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0451 不穏な方程式 笹井明子 2012/12/03 21:45:35
衆院選公示を明日に控え、目まぐるかった政界の動きもようやく一段落し、各政党の基本政策が明確になってきた。その中で一際目を引くのが、自民党と日本維新の会の「原発政策」と「安全・外交政策」の特異性だ。

原発政策については、昨年3月に起きた原発事故が未だ終息しない現実を前に、ほとんどの政党が「原発ゼロ」の方向性を示しているのに対し、自民党と日本維新の会は「「判断保留」としながら「原発推進」の意志を滲ませている。

また、安全・外交政策については、自民党の「九条改正」「国防軍の保持」「集団的自衛権の行使容認」と、日本維新の会の「自主憲法の制定」「集団的自衛権の行使容認」のタカ派振りが突出している。

自民党の安倍総裁は、嘗て総理大臣だった時に、「戦後レジームからの脱却」「美しい国」のスローガンのもと、改憲のための国民投票法を成立させ、愛国心を盛り込んだ教育基本法の改正を実現させた。

一方、日本維新の会の石原氏は、都知事時代には尖閣諸島に首を突っ込んで日中間対立の切っ掛けを作り、最近は「核武装シミュレーション」必要論をぶち上げて物議をかもした。

さて、これまで原発政策については、主として経済的側面からしか議論されてこなかったが、ここにきて、石原氏が、『「原発ゼロによって、これまでのスタンスだった核(兵器の開発)のオプションを失ってもいいのか」の質問に対し、「それは困る」と述べた』(11/30記者会見)と報じられるなど、原発推進に潜む核兵器転用への執着が公然と語られ始めた。

この願望は、安倍氏の祖父、岸信介氏の『今日の原子力のいろいろな利用というものは、いうまでもなくみな軍事的な原爆の発達から生まれてきているものである。平和的利用だといっても、一朝ことあるときにこれを軍事的目的に使用できないというものではない。』(講演記録『最近の国際情勢』(1976))という言葉と共に、自民党内にも、着実に受け継がれてきた意志だ。

こうして原発政策と安全外交政策は、切っても切り離せない関係にあり、安倍自民党と石原維新の会が選挙後に合流して、核の軍事利用を視野に入れた新政権を作るという「不穏な方程式」成立の可能性が高まっている。

原発事故による放射能汚染で福島という美しい郷土を失った人達が現に大勢いて、原発を維持推進することによって、再びの事故による更なる郷土喪失の可能性がある日本において、‘祖国を侵略から守るための核保有’という彼らの言い分は、笑えない逆説的発想としか私には思えないのだが。

とまれ、民主党政権に失望し政権交代は間違いだったと苦々しい思いをしている人、既成政党の体たらくにあきれ劇的変化を求めている人に、間もなく訪れる選挙を前に、心からお願いしたいことがある。

どうか今度の選挙に限っては、自分の選択は、国家の強さを求めて社会の弱体化を促進したり、自分たちの日常生活が更に不安になるような政策を、結果的に支持していないか、と今一度自問してみて欲しい。

政治家やマスコミのセンセーショナルな言葉の洪水に、誰もが日々溺れそうになっているけれど、どんな社会を望むかを自分の問題として考え、誰・どの政党がそれにより近い方向性を目指しているか、誰・どの政党を選ぶのがよりましかを、冷静に見極めて、真心を込めて一票を投じて欲しい。

そのことが、これから日本社会に生きていく人達の、大切な未来を築く、とても大事な足がかりになると思うからだ。