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0638 憲法に合わせるか、時代に合わせるか 猫家五六助 2016/05/16 03:28:13
先日、朝の情報番組を見ていたら、「憲法改正の正しい思考プロセス」という解説をしていました。その手順とは、
1)ある政策を実行したい。(安全保障、選挙制度、災害対策、労働環境、経済政策など)
2)新法の制定、既存の法律の改正でできないか。
3)現行憲法のまま、解釈の変更で対応できないか。
4)憲法改正で対応。(政治権力は憲法によって縛られる対象になる)
以上のようになるとのこと。つまり、新しい政策は既存の法律やルールを修正して運用するが、最上位の憲法に抵触したり矛盾したりする政策は憲法の解釈のしかたを変えて対応し、それでも無理があるならば国民に問うて憲法改正しよう。このプロセスを踏めば、政府は暴走しない・・・ということでしょうか。
 また、ある評論家は「護憲を主張するならば、自衛隊の存在(戦力の保持)を否定しなければならない。戦後、自衛隊によって日本の平和は守られており、その平和を享受しつつ護憲を主張してきた人々には大きな矛盾がある」といいます。

 さらに、ある著名人は「憲法は70年以上止まったままだが、時代は刻々と変化している。世界情勢や国家同士の関係は70年前とは大きく異なるのだから、憲法を改正するのが正しい」と。

 こういった解説や主張をされると、おおかたの国民は「詳細はさておき(よくわからないけど)、憲法改正はするべき」と考えるのでしょうが、私はキツネにつままれた気分になるのです。なぜなら、そこには「憲法の意義や生まれた経緯」が省かれているからです。議論のすり替え、ともいえるでしょう。要は、

 「憲法が先か、時代が先か」

ということです。戦前は富国強兵とか当時の列強国との対等な関係を目指して政権が先導し、軍部が暴走し、太平洋戦争に突入して不毛な戦争を繰り広げ、多くの国民を戦死させたわけです。つまり、「時代に飲まれた」のだと思います。そして迎えた終戦で愚かな政権・政策に気づき、反省して日本国憲法が生まれました。

 「時代が変わったから今の憲法は古い」「時代に合った憲法が必要である」「戦勝国の押し付け憲法はダメだ」と主張する皆さんは、先の大失敗を全く学んでいないのです。時代が変わっても憲法の本質を理解し、護る努力をしなければいけないのに。

 私は平和を理念とする憲法を「標準」と考え、自衛隊の存在は日米安保に押し流された「例外」として認めています。「例外」扱いを受けながら専守防衛に徹し、災害現場で命がけの活動をしている自衛隊員には感謝しています。なにしろ、警察予備隊発足以降の60余年間での過酷な「訓練」死者数は1,800名を超えているのですから。しかし、解釈改憲による関連法案で自衛隊の活動を「標準」へ変更するならばが、海外派兵の「実戦」死者数は格段に増え、それを上回る戦傷者が帰国するでしょう。

 冒頭に転記した「憲法改正の正しい思考プロセス」に欠落しているのは「その政策が憲法に照らして正しいか」という吟味です。時の政権が実現したい「政策ありき」では、4)の(政治権力は憲法によって縛られる対象になる)は論外。そして、もっとも論外で退場すべき人は「説明責任を果たす」といいながら説明も論戦もせずに我がままを続ける安倍首相です。