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0539 戦争の傷跡(祭りの後の虚しさ 流水 2014/07/14 12:40:20
戦争の傷跡(祭りの後の虚しさ)

戦争が如何に苛烈な爪痕を残すか。イラク戦争で見て見よう。

民間人の死者数約12万〜15万。
参照;(https://www.iraqbodycount.org/database/)
米軍および有志連合軍の死者数 米国約4,500人。英国179人など。
参照;http://web.econ.keio.ac.jp/staff/nobu/iraq/casualty.htm

しかし、戦争の苛酷さは、戦闘中の戦死者だけで終わらない。戦争が終わってから本当の苦しみが始まる。イラク国民の苦しみは現在も続いており、今や内戦状態であり、国家分裂の危機にある。

大義なき米国ブッシュ大統領の戦争の結果が一体イラクに何をもたらしたのか。国際社会はこの殺戮と破壊をどう説明するのか。イラク戦争前、ブッシュが叫んだ【正義の戦い】の結末が現在のイラクだ。権力者の叫ぶ【正義】という言葉の虚しさだけがこだましている。

ところが、権力者の言葉を信じてイラクに派遣され、死に物狂いに戦った兵士たちは、祖国米国に戻って一体どうなっているのだろうか。正義の戦士としてふさわしい待遇を受けているのだろうか。日本では、あまり語られた事がないが、兵士たちのその後を見る事は、戦争の真実とは何かを見る重要な視点になる。

ここに【アメリカの様々な戦争の退役軍人: アメリカ人砲弾の餌食はどういう状況にあるか?】という論文がある。
http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2014/07/post-a801.html

この論文は、湾岸戦争、アフガン戦争、イラク戦争などの多くの戦いを戦った兵士たちのその後を詳細な数値で語っている。以下、この論文の大要を書いてみる。

まず、退役軍人たちの自殺者数は、一般人の倍だと言っている。
http://www.va.gov/opa/docs/suicide-data-report-2012-final.pdf

米国合衆国住宅都市開発省によれば、毎晩57,000人以上の退役軍人がホームレスと報告している。
https://www.onecpd.info/resources/documents/ahar-2013-part1.pdf

退役軍人の失業率は一般人より高く、上院報告によれば、140万人以上の退役軍人が極貧生活を送っており、更に140万人も、極貧生活すれすれだ。18歳から34歳の退役軍人中、12.5パーセントが貧困の中で暮らしている。

90万以上の退役軍人が、食料給付切符を受けている家庭にカウントされている。
http://www.cbpp.org/cms/index.cfm?fa=view&id=4039#_ftn2

年間640万以上の退役軍人の医療、400万以上の退役軍人・遺族・子供たちの補償などの経費が総額3,540億ドル。(約35兆円)という報告がある。退役軍人管理プログラム。
http://www.va.gov/budget/docs/report/2013-VAPAR_FullWeb.pdf

米国医学研究所の2014年の報告書によれば、2000年から2011年の間に、約100万人の退役軍人が、少なくとも一件の精神的疾患があると診断され、ほぼ半数に複数の精神的疾患があった。他の米国医学研究所報告では、アフガニスタンとイラクに派兵された、現役と元軍人の推計8パーセントが、心的外傷後ストレス障害(PTSD)と診断されていると言う。他の議会報告は、精神衛生医療を受けている退役軍人の数が、100万人を大幅に上回ることを示している。退役軍人管理局は、PTSD治療に、年間30億ドル以上費やしているが、効果や治療がうまくいったかどうかについては、ほとんど情報を集めていない。
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戦争は、勝者の側にも深い爪痕をもたらすという事をこの論文は示している。

しかも、米国の戦争は、自国を戦場としていない。他国で戦死した兵士の家族は、一体戦死者は誰のために戦い、何のために戦死したのかを自分自身の心に納得させなければならない。まして、イラク戦争のように【大義なき戦争】の場合、この問いは深刻になる。残忍な殺し合いの坩堝に身を置き、自分が何のために戦うのかを問い続けなければならないのが、米国の戦争の裏の真実だという事をこの論文は示している。

集団的自衛権行使容認の背景には、上記のような退役軍人の惨状を背景にした米国の疲弊がある。もはや、米国民は、このような戦争を望まないという厭戦気分に満ちている。

安倍首相がこだわる【集団的自衛権】を行使するという事は、上記のような米国退役軍人の苦悩を日本人が背負いこむという事を意味している。同時に日本国民は、膨大な軍事費の負担に耐えなければならない。ある雑誌では、・・「もし日本が集団的自衛権の行使容認に伴って「普通の国」になろうとすれば、新たに発生する装備の導入・運用や人員増のコストを本誌が試算したところ、その総額はなんと22兆円以上となる。

さらに、試算が難しいためここには含めていない「コスト増要因」もある。
例えば、国連による紛争介入(集団安全保障)への参加で自衛隊が海外に展開するとなれば、莫大な費用がかかる。2003年に始まった自衛隊のイラク派遣では、2006年末までの4年間に854億円の経費がかかったとされるが、このときはあくまでも“後方支援”。単純比較はできないが、アメリカの同盟国としてアフガン戦争に参入したイギリスの場合、特別会計も含めて370億ポンド(約6兆5000億円)をつぎ込んでいる」・・週刊プレイボーイ:http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140714-00032641-playboyz-pol

しかも、米国の戦争を引き受けるという事は、世界中から怨嗟の声を浴びるという事である。当然、テロの主要対象国になる。テロ防止の掛け声の下、膨大なテロ防止予算が組まれる事は必至。戦前の赤狩りよろしく、治安対策の名のもとに警察国家が強化される。戦前の超国家主義復活である。
日本国民は本当にその覚悟があるのか。正念場に立っている。