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0613 奴隷にはなりたくない 2015/11/03 15:53:33
映画「アメイジング・グレイス」の中で、元奴隷船の船長だった牧師がつぶやく言葉がある。

「我々が運んだ奴隷には皆、名前があった。美しいアフリカの名前だ。しかし我々はその名前を呼ばなかった」。奴隷は、男、女、大まかな年齢、体型や丈夫さで分けられ、そして番号を打たれて売買されたと聞く。

軍隊でも兵士は数だった。どれだけの数を徴兵できるか、どれだけの数を派兵できるか、どれだけ減っても大丈夫か、どれだけの敵の殺傷が見込めるか…。

そこには一人一人の名前も顔もない。人間は、番号、数字にされると、その人間性を奪われてしまう。

マイナンバー制度は、その一歩かもしれない。マイナンバーは、法律や地方自治体等で定められた社会保障・税金・災害補償の行政手続きのみで使用することになっており、民間企業が個人の識別にマイナンバーを使用することはできないようになっている。

…というが、2年後には銀行口座でもマイナンバーが必要になるそうだ。やがて政府は、国民の財産もローンも、病歴も海外旅行歴も犯罪歴も、親戚関係も把握することになるだろう。

そして、今でさえ、いい加減な年金管理や、政府機関へのハッキングがあるというのに、その政府が管理するマイナンバー、つまり一元化された個人情報が漏出しないとは言い切れない。

国民総番号制は少しずつ違うが導入している国も多い。韓国では内部者に因る流出や、ハッキングされて個人情報が収集・売買されている。米国では社会保障番号を使ってその人になりすまし、年金や還付金を受け取る事件が後を絶たない。しかし、もうすくマイナンバー通知カードは、私たちの手元に届くだろう。

さて、映画に話を戻すと「アメイジング・グレイス」の興味深い点はもう一つあって、それはウィルバーフォース等の政治的駆け引きだ。「奴隷制度廃止」と声高に言うだけではなく、また、署名集めや議場での議論だけでなく、様々な工夫を重ねている。

「奴隷貿易廃止」法案が否決され続けるならば、「奴隷貿易が危険で儲けがない商売にしてしまえばいい」というアイディアを採用。しかもそれを、ちょうどアメリカの独立や対仏戦争などで、大衆の関心が国家的な危機や反感に向き、そこで培われた「愛国心」を満たす形で。

それは、フランスの植民地への奴隷貿易を助けたり、参加したりすることを禁じる法案「外国奴隷貿易法」を通過させ、実質的に奴隷貿易の3分の2を禁止してしまうことになる。

安倍政権が与党過半数を頼んでやりたい放題重ねている今、私たち市民は、理不尽だと思うことがあっても法案が通過するのを見続けている。それに対抗するためには、さまざまなアイディアを考え出していきたいと思う。

裁判というのも一つの方法だ。「集団的自衛権」があっても実際的には海外派遣はできないように。「武器輸出」は損になるように、マイナンバー制度があっても国民の情報は個々人のものとして守ることができるように。

また、野党連合が行き詰っているならば、市民の側から、多くの人、多くの運動と連帯して下から突き上げていくようなことはできないだろうか。皆で知恵を絞りたい。

ツィッターで流れている作品をご紹介しておく。この先を行きたい。
「デモにも行かず選挙にも行かず、残業にも不眠にも負けぬ丈夫な体を持ち…政府の増税にも決して怒らず…1日にバラエティ番組3時間と少しのCMをみて。政治運動する人あれば右翼だと罵り、反原発の声を上げる人あれば左翼だとレッテルを貼る。そういう無関心、経済奴隷にはなりたくない。」