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0575 帝銀事件から和歌山カレー事件までを検証 名無しの探偵 2015/03/10 20:22:21
今年3月1日に龍谷大で和歌山カレーヒ素事件鑑定を巡るシンポジウムが開催された。私はこの事件に
以前と異なり関心がなくなっていたのであまり期待せずに出席した。龍谷大に足を向けた理由はシンポパネラーのメンバーに興味があっただけであった。
案の定、最初の報告者を除き(コロラド大学の名誉教授チュウ博士)、専門的な化学分析に終始し、ノートしたものの理解できない名講義(迷講義)の羅列であった。ところが、最期の報告者河合潤京大教授の報告を聞いて、「待てよ、この事件には裏があるな」という思いに変わった。
河合教授によれば、林ますみの家から採取したヒ素(亜ヒ酸)とカレーから採取された紙コップの中のヒ素とは異なるという鑑定結果(河合教授による分析)が得られたという。
ところが、林ますみを死刑にした最高裁が根拠にする東京理科大の中田泉鑑定は河合氏の鑑定と真っ向から対立していて、「(最高裁の上告棄却理由)
@上記カレーに混入されたものと組成上の特徴を同じくする亜ヒ酸が、被告人の自宅等から発見されていること、A被告人の頭髪からも高濃度のヒ素が検出されており、その付着状況から被告人が亜ヒ酸等を扱っていたと推認できること、B上記夏祭り当日、被告人のみが上記カレーの入っている鍋に亜ヒ酸をひそかに混入する機会を有しており、その際、被告人が調理済みのカレーの入った鍋のふたを開けるなどの不審な挙動をしていたことも目撃されていることなどを総合することによって、合理的な疑いを差し挟む余地のない程度に証明されていると認められる」という。
河合氏は続けて、「上記の@からBの理由のうちの@とAが中泉鑑定人によるシンクロトロン放射光蛍光エックス線分析である」、とし、「私は、@の分析に重大な間違いがあったことをこの2、3年指摘してきたが、新たにAについても鑑定の問題点が発覚した」という。
河合氏は酒席で私にこの中泉氏の分析装置(俗にスプリングエイト;SPring8)は1千億円もしたものであるが全く使い物にならない無駄な機器ですよ、と話してくれた。
最高裁の死刑判決並びに上告棄却理由が中泉鑑定の基づいているのならば、林ますみ被告人は無罪で死刑を宣告されたことになり、また本人の自白もなく
直接の物的証拠もなしに状況証拠で死刑にされたことになるのである。
私はこの鑑定の対立状況(当日は林ますみを有罪に導く他の鑑定人も来ていた、もちろんその人は科警研の人なので大変だったらしい)から直ちに昭和23年1月に起きた帝銀事件を思い出した。

帝銀事件は被告人の画家平沢貞道氏が死刑の執行を受けることなく寿命を全うしたことなどを考えれば
冤罪事件であることは政府側も心得ていた。
最期の弁護人遠藤誠弁護士によれば、平沢犯人説は
GHQの横やりで真犯人の容疑者を731部隊の元隊員もしくは陸軍登戸研究所(防疫班)の所員を追及していたのに中止させられたので平沢画伯に矛先を転じたあやしい見込み捜査であったという。
平沢はいわゆるスケープゴートだったのである。
帝銀事件も以上の冤罪事件であったが、その後に起きた名張毒入り葡萄酒事件も類似した冤罪の色彩が濃厚な事件である。
この名張の事件も和歌山カレーヒ素事件も類似点が
多い。事件の舞台になった場所が閉ざされた地域であり、犯人視された被告人もマスコミや警察にとって目立った動きを示したために容疑者としてあぶりだされたという類似性である。
今回は毒殺事件として上記の3事件に焦点を当てたが、最近再審の門が開かれた袴田さんの事件も捜査側の証拠の捏造など関連した特徴が散見される。次回はこうした冤罪の戦後史にも検証を試みたい。
以上。