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0573 「公正と信義への信頼」を武器にして 笹井明子 2015/02/25 10:02:12
1月半ば、赤を身に付けた7千人の女性が、国会を囲み、「人を殺しあうのは嫌です!」「憎しみと戦いを拡大させません!」と声をあげていたその時に、安倍総理は中東に赴き、テロとの戦いにあえて言及し、世界に力を誇示したいISILの注目を引いて、二人の日本人捕虜の犠牲という結果を招き寄せた。

「女の平和」行動の翌週には、青を身に付けた男女が、これまた7千人、国会の回りに集まって、「辺野古の埋め立てをするな!」「政府は沖縄の声を聞け!」と、力強く意志表示をした。しかし、沖縄現地では、基地反対の人々に対する暴力的な対応も、海底にコンクリートを投下するなどの海上作業も、止まることなく‘粛々と’続けられ、ついには、反対派リーダーらが基地ゲート前で身柄を拘束される事態にまでなっている。

こうして、安倍政権は、私達の上げる声を黙殺し、国民の命への配慮を怠り、「脅し」と「供応」によってマスコミや企業人を懐柔し、周辺をお友達で固めて、自らが妄想する「美しい国」という虚像に向かって、強引な歩みを続けている。

全能感で己が見えなくなっているのか、ここに至って安倍総理は、国会審議の最中に、高揚した表情で脈絡不明な野次を飛ばし、その姿がテレビに映し出された。その非礼を指摘されると、今度は虚偽の言い訳を重ねた。これが私達の国の「最高責任者」とは、俄かには信じがたい。何という喜劇、あるいは、悲劇なのだろう。

こんな状況が続いて、虚しさが募り、徒労感が増すばかりだが、それでも決して諦めようとしない人々が絶えることなく存在し、様々な方法、様々な形で日々行動し、声をあげ続けていることは、今なお大きな希望になっている。

山積する問題に丁寧に向き合い、精力的にデモを呼びかけ、実行している人もいる。街角で人々と対話をし、政治や社会についての意識を深める努力をしている人たちもいる。毎週駅構内でスタンディングで意志を示している人たちもいる。

今月に入ると、5千人にのぼる言論人、報道人、表現者が、「翼賛体制構築に抗する」旨の声明に賛同し、勇気ある意思表示をした。

そんな状況に励まされてか、今国会では、野党各党が自公への対決姿勢を明確にし、原則論を顕示して、現政権の詭弁やデタラメを浮き彫りにしつつある。

こうして、ついに一昨日には、西川農林大臣が辞任に追い込まれることになったが、思えば、閣僚の不祥事が相継いで明るみに出て、自民党の政権基盤が揺らぎ始めたときに、強引に解散総選挙を実施したのは、去年の暮れのことだった。それによって問題は一見リセットされて、その場を乗り切れたかのようだったが、モラルを失った党の体質は変わらず、国会開始と共に、再び馬脚を現し始めている。

今こそ私達は、野党が挑む正当かつ積極果敢な国会論戦に声援を送り、真実を伝えると決意した報道人を応援し、自分達自身も、怯むことなく行動し、声をあげ続けたいと思う。

政権党が振りかざす強大な力に対し、常に私達を支えるのは、「主権は国民に存する」という憲法の根本原理であり、手にする武器は「人々の公正と信義への信頼」という一見儚いものに過ぎない。しかし、それは「公正」や「信義」を嘲笑い、「力」にしか拠り所を求めようとしない勢力を、いつか必ず自壊に導くことだろう。