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0597 対米従属(安倍内閣)を通じて戦前支配を取り戻そうとする日本会議 流水 2015/07/26 16:08:13
今回の安保法案は、自衛のための法案などではない。集団的自衛権の肝は、【他衛】にある。一言でいえば、米国の戦争の肩代わり。
@資金(膨大な戦争遂行費用の肩代わり)
A命(米国国内に広がる厭戦気分の肩代わり)
B怨嗟(世界中から嫌われている米国への憎しみの肩代わり⇒米国を攻撃するより攻撃しやすい)
の三つで米国の肩代わりをしようと言う法案である。

以前にも指摘したが、この法案のひな型は、アーミテージ提案にある。

安倍政権は、安保法案だけではなく、TPP法案で日本型システム(農業・経済・医療・知的財産など)など全てで日本売りを図っている。さらに、日銀のQE(量的緩和政策)を通じ、ドル高に貢献し、FRBがQE(量的緩和)から抜け出す事ができるように協力。その結果、日本国内の物価高騰や景気減速などは、株高演出(日銀やGPIFなどを駆使)で目くらましをしてきた。実は、TPP参加などもアーミテージ提案にある。

つまり、安倍政権は、何はさておいても米国の利益を中心として考えており、日本国民の利益などほとんど関心がない。徹底的な米国隷従政権である。日本伝統の反米右翼なら、暗殺の対象にもなりかえない政権である。

ところが、この対米隷従の安倍政権の最大の支持勢力が、巷間日本最大の右派団体といわれる「日本会議」だという所に、現在の日本の政治状況や思想状況の分かりにくさがある。

日本会議について詳細に報道される事はあまりない。メディアにとって一種のタブーになっているようだ。

ところが、この「日本会議」について、フランスの週刊誌が詳細な報道を行っている。LA FACE CACHÉE DE SHINZO ABE(アベシンゾーの隠された顔)と題された記事は、日本会議の隠された顔について詳細に報道している。

・・【それは国際政治で、大幅に無視されているとはいえ、主要な事実だ。世界第三の経済大国である日本は、数か月前から、(総理大臣、安倍晋三も含めて)閣僚の4分の3が、歴史修正主義で権威主義の極右団体、「日本会議」と呼ばれる、目立たないが影響力のある団体に属していることだ。】・・

実は、日本でもこのような指摘を行い、安倍晋三と日本会議の危険性について早くから警告を発していたブログがある。(アートと社会;http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/)
しかし、このブログ、独特な言葉遣いと非常に難解で専門的なため、あまり広がらなかったのが残念だった。(わたしも何度か紹介した。)

それはさておき、フランス誌の分析を見て見よう。
日本では、安倍晋三の出自・思想傾向などは知られていたが、それほど強固な右翼的傾向があるとは考えられていなかったと分析している。

・・【しかし明らかに、反動的で反民主主義的なイデオロギーへの安倍晋三の政治的根強さは過小評価されていた。「数か月前まで、安倍の最終目的は有名なアベノミクスによって日本経済を立て直すことだと多くの人が考えていた」、と上智大学‘国際教養学部)教授の中野晃一は分析する。

 「今日、平和的で自由で民主的な憲法の根本的な改変を日本人により容易に“売り込む”という目的のためだけに 経済的成功を追及しているのではないかと疑問視されている。 そうして、彼が1997年の創設時から加入している団体、日本会議に特有の、帝国主義に憧れを持つ、古い秩序への回帰を押しつける目的でも。」

 「逆説的だがこの非常に重要な団体は 日本では未だに真価を認められていない」、「その出発から、日本会議はレーダーに現れないようにあらゆる注意を払ってきた。広告も出さないし、テレビにも出ない。戸別訪問的な活動をしながら、視線の及ばないところで前進していた。その集会はメディアに開かれていない。そして、会員たちには会談の間も、写真を撮る権利もない。」】・・・

このフランス誌の分析は、きわめて興味深い。彼らによれば、日本会議の【ステルス性】が大きな特徴だと言う事になる。これには、大手メディアが、日本会議自体を軽視していたという事もあると指摘している。

さらに日本会議の設立の動機などの歴史を詳述。その目的を以下のように書いている。

・・【 彼らのスローガンとは? 戦後の日本、「アメリカに押し付けられた」制度と生活様式から決別することだ。 彼らは、「勝者の正義」、戦争犯罪人を裁いた東京裁判の正当性を認めない。 彼らは歴史を自らの味付け、敗者の歴史を書き直したがっている。 日本帝国はアジアの民衆を「解放した」と声高らかに断言したい。 1938年の日本軍による南京大虐殺は作り事であり、 民間人に変装した数百人の中国兵が死亡しただけだと 主張する。

