呼出完了
0493 合成の誤謬 流水 2013/09/25 13:57:26
「合成の誤謬(ごうせいのごびゅう、fallacy of composition)とは、それが合成されたマクロ(集計量ミクロの視点では正しいことでも、)の世界では、かならずしも意図しない結果が生じることを指す経済学の用語。」ウィキペデイア(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%90%88%E6%88%90%E3%81%AE%E8%AA%A4%E8%AC%AC)

わたしは、今の日本を象徴する言葉だと思う。福島原発の汚染水問題。福島原発の地下に流入する地下水は、地下水というものではなく、伏流水と呼ぶ方が正しいくらいの流量と勢いを持っている。

この事は、原発建設当時から良く知られていた。当然、原発事故の後、この汚染水が大問題に浮上する事は、関係者の間では周知の事実だった。当時の民主党政権は、汚染水を防ぐために遮水壁建設を計画、発表する寸前だった。

ところが、東電は、膨大な建設コストを要するこの計画が発表されれば、会社の存続が懸念されるため、政府に猛烈な圧力をかけ、発表を断念させた。会社の論理からすれば当然だが、その結果として汚染水問題は、いまや福島原発最大の懸念事項だけでなく海洋汚染の懸念は世界の懸念事項になった。

JR北海道の問題も、会社、組合問題(三組合の確執)など複合的要因が取りざたされているが、そもそも国鉄が解体された当時から、JR北海道、JR九州、JR四国の経営はきわめて問題視されていた。

特に、JR北海道は、沿線住民の人口減少、冬の雪対策(線路・車体の補修など)の莫大な費用などその経営は当初から危ぶまれていた。その為、政府はかなりの額の補助金を投入している。これが、経営の合理化を阻む要因にもなっている。

また、組合対策を入っている組合によって給料の格差を設けるなど、きわめて不健全な部分がある。(組合分断策)当然、各組合間の関係は険悪になり、仕事の連携も怪しくなる。この関係の悪化は、社員の労働意欲を削ぎ、労働者間の空気を悪くする。

これに加えて、経営の悪化が拍車をかけ、それが費用と人手のかかる補修・点検を遅らせる。これもまた、【合成の誤謬】の典型だろう。

民主党政権の失敗も【合成の誤謬】そのものだった。野田政権の消費税の増税も菅直人の失敗も、その時々の政策判断は彼らなりの正義があった。しかし、民主党政権の政策判断は、結果として民主党政権の消滅、自民党政権の復活、安倍ファッショ政権の誕生という最悪の結果を招いた。

これは、ミクロの正義を追及した結果、マクロの大義を見失った結果である。マクロの大義とは、日本に本当の意味での【民主主義】を定着させ、真の意味での【国民のための政府】を確立させる事だった。この為には、【既得権益】を破壊し、国民のために奪い返すという血みどろの戦いが不可欠だった。

わたしが、日本における政権交代は、他国における【革命】だという意味はそこにある。このマクロの大義を見失った時から、民主党政権の瓦解ははじまったのである。

安倍ファッショ政権の狡猾さは、口では日本を取り戻すなどと言いながら、米国隷従政策を臆面もなく続けている。【日本を取り戻す】なら、米国隷従政策などできるはずがない。日本右翼の伝統など何もない。

安倍政権の政策は、米国隷従といっても共和党内部の【軍産複合体】の論理に近い。オバマ政権の政策とは、かなり隔たりがある。この証左を一つ紹介しておこう。

映画「ランボウ」のモデルとして有名なアーミテージのレポートである。彼は、ジャパンハンドラーの一人として有名な人間だが、その彼が書いたレポートが「海上自衛隊幹部学校」のHPに載っている。
○第3次アーミテージ・ナイレポート
 「海上自衛隊幹部学校」公式HP
 http://www.mod.go.jp/msdf/navcol/SSG/topics-column/col-033.html

〜前略〜

・日本への提言(9項目)

