呼出完了
0602 民衆の声を畏れよ! 笹井明子 2015/09/02 16:01:11
8月30日、国会正門前は怒れる人々で車道まで埋まり、周辺の道路も議事堂前に辿り着けない人の波で埋め尽くされた。

そこに居るのは、真実を見抜く鋭い感受性を持った高校生や大学生を始め、姜尚中さんの言葉にあった「生活保守」とも言える私達のような主婦や家族連れ、学者や法律家、ジャーナリストや芸術家、等々。集会に先立って、自由の森学園の生徒達が歌った、レ・ミゼラブルの「民衆の歌」に敬意を表して言えば、参加者の誰もが民衆の1人だといえる。

こうした多岐に亘る人たちが、渾然と渦を成し、「集団的自衛権はいらない」「戦争法案絶対反対」「戦争したがる総理はいらない」「アベはやめろ」などのコールに声を合わせ、夫々の強い思いを託していた。

彼等、私達がそこに居るのは、菅官房長官がいうように「法案を誤解」していせいではなく、谷垣幹事長がいうような「イデオロギー対立」故の参加でもない。安倍政権が国会に持ち込んだ事態に異常を感得し、私達の暮らしに忍び込もうとしている理不尽に不安を抱き、学び、考え、判断し、行動で意思を示すと決めての、不退転の行動なのだ。

「8.30国会包囲行動」に先立つある日、長谷部教授らと共に衆院憲法審査会で「安保法制は違憲」と言いきって、当法案に関する認識と議論を劇的に変えた憲法学者、小林節さんの話を聞く機会を得た。

その中で小林さんは、「我々は幸せになるために生まれてきた。それを保障するのが憲法」「解釈改憲で憲法を破壊しようする安倍内閣に売られたケンカには勝つ」と言い、国会議員など政治家との親交を通して、得た感触と決意を次のように語った。

『野党四党の党首は、世論動向を通じて、「安倍政権と対峙すること」「安保法制を阻止すること」で一致しなければ、自分達に未来は無いとの認識で一致している。』『自分はこうした野党の結束のために全面協力を惜しまない。』と。

8月30日の国会正門前で、民衆の渦の中に入って、民主、共産、社民、生活の四党党首が「断固闘う」と決意表明し、手を繋ぎあった光景は、図らずも小林節さんの見立ての正しさを証明することになった。

小林さんは先の話の中で、『自民党内部にも「今のままで良いはずがない、何とかしたい」と思っている議員を複数人知っている。彼らが動くように背中を押していきたい』とも語っていたが、今日の東京新聞によれば、「自民党総務会でも、デモについて、民意を重く受け止めるべきだ」の意見が相次いだ」という。

こうして、10万人分の一人でありたいと決意して参加した私達の行動は、政治の現実をよく知る理性的な戦略家の後押しも受けて、今ようやく政治に具体的な影響を及ぼし始めている。

勿論、安保法案の行方を楽観視することはできない。安倍内閣は、支持率凋落の犠牲を払ってでも、今国会中に法案を成立させるべく動くだろう。今なお圧倒的多数の議席を持っている政党に、それはできないことではない。

小林節さんは、そのことも見込んで、法案成立後の違憲訴訟も準備している。「訴えの利益」を最重視する最高裁の問題を織り込んだ上で、小林さんは大規模な違憲訴訟を行うつもりだとし、その意義を次のように言う。

「忘れっぽい私たちだが、違憲訴訟を通して、政治情勢分析を月1回ペースで行う場を設け、『被害者意識を持ち続ける』」と。

空気のように当たり前にあった「民主主義」「平和」「憲法」は、私達の手で護らないと壊れてしまうのだということが、この間の議論の中で、私達の意識に上り、深く生活に根付き、立憲主義を踏みにじり、違憲法案を強引に通そうとする政権への怒り、嫌悪は、こうして、この政権が崩壊するまで続くことになるだろう。

今、政権の座に胡坐をかいている自民、公明の議員一人ひとりには、次の言葉を胸に刻んでもらいたい。
「私達を侮るな! 民衆の声を畏れよ!」