 日本会議の歴史修正主義者らは、 「慰安婦」は勇敢な日本兵を慰めて月末に手取りを増やして喜ぶ、単なる自発的な売春婦だったと断言する。

CHANGER LES LIVRES D'HISTOIRE   (歴史書を変えること)

日本会議の目的は、歴史書を書き換えることだ。 中学校の教科書は、歴史学者の視点と同じく論争中の問題に関して「政府の公式の立場」を言及しなければならなくなる。 「別の言い方をすれば、歴史修正主義のぱっとしない教師が、南京で民間人の死者はなかったと断言すれば、それが我々の子どもたちの教科書に書き込まれることになる」、と政治学者の中野晃一は説明する。 教育に関して、日本会議は「愛国」教育への回帰を熱望する。 彼らの夢は、1890年代の帝国時代の法 (天皇への全面的な服従) にできるだけ早く近づくことだ。 

 これで全てではない。「アメリカの圧力下で」採択された、1947年の平和憲法を、日本会議は根本的に変えようとしている。 その最初の標的は、第9条だ。 この中で日本は「戦争を、永久に放棄」している。

 国粋主義者は世界のどこでも(派兵でき)、そして「自衛力」だけではない軍隊を望んでいる。 「安倍と日本会議にとって、第9条の廃止は決定的に重大だ。なぜならこの条文が軍国日本との決別を意味している からだ」

 運動は既に進行中だ。 昨年7月、政府は初めて、「自衛隊」が日本の国土を離れて同盟国を助けることを憲法9条が認めていると断言して、同条の解釈を変更した。 それが最初の突破口だ。 日本会議は他の条文、最初に婚姻における男女の平等に関する第24条と決別するために、そこに殺到しようとしている。 彼らにとってもちろん、夫は全ての領域で配偶者を支配しなければならない。 彼らはまた、戦前の風習に戻ることを望んでいる。 学校では、まず男子、次いで女子の五十音順で点呼されること…  

 戦後の裁判で裁かれた戦争犯罪人を含む、死亡した兵士が祀られる、靖国神社に国家が関わることを邪魔する、宗教と国家の分離に関する16条も廃止することを目指す。 最後に、明らかに、日本会議は天皇が、日本の政治の中心に戻ることを望んでいる。】・・・

上記の分析はきわめて正確だ。もう10年以上になるネット右翼連中の議論のほとんどが、この「日本会議」の主張に含まれているのがお分かりだと思う。

最後に同誌はこう結んでいる。

・・【 安倍の目的は、2016年7月の参院選を利用して、国会で憲法を変えるために必要な圧倒的多数を得ることだ。 それができるだろうか?  「日本会議はエリートの運動だ」、中野晃一は 「大多数の国民は、その思想の大部分に反対している。 しかし受身的な国民性のため、 アベノミクスが上手く行っていれば、国民は されるがままになりかねない。」 と言う。

 今のところ 思いがけない人物が これに対する抵抗勢力となっている。 それは81歳の天皇、明仁だ。 さる1月、新年の祝辞に際して、天皇は暗に、 歴史の反動的な解釈に反対であることを示した。 2月、長男である皇太子、55歳の徳仁殿下はさらに雄弁だった。 極めて稀な記者会見の席で、皇太子殿下は、戦争の歴史が「正しく伝えられる」ことを望んだ。
皇室は今や、日本の自由民主主義の最も優れた盾となる。】・・

これがフランスの週刊誌の記事であるという所に、日本の置かれた言論状況の不毛さがある。しかし、この記事の分析は傾聴に値する。

ただ、この記事が書かれた情況と現在の情況との相違は、若者や女性たちの蜂起が、安倍政権や日本会議にとってきわめて危険な水位まで高まっているという点である。

この記事でも分かるように、国粋主義勢力は、天皇万歳や軍国主義的野望などを捨てたわけではない。その証拠が、文部省が大学まで国旗国歌を要請し、文化系学部の廃止を考えているという【反知性主義】的政策を強行しようとしているところに見えている。

安倍政権やその背後の日本会議勢力は、対米従属(日本売り)を通じて、米国(宗主国)のご機嫌を損ねないようにして、自らの政権基盤を安定させ、本音の国粋主義的政策の実現を図ろうとしている。同時に、それは、日米の軍産複合企業の利益に合致しているのである。

われわれは、ただ安倍政権打倒というだけでなく、日本最大の右派団体でありながら、ステルス団体(透明団体)の如く振舞っている「日本会議」の危険性も同時に批判の対象にしなければならない。