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0534 権力の暴走に抗う 笹井明子 2014/06/16 15:54:05
第二次安倍内閣誕生以来、安倍総理は自身の権力維持のために、人的介入、饗応、恫喝、虚言、誘導と、権力者が使うあらゆる‘汚い’手段をためらい無く使い、その結果、彼の周辺からは、知性や嗜みや自尊心といった内面から滲み出る明るさが消え去り、代わりに、他者を嘲笑う下種な笑顔や、自分の意志を持たない虚ろな暗い表情の人たちばかりが目立つようになった気がする。

一方、安倍総理自身は、万全の体制固めが整ったと意気軒昂で、「解釈改憲による集団的自衛権行使容認」の早期実現に前のめりになっているが、その実、彼が力めば力むほど、「法の秩序を逸脱している」「憲法の平和主義が反故にされ戦争ができる国になる」などの反対の声が、日本国中から止め処なく湧き上がる事態となっている。

「立憲デモクラシーの会」「国民安保法制懇」など、法学者などが自民党のやり方の無法性を、理を持って説き続ける場が生まれ、「許すな!憲法改悪・市民連絡会」や「戦争をさせない1000人委員会」などの組織が、大規模な反対集会を度々呼び掛けている。

こうした大きな集会だけでなく、私たち無名の市民たちの自発的な反対デモやシール・アンケートなどの街頭活動も、毎日どこかで行われている。市民の声に押されるように、地方の首長や地方議員からも「解釈改憲反対」の声が多数出始めている。

しかし、安倍政権は、こうした多くの反対の声をよそに、「集団的自衛権」の問題は「政局」の問題とばかりに、集団的自衛権の要件をこねくり回したり、公明党がいつまでもゴネルのなら維新の会やみんなの党と組むとチラつかせたりして、何が何でも国会中に閣議決定させようと躍起になっている。

こうした、この政権のなりふり構わぬゴリ押しに、言いようの無い怒りとある種の恐怖を感じ、私たちの意志と乖離した立法府の在り方に空しさを感じ、途方に暮れる日が続く。

実際、安倍政権の無法性について鋭く説く識者たちですら、「どうしたら事態を打開できるのか」と問いかけに「おかしいと言い続けるしかない」と、議会制民主主義の前には「民意」を動かす以外に妙案はないことを率直に認めている。

今のこうした事態を、私たちはどう考えたら良いのだろうか。

昨年の6月に亡くなったなだいなださんは著書「権利と権力」の中で、『非暴力の抵抗は、ただ自分が、どれだけ、権威にも権力にも屈しないかを、たしかめようとするだけ』だが、『権力者は、自分がいうことをきかせられない人間がいることで、自分の権威が落ちるのを心配する』と言う。そして、その不安から、やがてそういう自律的な自由人に対し、暴力を用いようとするが、結果として彼らは『いよいよ権威を失っていく』と指摘している。

「私が最高責任者」と豪語する安倍総理の、一見自信に満ちた会見や答弁の合間に現れる、一方的なまくし立てや、抑制できないヒステリックな表情からは、自分の権威がすでに失墜している事実への怯えが見え隠れする。

私たち市民が、権力に屈しないことを恐れずたゆまず、誇りを持って示し続けることで、権力を振りかざす者は、そう遠くない日に自滅の道を辿るだろう、と予測するのは、楽観的に過ぎるだろうか。