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0628 「過労社会」日本の現在 名無しの探偵 2016/03/02 22:51:54
「過労死や過労自殺を伝えるニュースが後を絶たない」という出だしで始まるヤフージャパンのニュースが2月28日付けであり、そのタイトルには驚愕した。
 「退社後8分後に出勤」で考える過労社会の処方箋「インターバル休息制度」という見出しである。
このヤフーのコラム記事は東京新聞の中澤誠氏の寄稿である。
コラム記事の紹介が目的ではないので事実のみを記述すると、退社後8分後に再び出社ー。過労自殺した西日本高速道路の男性社員(34)の過酷な勤務実態を1月25日、神戸新聞が報じた。神戸西労働
基準監督署は、男性社員の労災を認定、というもの。
中澤氏が続けて言うように「本来、日本の法律では、1日8時間・週40時間を超える労働、つまり残業を認めていない。しかし、実際には当たり前のように残業が行われている。それは使用者と労働者側の合意で1日8時間を超えて残業させることができるという例外ルールがあるからだ(36協定)。」
この36協定には8時間を超えて残業させることができるとされているだけで限界が設定されていない。青天井と言われている。
この過労自殺に至った「退社後8分で出社」という
日本の労働現場に対してEU加盟国においては「インターバル休息制度」という規制があり、11時間以上空けることを企業に義務づけている。
 最近の日本で過労死・過労自殺が社会問題になったのは1980年代からであり、2016年の現在、36年も経過している。それなのに過労死は減らないばかりか増加しているのではないか。
 このヤフーの特集でも安倍政権は「働き方改革」の中で「長時間労働の抑制」が盛り込まれていると
言うのだが、それは安倍政権の二枚舌を分かっていないからであろう。実際に安倍政権は「残業代ゼロ法案」や「ホワイト・カラーエグゼンプション」制度の導入を画策しているのであり、これらの法案が実現すると例外的にであれ(対象となるホワイト・カラー)8時間労働制度は破綻する。
ここでこうした長時間労働の問題を近代初頭に遡って検討してみよう。そうすることで戦後の労働法制が自民党単独政権の元でいかに歪められてきたかが
はっきりする。
明治年間に「女工哀史」という書物にも著されていたように日本の近代では最初の工場労働に携わったのは若い女性(小作人農家の娘が出稼ぎで)であった。長時間労働で健康を害して故郷に帰還した女工は多かった。特に結核に罹患。
そこで政府(議会)はこうした社会問題に対処すべく「工場法」を制定。ところが、制定直前に企業(紡績業)の経営者の反対が強かったのであるが、健康を害した女工が多かったので企業の反対を押し切り12時間労働制を敷いたのである。また、女子の深夜労働も禁止した。
企業側の根強い反対を押し切って女工の健康を配慮した点で現在の自民党政権とは真逆である。
小泉政権から安倍政権になり、自民党政権は労働基準法という「岩盤規制」を打ち破るべく「規制緩和」政策を立て続けに法制化してきた。(非正規社員の拡大などである)
現在のような日本型過労社会の現実では近代初頭から昭和前期の労働事情を批判することもできないし、「退社8分後に出社」という「奴隷的拘束」(憲法)がまかり通っているのだとしたら近代前夜の奴隷労働の歴史を想起しないわけにはいかないであろう。
思えば、非正規社員の拡大(40%に拡大している)も奴隷労働を想起させる。奴隷労働と言うと鞭で脅して労働させるというイメージであるが、実際の奴隷労働はそうのようなものではない。鞭でしばいたのでは成果は上がらない。奴隷の意思に反して働かせるという点が奴隷労働のポイントなのではないか。そうすると、正規の社員として働きたいが、採用されないのでやむなく非正規社員になっている。
また、短期雇用の非正規となると(日雇いというのも多い)なおさらである。
残業問題に戻ると、長時間労働の統計(就業構造基本調査)によれば、男子正規雇用では年間250日以上、かつ週60時間以上就労する者は297万人。これは厚労省も認める「過労死ライン」を超える働き方である。
さらに、週75時間以上の就労となると、残業時間だけで月140時間を超える。これに該当する人が62万人。
異常と言うほかはない。
以上。