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0508 Re: 護憲コラム 名無しの探偵 2014/01/07 18:19:58
「戦後レジームからの脱却」へのトータル批判

安倍自民党は戦後レジームから脱却するとして手始めに「特定秘密法」を制定し、(その前にも教育基本法を改正した)今後は本丸である憲法の改正に向おうとしている。憲法前文の改訂、天皇の地位の変更として「元首」への改訂、そして立憲主義などの改正などを目論んでいる。中でも国民を個人として尊重するという憲法13条の規定の変更など明らかに基本的人権規定を根こそぎ変更して「権力を制限する憲法」から「国民の基本権を制限する憲法」へと180度変えようという趣旨が自民党憲法改正案に盛り込まれているのである。

ここでは憲法改正案についての投稿ではないので
改正問題は以上とするが、問題なのは安倍首相の
戦後レジームからの脱却という政治ベクトル・戦略である。
安倍首相が戦後成立した歴史としての「戦後改革」を全面的に放棄して新しいレジームを打ちたてようとしていることは明白であるがこういう政治手法は可能なのであろうか。

前例がないわけではない。第一次世界大戦後、敗戦国ドイツはワイマール憲法を制定して世界的にも進歩的な憲法を創造した。しかし、戦争賠償金が莫大なものだったためにワイマール共和国は崩壊、授権法という手続きによりナチスが政権を奪取した歴史がそれである。

太平洋戦争終了後の日本はこの戦前のドイツの歴史と状況的に類似しているとも言えよう。
敗戦によって成立した日本国憲法は無条件降伏に
よって存続した日本政府により制定された。憲法の内容は占領軍の草案に沿ったものであった。
憲法制定とパラレルに戦後改革はかなりな程度に進んでいた。主なものとして財閥解体、農地解放
教育基本法の制定などである。途中「逆コース」という歴史段階があり、例えば自衛隊の創設があったが、現在まで戦後改革の成果は存在しているというべきであろう。

こうした侵略戦争を引き起こした旧政権の戦争責任を受け止め、そうした戦争国家からの脱却を図った平和主義的な基本(法)は敗戦時の大多数の国民の願いであり希望でもあったのである。東京と大阪など主要都市での大空襲と広島・長崎での原爆投下による戦争被害等々から国民は平和な日本を「取り戻す」ことに必死であったし、平和憲法はその貴重な証になったことであろう。

こういう敗戦後の歴史を今放棄しようという安倍政権にすべてをゆだねようと言うのだろうか。
授権法の制定によって成立したナチス党のように
戦後の歴史を消去しようとする安倍自民党に国家の命運をゆだねようと言うのだろうか。

戦後史という掛け替えのない歴史、敗戦国という
惨めなものではあったが戦火に怯えることがなかった平和な日々をなかったことにする。

そんなことは(正気ならば)できるはずもない。
太平洋戦争で犠牲になった国外・国内のおびただしい戦死者に思いを馳せるとき、日本国憲法の制定と平和主義の定めはアジアの戦後の希望でもあったと思う。それは放棄することのできない未来への誓いなのである。

それをすべて反故にする企てはできる筈もない、
「戦後レジームからの脱却」などありえない政治手法なのである。