(1)原子力発電の慎重な再開が日本にとって正しくかつ責任ある第一歩である。原発の再稼動は、温室効果ガスを2020年までに25%削減するという日本の国際公約5を実現する唯一の策であり、円高傾向の最中での燃料費高騰によって、エネルギーに依存している企業の国外流出を防ぐ懸命な方策でもある。福島の教訓をもとに、東京は安全な原子炉の設計や健全な規制を促進する上でリーダー的役割を果たすべきである。

(2)日本は、海賊対処、ペルシャ湾の船舶交通の保護、シーレーンの保護、さらにイランの核開発プログラムのような地域の平和への脅威に対する多国間での努力に、積極的かつ継続的に関与すべきである。

(3)環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉参加に加え、経済・エネルギー・安全保障包括的協定(CEESA)など、より野心的かつ包括的な(枠組み)交渉への参加も考慮すべきである。

(4)日本は、韓国との関係を複雑にしている「歴史問題」を直視すべきである。日本は長期的戦略見通しに基づき、韓国との繋がりについて考察し、不当な政治声明を出さないようにするべきである。また、軍事情報包括保護協定(GSOMIA)や物品役務相互提供協定(ACSA)の締結に向けた協議を継続し、日米韓3か国の軍事的関与を継続すべきである。

(5)日本は、インド、オーストラリア、フィリピンや台湾等の民主主義のパートナーとともに、地域フォーラムへの関与を継続すべきである。

(6)新しい役割と任務に鑑み、日本は自国の防衛と、米国と共同で行う地域の防衛を含め、自身に課せられた責任に対する範囲を拡大すべきである。同盟には、より強固で、均等に配分された、相互運用性のある情報・監視・偵察(ISR)能力と活動が、日本の領域を超えて必要となる。平時(peacetime)、緊張(tension)、危機(crisis)、戦時(war)といった安全保障上の段階を通じて、米軍と自衛隊の全面的な協力を認めることは、日本の責任ある権限の一部である。

(7)イランがホルムズ海峡を封鎖する意図もしくは兆候を最初に言葉で示した際には、日本は単独で掃海艇を同海峡に派遣すべきである。また、日本は「航行の自由」を確立するため、米国との共同による南シナ海における監視活動にあたるべきである。

(8)日本は、日米2国間の、あるいは日本が保有する国家機密の保全にかかる、防衛省の法律に基づく能力の向上を図るべきである。

(9)国連平和維持活動(PKO)へのさらなる参加のため、日本は自国PKO要員が、文民の他、他国のPKO要員、さらに要すれば部隊を防護することができるよう、法的権限の範囲を拡大すべきである。

安倍内閣の政策そのものと言っても良い。安倍内閣の狡猾さは、米国の「産軍複合体」の要請通りの政策を行いながら、【日本を取り戻す】などと嘯き、平然と国民をペテンにかけている所にある。オバマ政権の本音は、何とかしてこの「産軍複合体」の力を削ぎ落としたいところにある。これが、安倍政権に対する冷淡さに表れている。

「産軍複合体」の方は、米国本国での影響力の低下を何とかして日本で補いたい、というのが狙いだ。安倍内閣は格好の獲物であろう。

安倍内閣のミクロにおける論理は、上記のマクロの本質を覆い隠すために展開されている。それに政治家・官僚の自己保身の本能が重なって酷い法律が連発されている。

平成の治安維持法というべき、「特定秘密保護法案」も政治家・官僚の保身本能が満載である。欧米にも類似の法律はあるが、何年かたったら、関係書類の開示が義務付けられている。ところが、今回の法律では、開示しなくて済むようになっている。歴史の審判を受けなくて済むようになっている。これが日本の権力層(既得権益層)の内実である。

最初の問題提起に戻れば、ミクロの大義がマクロの大義(歴史の審判)に矛盾しておれば、ミクロの大義判断をした政治家・官僚は歴史の審判で断罪されるのは当然だ。これを行わなければ、国民は歴史の教訓を学ぶ事ができない。

この審判を事前に避けようというのが、今回の「特定秘密保護法案」の意図である。彼らのいう「歴史」が如何にでたらめであるか、という証左でもある。

【魚は頭から腐る】。現在の酷い政治状況を一言でいえばこうなる。いまや、既得権益層(政・官・業・メデイア)の劣化と品性の劣化は、看過できないレベルに達している。