多くなるのはやむを得ないことだ。現在の有権者教育では、選挙までの時系列の流れや
投票方法を知り、身近なトピックについてどの考えを支持するのかを選ぶ行動に慣れることはできる。だが、実際の選挙で
どのような候補者を選ぶのかを判断する際の決め手はいまひとつわかりづらいままだろう。最終的にクラスや班で自分の意見を
話し合うとなると空気を読んだ綺麗事を言ってしまったり、多数派の意見に合わせてしまうことも少なからずあるだろう。

こうした状況下で、いわゆる「頭のいい子」は現政権に批判的で様々な情報を各種メディアから集めた上でNOを突きつけることが
できるという見方も、上の世代の人間が一部の若者過剰に期待を寄せているだけに過ぎない。「若者=革新」というステレオタイプな
若者観にもとらわれてしまっている。

以上のように考えると、18歳選挙権の実施だけで直ちに日本が変わるのかと問われたら首を縦に振ることはできない。
しかし、市民のための社会を作るべく、彼らよりも長く生きている私たちにできることはある。
投票に行かない若者には彼らなりの理由がある。高校生世代の人と話すと、人生経験も少なく情報も乏しい中で何を選べばいいのか
わからないという者もいる。現在の政治状況を見て、多数派に交わらない限りもはや投票などしたところで無駄なんだと
失望してしまう高校生もいる。私たちとは見方が異なる若者がいることも忘れてはいけない。新聞、テレビ、Webなど各種メディア
の情報を得たうえで、現政権が最も良いと判断する若者も確かに存在するのだ。
そうした彼らの個々の意見をないがしろにして「最近の若者は政治に関心がない」「自分たちの未来のことを考えていない」などと
一方的に罵倒することだけは絶対にしてはいけない。多様な価値観の若者がいる中で、現在の政治状況、政権与党のしていることを
評価できないと思う若者たちがいれば、彼らが活動しやすいように全力でサポートし、エールを送ることが第一にできることだ。
他人の政治観を変えることは困難だが、立場が近く問いを共有できる若者に世代を超えて仲間がいることを伝えることが、
人生の先輩としての役割であり、強者が市民をないがしろにして暴走する現状を打破するための連帯を作る第一歩になるだろう。