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0447 戦後裁判史プレイバック 名無しの探偵 2012/11/08 19:12:43
「東大ポポロ事件」

東京大学公認学生団体「ポポロ劇団」が演劇発表会を行った際に、学生が会場にいた私服警官に暴行を加えた事件。
「事件の概要」
ポポロ劇団は1952年2月20日、本郷キャンパスの教室で松川事件をテーマとした演劇「何時の日にか」の上演を行った。これは大学の許可を
得たものだった。上演中に、観客の中に本富士署
の私服4名がいるのを学生が発見し、3名の身柄を拘束して警察手帳を奪い、謝罪文を書かせた。
その際に学生が暴行を加えたとして、二人が「暴力行為等処罰に関する法律」により起訴された。
「裁判の経過」
一審は、被告人の行為が大学の自治を守るための
ものであるとして正当な行為であり無罪とした。
二審は一審を支持したため、検察が上告。
(筆者注:二審の裁判官は学生時代のゼミの先生でクレタマスヨシ氏)
最高裁大法廷は昭和38年5月22日、原審を破棄し、審理を差し戻した。
その理由(結論部分のみ掲げる)「しかし、本件
集会は、真に学問的な研究と発表のためのものではなく、実社会の政治的社会的活動であり、かつ
公開の集会またはこれに準ずるものであって、大学の学問の自由と自治は、これを享有しないといわなければならない。したがって、本件の集会に
警察官が立ち入ったことは、大学の学問の自由と自治を犯すものではない。」
「筆者の見解」
最高裁は本件ポポロ劇団の演劇活動を「真に学問的な研究と発表のためのものではない」とするが
学問研究を机上の研究などに狭く限定することは
全く恣意的な定義である。こうした見解はフィールドワークとしての調査などを無視したものであろう。また、演劇活動を実社会の社会的活動として軽視している態度も「学問」の内容を歪めている。ギリシャのアゴラ劇場の活動などを知らない
無教養な判断である。また「実社会の社会的活動」となんら接点を持たない学問ならば無用な産物である。
ところでもし最高裁のような「学問の自由」に関する限定的な解釈を採用しても学生たちの行為が
「違法」な暴力であるのかも疑問である。
私服の背広の中に無理に手を入れて警察手帳を取り上げる行為自体に違法性があるとは言えないのではないだろうか。
                   以上。