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0583 「日米防衛指針改定で合意」の報に接して 笹井明子 2015/04/29 18:04:03
「憲法」の基本理念を変えるというのに、国民の意志を問うことなく「集団的自衛権行使容認」を「閣議決定」した安倍政権は、今度は、国会の議論を待たずしてアメリカを訪問し、「日米防衛指針」で「切れ目ない日米体制の構築」を合意、「地球規模に協力拡大」することを約束した。

「改憲」ではなく「閣議決定」だから、しかるべき手続きは必要ない、「条約」ではなく「指針(ガイドライン)」だから国会の承認は必要ない。こうして抜け道、裏技を駆使して、憲法9条とは全く相容れない政策転換に、確たる一歩を踏み出すとは、なんとも大胆不敵な政権ではある。

こうして安倍政権は、立憲主義を平然と無視し、憲法の平和主義だけでなく、国民主権、民主主義そのものを露骨に否定し、彼らの目指す、国家権力の独裁を許す「新憲法」の姿を実質先取りした政権運営を謳歌しているように見える。

法治国家であるはずの日本で、なぜこんなことがまかり通っているのだろうか。第一の要因は、何度も繰り返されていることだが、選挙によって自民党に圧倒的な議席を与えている国民の姿勢にあると思う。

バブル循環を待望する経済界の無責任な自己中心性もさることながら、やはり最大の問題は50%を割り込む低投票率だ。投票しないことで、主権者としての責任を放棄し、結果独裁政治を生んでいることを、棄権する人たちはもっと深刻に考えるべきだろう。

次の問題は、野党第一党である民主党の腰の据わらなさだ。一度は政権をとりながら、なぜ国民から見放され、未だに信頼を回復できていないか、自らが抱える問題の本質を、逃げずにしっかり見つめ、リベラルな人たちの「擁護者」として再生する努力を、是非積み重ねて欲しい。

もうひとつの大きな問題は、言うまでも無くマスメディアの堕落だ。安倍首相のお友達に乗っ取られたNHKは言うに及ばす、自民党の圧力に容易に屈してしまったテレビ朝日の対応は目を覆いたくなる情けなさだ。これらテレビ局だけでなく、新聞社、雑誌社も含め、問題があることに気付いているメディア組織内部の人たちは、安倍自民党に懐柔されてしまった経営陣に抗ってでも、本来の報道の使命を守る気概を持って欲しい。

こうして今の社会状況を眺めると、面倒なことを避ける無気力、現状追認に逃げ込む思考停止、組織防衛のための詭弁・ごまかし、権力に迎合するさもしい心根、状況眺めで右往左往する軸のなさ、など、人間の持つちょっとしたずるさ、弱さに、権力が付け入っていることがよく分かる。

そういう中にあっても、毅然とした姿勢で振る舞い続ける人たちがいる。翁長さんや沖縄の人たちの揺るがない決意は多くの日本の人々を動かし、「辺野古基金」は既に一億円を突破したという。「戦争法案」発言の修正要求を断固として拒否した福島瑞穂さんは、他党をも動かして、自民党の要求を取り下げさせた。今こそ私たちも、こうした勇気ある人たちの後に続きたいと思う。

現政権の無法性、危険性にしっかりと眼を向け、毅然と胸を張って、権力の暴走に抗う意志を示し続けよう。一人ひとりは小さい存在だけれど、私達一人ひとりが社会を作り、一人ひとりの本気があって始めて民主主義が担保されるのだということを、しっかり自覚しよう。自由で健全な社会を取り戻すために。穏やかで平和な未来を手放さないために。