| 東京新聞の1面トップに「レベル7、第8部〜経産省の暗闇〜」という連載記事が始まりました。「(原発推進の)従来路線を維持するため、経産省が水面下で何をしたかを、関係者の証言から描く」というのが記事の趣旨です。
この連載には、長年巨費を投じてきた原発推進の賛否について政治家・官僚の誰も責任を持とうとしないまま、ダラダラと進めてきたこと。悪い流れを立とうとする議論に水を差し、既定路線を維持しようとする「誰か」がいることが書かれています。国家のため、国民のため、日本経済のため、といった常套句の裏で
@政界・官僚・財界のなれあい(国益よりも各自の利益) Aムラ社会やイエスマンの集まりで行う意思決定 B確固としたポリシーや継続性のない計画・政策
こういった形で国策や政治を続けてきたわけです。元来、協調性を重んじる日本国民は「集団のため」「地域のため」「国家のため」という美辞麗句にメチャメチャ弱いようです。例を挙げれば、石原都知事が
@(公人の靖国神社参拝について)国のために犠牲になった人々に敬意を表して何が悪い?個人か公人か、くだらんことを聞くな A(尖閣諸島の東京都購入について)領土を守ることに文句を言う日本人はいない B(東京五輪開催の国内支持率が低い点について)平和とスポーツの祭典という国家的イベントに国民はみんな賛成している
などと声高に主張しています。冷静に考えればおかしな話なのに、多くの都民・国民は「そうか、他の人(多くの人)がそう思っているのか」と妙に空気を読み、納得しているような気がします。狡猾な議論のすり替えや「日本人」「国民」「国家」という踏み絵を許してしまうわけです。
石原慎太郎氏を含めて改憲論者の主張には
(1)いつまでも米国に押し付けられた憲法に縛られているのは、おかしい (2)今の憲法は、国際社会の一員(先進国)である日本の現状に合わない というものがあります。しかし、最近のオスプレイ配備問題、中国・韓国との領土問題、原発維持への政府変節をみると「米国に押し付けられた」と言いつつ、 「日米安保条約に頼りつつ日本の軍備拡充・核武装を正当化したい」 という、ムラ人間たちの思惑が透けて見えます。政治的には、今回の自民党総裁選に出てきた「改憲賛成」の顔ぶれを見れば理解できます。政権与党時代の官僚とのパイプがある彼らは、
a)甚大な被害を及ぼし未だ事後収束していない原発について、東京都民30万人の「原発住民投票」署名や多くの国民が脱原発を望む国民の意思があるのに、民主党政権は米国からの「米国のために原発継続を」という強い意志に応えてしまう b)自民党政権は米国の「核の傘」を頼りつつ、原発という「潜在的核武装カード」を持ち続けてきた(「原発と原爆」有馬哲夫著、文春新書809円) c)武器輸出・武器共同開発を目論みPKO(国際平和維持活動)に関する現地への装備(武器)供与を緩和する d)共同作戦中の他国軍が攻撃されたら援護できる「集団的自衛権」容認の流れをつくる e)原子力規制委員会設置法にこっそりと「原発は我が国の安全保障に資する」という文言を加える と、こんな処に隠れた影響を与えていると推察します。民主党も「第二自民党」と化していますので。
しかし、この人たちは一体どんな外交的努力をしているのでしょうか。
良し悪しは別として、米国、中国、北朝鮮などは外交カードを巧みに使います。尖閣諸島問題ではメンツを潰された中国は露骨な対日・反日圧力をかけ、米国は日米安保条約を匂わせて中国を牽制しつつオスプレイ配備をゴリ押しする。日本は見事に翻弄されています。
国際的な外交とは、在外公館(大使館)で相手国の意向・内情・世論・落とし処を下調べしておき、巧みなディベートによる「言葉」「文言」で自国に有利な交渉を行うことでしょう。少なくとも日本は、背後で武力をちらつかせてはいけません。それが「日本の外交」だと思います。ところが、日本には外交オンチな政治家(OBを含め)が多いようです。
はたして、外交で自国を有利に導き平和的解決を図れる人材はいるのでしょうか。滞在国で「島流し」と嘆くだけの大使館員、外交政策の偏った外務省、ディベートが苦手で失言ばかり多い政治家、威勢だけよくて辛抱できない政治家、コトバよりもゲンコツを見せたがる政治家、都政と国政の分別もない政治家・・・等々。
こんな輩は自衛権だ!改憲だ!と叫ぶ前に、沖縄・広島・長崎・福島でたっぷりと市民団体のお叱りを受け、太平洋戦争での政治家・軍人の失敗を恥じ、「国民のための国家」という再教育を受け、「隣人との付き合い方」を一から勉強し直してください。
米国は日本の民意を無視するほどバカじゃないので、「日本(国民)はどう考えているか」を推し測っています。しかし、日本の政治家が民意を無視すれば、「こっちはOKだ。揉め事は内政の問題だからね」となるでしょう。
米国の政治家に「原発を放棄しないで」と迫れれたら、日本の政治家は「脱原発は私の意思ではありません、国民の意思です。だから、私は国民の代表として民意を尊重します」と、堂々と主張すればいいのです。
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